IT関係の人には有名な話かもしれませんが、私の大好きな話に「イーサネット」と「エーテル」の話があります。
「イーサネット(Ethernet)」はご存知のように、コンピュータの世界では無くてはならない通信技術です。
この「イーサネット」という言葉の語源は「エーテル((Ether)」だといわれています。
20世紀初頭まで、物理学の世界では「エーテル」の存在が信じられていました。
当時の物理学者たちは「光」がどのように空間を伝播するのか、その謎に悩んでいました。 音は空気という媒体を通じて空間を伝播します。光も音と同じように「波」と考えられていましたが、その波である「光」を空間に伝搬させる媒体は何か?
科学者たちは、空間には目には見えない”ある物質”が充満していて、その物質が光を運ぶと考えました。そしてこの物質を「エーテル」と名づけました。
エーテルは宇宙空間の”いたるところに存在する”と考えられていたようです。
しかし20世紀になり、アインシュタインが相対性理論を発見するひとつのきっかけになった有名な実験(マイケルソン・モーリーの実験)により、エーテルの存在は疑問視され、その後アインシュタインの相対性理論の完成によって「エーテル」の存在は完全に否定されます。
時はめぐって1970年代、シリコンバレーにあるゼロックス パロアルト研究所。 現在のコンピュータやネットワークの極めて重要な技術が数多く生まれた場所ですが、ここで次世代のネットワーク技術が誕生します。
発明者はこの技術を「イーサネット(Ethernet)」と名付けました。
「どこにでも、あらゆるところに存在し、情報を伝える媒介になるもの」と願って付けた名称だといいます。お分かりでしょうが、その語源は「エーテル((Ether)」です。
物理学の世界では存在し得なかった幻の物質「エーテル」ですが、 21世紀の今、「イーサネット」は世界中のいたる所に存在し、大切な情報を世界中に伝播し続けています。
とてもロマンチックなお話だと思いませんか?