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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

K社をすごいと思った理由はちょっと意外かもしれません

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ITに強いビジネスライター 森川ミユキです。

日本有数の利益率を誇り、新卒社員でも1千万円を超える給料がもらえるというので有名なKという会社があります。メーカーですが工場を持っていないことでも有名です。お客さまに徹底的に寄り添って、最上級の製品を企画・提案し、納品し、アフターサポートもすばらしいという会社です。

メーカーなので技術力も当然高いのですが、営業力がすごい。提案営業という言葉はK社のためにあるのかもしれません。

もう10年以上前になるのですが、ある事例制作会社のお仕事で、K社の案件を数件やらせていただいたことがあります。私のK社に関する印象は、そのときの経験によるものなので、別のK社像がある人もおそらくおられることでしょう。私の個人的な見解なので、そこはご容赦ください。

まあ数少ない経験ではあったのですが、私はK社ってやっぱりすごいんだなあと思ったのです。

なぜでしょうか?

それは事例取材に営業が来なかったからなんです。そんなことがなんですごいのと思われたかもしれませんが、まあ聞いてください。

普通の会社では、事例取材にはかならず担当営業が同席します。それが問題ということはないのですが、ライターにとっては人数は少ないほうが助かります。狭い会議室にぎゅうぎゅう詰めになることもあるからです。そうなるとメモを取るのも大変です。

担当営業が同席するのは礼儀でもあるでしょうし、顧客が何を言い出すかわからないので牽制する意味もあるのかもしれません。また事例取材を通して次のニーズを探りたいという気持ちもあるでしょう。だから繰り返しになりますが問題ではないのです。ただ営業が何人も来る会社もあり、せめて一人にしてよと思うことはあります。特に上司とかは要らないです。

ところがK社の事例取材には営業は誰一人来ませんでした。マーケの人が同席しただけです。

営業の悪口があるなら言ってください、と言わんばかりの態度です。しかし担当営業の悪口を言う会社は1つもありませんでした。それどころか褒めちぎるんです。「○○さんもお忙しいでしょうから来られなかったんですよね。でもせっかくだから会いたかったなって言っといてください」と言う人もいました。嫌味じゃないんですよ。心底褒めてからそういうんです。K社に感謝こそすれ、文句なんかないと。不満があるかと聞くと、「不満ではないけど、○○さんがもっと来てくれたら嬉しいな」ぐらいの感じなんですよ。

数社を取材したに過ぎませんが、どこもそんなんでした。

正直な意見を言えば、事例取材に同席するなんていうのは、何の顧客価値も生まないんです。そんな時間があれば、顧客のために次の提案を考えるとか、勉強をするとかすればいい。K社の営業はそういうことをしているわけで、それを顧客もわかっているんですね。

そりゃあ利益も出るし、給料もいいわけだと私は感じ入りました。

価値を生まないことは大胆に切り捨てて、価値を生むことに集中しましょう――という話を最近よく聞くので、K社のことを思い出しました。K社は何年も前から、それを徹底していたのだと思います。

普通であり、問題がないだけでは、もうダメなのかもしれません。

追記)実はマーケの人すら同席せず、私一人で行ったこともありました。それでも取材相手は、「K社さんってそんなとこありますよね」って笑っていたのです。これにはさすがに魂消ましたね。後にも先にも事例取材にマーケが来なかったのはこれっきりです。


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