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原子力発電所事故への対応、米国の場合

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最近米国東部で稀な地震が起こった。マグニチュード5.8で結構大きな地震だった。地震に慣れているカリフォルニアからの旅行者や出張者達は地震に慣れていない東部の人たちの大騒ぎにびっくりしたようだ。この地震で震源地から30kmにあるDominion Virginia Power が所有する原子力発電所が停止した。この原発はVirginia 州の州都であるRichmondから約100kmで、首都のWashington Dcからは約145km離れている。Richmondの人口は約20万人だ。首都周辺は約560万人だ。


地震の発生に伴い、外部電源は使用できなくなり原発は停止した。ただ非常用電源である5台のディーゼル発電機は稼動した。5台のうち1台が故障したが、発電機1台あれば足りると発表され、燃料も30日間もつということだ。幸いにも外部電源はその日のうちに使用可能となり、非常電源も正常に作動し、冷却の問題はなく原子炉に異変が起こるというような大事には至らなかった。Dominion Virginia Power は今後再生可能エネルギーの割合を増加するものの、この地震が起きても、今後のエネルギー確保の方針から原子力を除外することはないと述べている。現在稼動中の一号機と2号機の他、現在3号機の許可待ちとのことだ。ちなみにこの原子力発電所の2つの原子炉はそれぞれ19781980年に建設され発電量の合計はは180万kWだ。もう既に30年以上経ているわけだ。


福島での原発事故に関連して、避難地域の設定や風による放射能の移動などが話題になった。米国の場合はどうなっているのだろうか。米国の原子力規制委員会は2つの地域を設定している。1つは半径16kmを放射能による直接汚染地域として指定している。また、半径80kmを間接汚染地域に指定している。実際にこれが発令されたのは1979年の3月のThree Mile Island原発の事故の際で、この時は8km以内で妊婦や子供の避難が行われた。福島原発事故に際して、米国大使館が自国民に対して80km以上避難しろと警告したのはこの指定によるものだった。原子力規制委員会はこう言った緊急時のプロセスをウエブで公開している。


今回の原発は大事に至らなかったが、大きな都市から比較的近い。もっと大都市に近い原発もある。Indian Point Energy Centerだ。ハドソン川に沿ってNYCの北僅か61kmだ。上の間接汚染地域にすっぱりとはまってしまう。福島原発のニュースが頻繁に流れていたとき、この原発のこともNYCに近いということで盛んに報道された。発電総量は200万kwでNYCの電力需要の約30%を担っている。


16km以内の人口は約27万人、で80km以内は1700万人だ。実際に緊急事態が生じれば、大変なことになるだろう。地震の可能性はゼロではないが、NYC近郊ということもあり、緊急事態が起こるとすればテロによるものかも知れない。9.11から10年ということで、米国では新たなテロへの備えと追悼番組で一杯である。


ちなみに筆者の住む地域から一番近い原発は約265kmだ。

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