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2011年1月31日の投稿

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先週LenovoとNECで提携がありました。中身を見ると、NECがLenovo傘下に入るわけではなく、Lenovo NEC Holdingsをつくり、その下にNECのPC部門とLenovo Japanを一緒にさせるみたいな感じで両社ともラインナップに影響を与えないような提携です。

当然、将来的にはどうなるか気になるところですが、"NECとレノボが合弁会社の設立で緊急会見 - 両社のブランドPCはどうなる?"の質疑応答を見るかぎりは、全てが未定の様な感じで回答されています。

お互いに多大なメリットがある提携(?)には見えません。NECの製品がワールドワイドにサポートこそされるみたいですが、販売はないみたいです(広告等も考えると難しいか?)。また、Lenovoは日本における販売経路を使用できるようになるみたいです。これはLenovoの製品を触れる箇所が増えるのは良いことかも知れませんが、全体的にシナジー効果があるかわかりません。

NECの資料には3Q'10のシェアに関して記載されていますが、これでは少しわかりません。

2010年の日本のPC出荷台数は1,530万台ぐらいです(4Q'10が正式に出ていませんが)。このうちNECのシェアは約19%とするとNECの2010年PC出荷台数は290万台となります。

2010年のLenovoのPC出荷台数は約34,00万台です。これにNECの290万台を加えると2010年Lenovo&NECグループは10.5%となります。これはDellの12.0%には届きません。ですが、Lenovoは2009年8.0%から2010年9.7%と大幅にシェアを伸ばしたことを考えると、2011年が2010年並みに成長するならばDellを捕まえることができることになります(注:NECがLenovoに加算されるかどうかわかりませんし、加算自体は2011/6以降になるためかなり微妙です)。

Lenovoとしては世界から見れば5%程度に届かない地域で且つ大きく成長を期待できない市場にNo.1になれることにどの程度メリットがあるのかわかりません。

また、LenovoのノートPCラインナップは、弱点だった安価カテゴリにおいて2010年に安価なThinkPadブランドを立ち上げて大きくシェアを伸ばしました。このため、ノートPCのラインナップ的にはNECと補完する必要があるとは思えません。デスクトップの網羅率を上げるには協力するのは良いことかも知れませんが、デスクトップPCの販売数は今後伸びないと言われているため、メリットになるとは思えません。

現在の提携から将来としてどのような体制に持っていくかも決まっていない(もしくは現時点では公開しづらい...例えば製造を日本では行わず、全てに中国で行うなど)あたりの不透明な気になります。

ガラパゴスの典型的な例である98を知っている者にとってはこの提携は寂しいものがあります。ですが、ワールドワイドで5%以下、BRICs並みの成長率を期待できない市場の覇者がワールドワイドに展開するライバルと戦うのはあまりにも難しいものがあります。

また、PCは大きく転換の時代が迫っています。スマートフォン・メディアタブレットが台頭するPCの低価格化もしくはメディアタブレットを販売しなければいけません。PCメーカがPCだけ作っていれば良い時代ではありません。このため、NECとしては提携先が必要だったと思われます。

今回の提携は最近の日本の電気メーカが合従連衡をしている現状を考えるとよくある話の一つかも知れませんが、今後のPC業界再編を占う上では考えさせられる提携だと思われます。

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櫻吉 清(さくらきち きよし)

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