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AMDのCEOであるダーク・メイヤー氏が急に辞任となりました。ダーク・メイヤー氏の功績に関しては"予想外のCEO辞任で揺れるAMD"が詳しいです。2011年はAMDにとって久々に躍進の年になると思われただけに水を差すようで残念です。

CEOの辞任が必要かどうかは外野にいる私には分かりません。外野で分かることは、最近のAMDの不調の原因がIntelのCPUに性能的に負け続けているところです。

そこでダーク・メイヤー氏の功績であるAMDのCPU開発履歴を調べてみました。参考にさせていただいたサイトは以下になります。

Atomより小さい、AMDのZacate/Ontarioのコンパクト設計
多和田新也のニューアイテム診断室 バックナンバー

AMDは徐々に周波数が伸ばし、互換ソケット戦略をとるため大きなアーキテクチャ更新のタイミングだけを比較するのは少し難しいです。

Athlon 64及びAthlon 64 X2は非常にすばらしい製品でした。メモリコントローラーを内蔵してメモリレイテンシを削減し、モノリシックなデュアルコアを最初に出したx86のCPUでした。Fabがこなれてから周波数も伸びたころのK8はNetBurst系より製品として優れていました。

K8の一番すごかったところは、64bitとデュアルコアを採用したことです。

なぜならば、現時点(2011.1)でもAMDが定義した命令でIntelが追随したのは64bitのみですし、今でこそマルチコアが一般化しましたが、Athlon 64 X2が登場時期はまだシングルスレッド性能主義でした。

このため、両者を採用したAhtlon 64/64 X2は画期的でした。また、ライバルに比べて性能もよかったため、2006年半ば以前ならばNetBurst系を選択するのはあまり得策とは言えないと考え、私はAthlon 64 X2 3800+を購入しました。

この方針を決めたのがダーク・メイヤー氏らしいですが、そういった意味では2006年以前はすばらしい仕事だと思います。

ですが、IntelがCore MAを登場させてからは立場が逆転しました。性能と省電力の点で大きく劣りました(値段を下げたことでコストパフォーマンスの差は両社でそれほどあるわけではありませんし、BlackEdtionで周波数を操作できるのは先駆けを作ったのは自作ユーザにとってはとてもよかったことです)。

さらに、Ahtlon 64 X2の次のPhenomで大きく躓きました。65nmへの移行に時間がかかったこともありましたが、周波数が向上しないこととTLBのバグでイメージが悪くなりました。

また、Athlon 64(K8)からPhenom II(K10)まで、CPUの内部を大きく変更をしてきませんでした。Intelがこの間、NetBurstから、Core MANehalem MASandy Bridge MAとリフレッシュし続けたことを考えると両社の開発体力差がでているようにも思えます。

さらに、AMDは2006年末にATIを買収はかなり大きなものでしたが、CPUにGPUを搭載する製品は2011年まで出荷できませんでした。確か当時は、2008年中には統合した製品を出すことを明言していました(CPU開発に4年かかると言われているため、買収の時点でそれは無理そうでしたが)。

Intelは、CPUにあまり性能がいいと言えないGPUをMCMでパッケージングした製品を2010年に出荷しています。AMDならば同等の製品をもっと早く出すことができたのではないかと思われます。このあたりは、CPU&GPUをモノリシックに統合することを固執しすぎていたように思えなくもありません。

また、"AMDのCEO辞任は「タブレットへの慎重姿勢」が原因か"だとも言われています。これを裏付けるような噂(AMDはARM開発)がでてきました。ですが、AMDは以前にモバイル部門をQUALCOMMに売却してます(AMD、モバイル部門をQUALCOMMに売却)。

AMDは、どこに向かうべきでしょうか?IntelやNVIDIAと戦う戦場に向かうべきでしょうか?それともARM陣営(NVIDIA、QUALCOMM、TI、Samsung)と戦うべきでしょうか?どちらの戦場がよりAMDに収益を上げるでしょうか?

IntelとはBulldozerで戦うことができるかも知れませし、NVIDIAとのGPUの競争はそれほど負けていません(スパコン市場以外は互角?)。Llanoの次のバージョン出来次第では、両社をぎゃふんと言わすことができる可能性があります。

ARM陣営に対しては、BobcatでARMと戦うことはできません。BobcatをARM対抗製品に仕上げるには相当のリソースをつぎ込む必要があるでしょう。

高い収益が期待できるハイエンド分野か、それとも市場が急激に立ち上がり出荷量が見込めるローエンド分野のどちらがAMDにとって良いことでしょうか?

AMDの体力で両方向に進むことは得策とはとても思えません。Bobcatに手を出してBulldozerやLlanoの開発が遅れないのか心配なほどです(Llanoのスモールバージョンでよかったのでは?と思わなくもありませんね)。

CEOの辞任でAMDは今後どの分野に注力するのかはまだはっきりしていませんが、"二頭追うものは一頭も得ず"の言葉通りの結果にならなければいいのですが...

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櫻吉 清(さくらきち きよし)

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