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電力不足対策、いよいよスマートグリッドの出番か‐その1

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以前、日本で議論されているスマートグリッドと米国で現在実装されつつあるスマートグリッドは異なっていると書いた電力会社の人に話を聞くと、日本のスマートグリッドが最終的に目指すものはどうやら「低炭素化社会の達成」らしい。これでは、「スマートグリッドは電力不足の解消策だ」と業界の人が言う米国型スマートグリッドの適用は考えられない。しかしこれは3.11で変わった。東日本の電力不足は米国型スマートグリッドで解決されるだろうか。

米国の電力網インフラはかなり危うい。発電所とそこから広がる送電網の新規建設が長い間先延ばしにされてきた。日本より国土が広いとはいえ日本同様人々は自分の家のそばに発電所や送電線が建設されることに反対してきた。そして気がつくと、電力の需要に見合う供給を行なうことが困難になってきているのだ。それでも送電網は比較的よく保守され、監視もされている。問題は配電網だ。

高電圧を運んできた送電線は変電所に接続され、ここで高電圧が低電圧に変換される。この変電所から消費者へと繋ぐ電力網が配電網だが、これが老朽化している。配電網では耐用年数をとっくに過ぎた変圧器やその他の機器類が使用されており、これらが突然故障して停電を引き起こすことが結構ある。米国内の電力会社の停電状態をTwitterでフォローしていると、停電の情報が天候に関わらず流れているのに気付く。もちろんすべての問題が配電網によって引き起こされているわけではないだろうが、かなりの率を占めることは間違いない。しかも停電が起きても、電力会社は消費者からの電話連絡以外に停電が起きていることを知る術がない。この配電網にテコ入れすることが現在米国スマートグリッド市場に見られる傾向のひとつだ。これは配電網自動化(DA)と呼ばれ、配電網内の機材の交換や監視の強化が含まれる。DAへの興味や期待は、市場のこれまでの牽引者であったスマートメータや家庭エネルギー監視システムからのシフトと見られる。

このDA、日本には当てはまりそうにない。配電網はインフラ老朽化というにはほど遠いし、問題の自動検出や自動復旧などの技術にも優れているからだ。ではスマートグリッドのどこが東京を含めた東日本の電力不足の解決に役立つのだろうか。

実はDAにはもうひとつの側面がある。配電網内の電力の需要と供給のバランスを図るということだ。これには需要応答という機能も密接に関連してくる。最近参加したコンファレンスのパネルでも取り上げられていたが、これまで分からなかった電力の消費情況が、スマートグリッドでは実時間で細かく把握できる。もちろんこれはすべての消費者がネットワークで電力会社と接続されていることが前提となる。日本の電力会社はスマートメータの設置実験を行っていると聞いている。しかしメータの積極的な設置には至っていない。それは、電力はふんだんにあるので少々の需要増加にはびくともしないという大前提があるからだ。

電力消費量を正確に把握するには、すべての消費者がネットでつながっていることが望ましい。一番簡単なのはPLCと呼ばれる電力線を介したネットワーク接続だが、米国も日本もPLCは発達していない。そのため独自のネットワーク接続が必要となる。それがスマートメータと自動メータインフラ(AMI)だ。スマートメータの設置は費用も時間もかかることは間違いないが、電力問題を本格的に解決しようとするなら避けては通れない。米国ではスマートメータ自体の費用や取り付け工事費用は電気料金に上乗せされている。そんな馬鹿なと思うかもしれないが、電力会社が新たなサービスや製品を提供する場合、それに掛かる費用はほとんどすべて電気代に上乗せされる。日本でも同じだろう。ソーラーパネルから発電される電力を電力会社が買い取る経費はすべて電気料金に上乗せされ、消費者全体で負担している。ソーラーパネルを持っていないあなたも私も、ソーラーパネルを持っている一部の消費者への支払いに協力しているのだ。

スマートメータの設置には23年を要するだろう。だが23年のうちに電力問題が解決すると期待しない方がよい。我々が使用できる電力は自然界には存在しない。異なったエネルギー源から作り出すわけだが、そのエネルギー源を日本ではほとんどすべて輸入に頼っている。今後エネルギー源の争奪戦が世界中で起こることは間違いなく、価格も高騰すると予測される。その中、発電効率が比較的高く温室効果ガスを出さない発電エネルギー源ということで、原子力が急速にエネルギー政策の柱になっていったという事情がある。しかし今回の事故で、原子力による発電は漸次減少していくのではないか。

原発を廃止して再生可能エネルギーを使えという感情的な論調を最近よく耳にする。しかしソーラーパネルなどの再生可能エネルギーによる発電量は、火力や原子力に勝るのに10年どころか、数十年かかかってもそのレベルに達しないかもしれない。再生可能エネルギーを利用することは当然必要だが、現実には化石燃料も不可欠なのだ。我々には、電力を無駄なく最適に使用するしか方法はない。そうしなければ、一日のうちに電気がつくのは数時間、という時代も決してあり得ないことではないのだ。

次回は、数年後スマートメータが大部分の消費者に設置されたとして、スマートグリッドがどのように電力不足解消に役立つのか見てみようと思う。

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