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Sunの元CEOのスコット・マクリーニ氏が、過去の失敗した事例を以下の様に解析しています。

"SunのサーバをIntelプロセッサアーキテクチャに移行させるのが遅れたことだ"

これは、非常に興味深い振り返りです。なぜならば、IT業界で定期的に発生するコンピューターのダウンサイジングを、当事者は認識することできなかったことを示唆しています。

同じようなことを経緯で退場した会社にDECがあります。DECはIBMをミニコンで追撃しましたが、最後はSun等のよりUNIXメーカにに追い詰められました。そうです、Sunは以前は既存のメーカを退場させるほど革新的だったにも関わらず、次のターンでは立場が逆転して、追われる側に回りました。

なぜコンピューターのダウンサイジングのトレンドをキャッチするのが難しいのでしょうか?それも、一世代前のコンピューターのダウンサイジングを実現した主要なプレイヤーだったにも関わらずにです。

難しくしているのが、一つの理由は過去の成功体験が足かせになっていることでしょう。

これは、少し違いますがIntelが日本メーカのDRAM構成で業績が悪化したときに、"もし外から来たCEOならば、どのような選択するだろうか"と考えた上でDRAMから撤退した話と通じるものがあります。どの様な集団でも過去の成功体験に引きずられてしまいます。その経験がより多くの成功を生み出していれば、より陥りやすいでしょう。

また、もう一つは次のサイズのコンピューターに移行するのかは、実は誰にもわかっていないのでしょう。正しく将来を予見できるビジョナリーはIT業界でもそれほど多くいるとは思えません。普通の会社は少し乗り遅れながら追随し、さらに悪い会社は追随が大きく遅れ退場させられます。

IT業界は特にムーアの法則どおり性能向上を果たすため、ダウンサイジングの波が定期的にきましたが、それがトレンドかどうかは判断できないのでしょう。

現在進行形のコンピューターダウンサイジングと言えば、スマートフォン・メディアタブレットがPCにとって変わろうとしているところです。現時点では、PCはメディアタブレットに侵食されていると言われていますが、それでもPCの出荷台数はしばらくはプラス成長になると予想されています(Gartnerが2011年は3.8億台、2012年は4.4億台と予想を出しています)。

このため、PCとスマートフォンプラットフォームは共存しそうな感じです。

ですが、過去を振り返るとシェアが入れ替わると途端に衰退するものです(企業がリソースの再配分を行うため)。このため、PCの地位は将来において約束されているわけではありません。

また、これはサーバ市場でも同じことが言える事ではないでしょうか。現在のサーバの主流はx86です。RISC系(SPARCやPOWER)は生き残っていますが、シェアを逆転することはないでしょう。では、x86を脅かすプレイヤーはいないのでしょうか?もう、半導体が衰退するまでx86は王者として君臨し続けるのでしょうか?

現時点でこの点に関して答えを出すことができる人はいないでしょう。もしかするとARM系チップがCortex-A15登場を境にサーバ市場にも進出し、x86を逆転する可能性もなくもありません。また、パワフルなGPUが、得意とする分野においてはx86を駆逐するかも知れません。

Sunがx86サーバに乗り遅れたことは先見の無さと言うのは批判は簡単ですが、当時それがわかる人はどの程度いたでしょうか。シェアが逆転してからトレンドが来たと言うのは誰にもできますが、その時点で転換するには遅すぎます。

今歴史の転換点に来ていると思います。さて、どちらに賭けた方が分がいいでしょうか。賭けの締め切り時間が近づいています(もしくは既に締め切られました)。各プレイヤーはどちらに張り、結果はどうなるのでしょうか。2015年ぐらいまでにはスマートフォン・メディアタブレット vs PCの争いの結論は出ていると思いますし、ARMやGPUがサーバ市場の進出状況が見えていると思われます。さて、どうなっているでしょうか。

櫻吉 清(さくらきち きよし)

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