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AI時代の営業新常識:「先生」と呼ばれる営業になるための思考法

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「それなら、こういうやり方がいいと思いますよ。」

お客様との初回の打ち合わせで、相手の状況を的確に捉え、課題と解決策を鮮やかに提示できる。そんな営業は「優秀」だと評価されるでしょう。

しかし、AIがビジネスのあらゆる場面で活用される現代において、トップ営業に求められる姿はさらに進化しています。それは、単なる「物売り」や「御用聞き」ではなく、お客様から「先生」と慕われる、唯一無二のパートナーになることです。

この記事では、「先生」と呼ばれる営業がなぜ最強なのか、そして、その領域に到達するために必要な思考法と、それをAIでいかに加速させるかについて解説します。

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お客様が「先生」を求める理由

あなたは、熱が出たら医者に行きますよね。「3日間は安静にしてください」という医師の言葉を、私たちは「先生」として信頼し、受け入れます。

営業も同じです。お客様が抱える漠然とした不安や、整理されていない問題意識を解きほぐし、

「なるほど、うちにはそういう課題があったのか」 「こうすれば解決できるのか!」

という「気づき」を与えることができれば、お客様はあなたを「先生」として認識し始めます。

そうなれば、もはや「売り込む」必要はありません。何かあれば真っ先に相談され、あなたの言葉に真剣に耳を傾け、行動してくれるようになります。競合他社の存在は消え、価格競争からも解放されるのです。

実際に、ある企業がファイルサーバーの導入で3社に提案を求めた際、面白いことが起きました。予算1500万円に対し、2社は予算内で提案。しかし、残る1社は顧客の要求仕様を徹底的に分析し、「このままでは運用に無理が出る」と判断。ユーザーへのヒアリングを重ね、あるべき姿を再定義した結果、2000万円の提案をしました。

結果、採用されたのは2000万円の提案でした。お客様は、自分たちのことを真に考えてくれた「最高の提案」に感謝し、予算を工面してくれたのです。これこそが、「先生」の仕事です。

AIと共に実践する!「先生」になるための3つの思考法

では、どうすれば誰もが「先生」のような営業になれるのでしょうか。その鍵は、以下の3つの思考法を身につけ、AIを相棒として使いこなすことにあります。

1. 課題から考える(解決策に囚われない)

優秀な営業は、自社の商品やサービスをどう売るか(解決策)から考えません。まず、お客様の「あるべき姿」「現状」のギャップ、すなわち「課題」は何かを考えます。

  • 人間の役割: お客様と対話し、「本当はどうなりたいのか?」という理想の未来像を共に描きます。現状の制約を一旦忘れ、ゼロベースで議論を導くファシリテーション能力が求められます。

  • AIの活用: ここでAIが強力な武器になります。市場トレンド、競合の動向、関連する法規制、社会経済の動向など、人間が手作業で集めるには膨大な時間がかかる情報をAIが一瞬で収集・分析します。さらにお客様の公開情報(決算資料や中期経営計画など)を読み込ませることで、客観的なデータに基づいた「あるべき姿」の仮説を複数提示させることも可能です。これにより、議論の質とスピードが格段に向上します。

2. 抽象化する(具体に囚われない)

お客様の抱える問題は、一見するとどれも個別で具体的なものです。しかし、個々の事象に振り回されていては、本質的な解決策は見えません。具体的な事実から共通のパターンを見出し、問題を「抽象化」する能力が必要です。

  • 人間の役割: お客様からヒアリングした具体的なファクト(事実)を整理し、カテゴリーに分類します。そして、自身の経験や知識と照らし合わせ、「この問題は、あの時のケースと似ているな」と類推し、解決策の方向性を探ります。

  • AIの活用: AIは、この抽象化プロセスを劇的に進化させます。CRM/SFAに蓄積された過去の膨大な商談履歴、顧客とのメールや議事録などをAIに分析させます。すると、個々の営業担当者の経験則を超え、「この業界のこの規模の企業は、共通して〇〇という課題を抱えやすい」といった、人間では気づきにくい隠れたニーズのパターンを抽出してくれます。

3. パターンを探す(ルールや分野に囚われない)

「課題から考える」と「抽象化する」を繰り返していくと、あなたの中に成功の「パターン」が蓄積されていきます。このパターンの引き出しの多さが、営業としての実力そのものです。

  • 人間の役割: 自身の経験だけでなく、読書や勉強会、異業種交流などを通じて、自社の常識や業界のルールに囚われない、多様な視点からパターンを収集し続けることが重要です。

  • AIの活用: この領域は、まさにAI(特に機械学習)の独壇場です。大量の成功・失敗事例データを学習させることで、AIは「勝利の方程式(成功パターン)」を自ら見つけ出します。例えば、「このパターンの課題を持つお客様には、この順番で、これらの情報を提供し、この役職の人を巻き込むと成約率が最も高い」といった、極めて具体的な行動プランまで提示してくれるようになります。これは、かつてトップ営業だけが持っていた「暗黙知」を、組織全体で共有できる「形式知」に変えることを意味します。

AIは思考を代替するのではなく、増幅させる

「こんなスキルはコンサルタントの仕事だ」と思うかもしれません。しかし、営業の究極の目標が「数字を達成すること」であるなら、お客様の事業課題に深く貢献し、「先生」と呼ばれる存在になることこそが、最も確実な道です。

AIは、営業の仕事を奪う脅威ではありません。むしろ、私たちが「課題から考える」「抽象化する」「パターンを探す」といった人間ならではの高度な思考を行うための、知性を拡張するツールです。

AIに情報収集やデータ分析を任せることで、私たち営業は、お客様との対話や、あるべき姿を描くといった、より創造的で価値の高い活動に集中できます。AIという最強のパートナーと共に思考を磨き、お客様から心から信頼される「先生」を目指してみてはいかがでしょうか。

今年も開催!新入社員のための1日研修・1万円

AI前提の社会となり、DXは再定義を余儀なくされています。アジャイル開発やクラウドネイティブなどのモダンITはもはや前提です。しかし、AIが何かも知らず、DXとデジタル化を区別できず、なぜモダンITなのかがわからないままに、現場に放り出されてしまえば、お客様からの信頼は得られず、自信を無くしてしまいます。

営業のスタイルも、求められるスキルも変わります。AIを武器にできれば、経験が浅くてもお客様に刺さる提案もできるようになります。

本研修では、そんないまのITの常識を踏まえつつ、これからのITプロフェッショナルとしての働き方を学び、これから関わる自分の仕事に自信とやり甲斐を持ってもらおうことを目的としています。

参加費:

  • 1万円(税込)/今年社会人となった新入社員と社会人2年目
  • 2万円(税込)/上記以外

お客様の話していることが分かる、社内の議論についてゆける、仕事が楽しくなる。そんな自信を手にして下さい。

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【第1回】 2025年6月10日(火)
【第2回】 2025年7月10日(木)
【第3回】 2025年8月20日(水)

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