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【AI・マーケ・禅】阿頼耶識に現代ビジネスのカギがあるかもしれない

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楞伽経(りょうがきょう)と阿頼耶識(あらやしき)

禅ではお経を読むということをあまりしないが、例外的に金剛経と般若心経が重視されている。ただし、これは六祖慧能以降のことで、達磨大師から五祖弘忍(ぐにん)までの初期禅宗においては楞伽経が重視されていたという(『禅とは何か』(鈴木大拙)など)。

楞伽経は、如来蔵思想と唯識論が説かれたお経である。内容に深入りするととても長くなるし、深入りできるだけの力もないので、ここではこれにとどめておく。

今回ちょっと触れてみたいのは、唯識論で言われている「阿頼耶識(あらやしき)」についてだ。

僕は見ていないのだが、「機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ」に阿頼耶識システムというものが出てくるそうで、アニメファンにもおなじみの概念かもしれない。

唯識論は、フロイトやユングが開拓した近代心理学に似ている。人間の心を8層に分けているのだが、そのうち最下層の2つ、末那識(まなしき)と阿頼耶識がフロイトのいう無意識に相当する。そのうち阿頼耶識はユングのいう集合的無意識とよく似た概念となっている。

楞伽経の成立時期は4世紀後半ごろと言われる。日本では朝鮮半島と積極的に接触しながら、ヤマト政権による統一が進んでいたころだ(詳しい文献が残っていないので、「空白の4世紀」といわれる)。こんな昔に、近代心理学と同じような考え方が既にあったとは驚きだ。

だが、似ているには違いないが同じものだと思うのも早計だ。集合的無意識といえばなんとなく分かるので、たとえとして使っているだけ。これで分かった気になってはいけない。

いけないのだが、しかし仏教の深い理解が目的ではないので、阿頼耶識とは集合的無意識に似たようなものだと、ここでは理解しておいてください。

集合的無意識とは

「集合的無意識」という言葉はなんとなく分かるということで出したのだが、説明が必要かもしれない。Wikipediaには、「個人の経験を越えた先天的な構造領域」と書いてある。

ユング心理学では「元型」というものを重要視している。たとえば太母や老賢人という元型が有名だ。太母は母なる大地の象徴とであり生命的原理を表す。老賢人は知恵の原理だ。この生命的原理を母にたとえたり、知恵を老人にたとえたりするということは広く世界中で共通している。

なぜ世界的に共通しているかということの説明で出てくるのが、集合的無意識だ。ユングは個々人の意識が集合的無意識によって交流していると考えたのである。

集合的無意識の交流で発生する事象を、シンクロニシティという。「意味のある偶然の一致」といった意味だ。たとえばUFOがある地域で見られたと思ったら、同時多発的に世界中で見られるようになるといったようなことだ。

ここまで来るとオカルト一歩手前というより、完全に接している。一部重なっているかもしれない。だから、科学的理性に基づく教育を受けている私たちには、にわかに信じられるような話ではない。

だが阿頼耶識といい、集合的無意識といい、あるいはスピリチュアルの世界でいう引き寄せの法則といい、人間にはこのようなことを信じたいという気持ちがどこかにあることは確かだろう。

無意識とネットワークがカギ

同一視はいけないとしても、阿頼耶識とは集合的無意識に似ているということで、以後は阿頼耶識を主語に話をしていこう(何しろ禅がテーマの1要素なので)。

阿頼耶識の特徴は2つ。1つは無意識であること。通常では意識できない領域だということだ。

サブリミナルコントロールというような意味ではなく、マーケティングとはそもそも無意識に訴えかけるものである。もちろん課題とその解決といったような理性的・意識的な部分は広告には必ず含まれている。

しかし購買するかどうかは、もっと感情的・無意識的な部分で決定している。これはBtoCでもBtoBでもそうであろう。

たとえばプレゼンやトークのうまさみたいな要素は大きいが、これは理性的・意識的な要素だけで説明できない。

あるいは、そもそも理屈で片付くのであれば、ビッグデータを高度な統計技術やAIなどで解析する必要などないではないか。データドリブンマーケティングとは、データから「生活者の無意識」を掬いあげているのである。

阿頼耶識のもう1つの特徴は、ネットワークであること。集合的無意識では時空を超える無意識の交流があるが、阿頼耶識ではさらに時間も超える。過去や未来もつなぐのだ(ただし禅においては、そもそも現在しかないという考え方がある)。

これはインターネットやクラウドに近い概念かもしれない。少なくとも過去は大量に蓄積されているし、未来予測のもとになるビッグデータも存在する。

さらにニューラルネットワークも深い層に行くと、人間の理解が及ばなくなっていく。これはネットワークでもあり、無意識でもあるように思える。

AI、特にディープラーニングというものは、インターネットから集めたデータを使って、自らのニューラルネットワークに深入りしていって、インサイトという無意識を拾い出してくるものと考えることができる。

これって、座禅とそっくりではないだろうか。

以上の話は、深遠な理解に基づくものではない。浅薄な理解に基づく単なるたとえ話だ。だが「阿頼耶識を理解することで、現代ビジネスのカギが見つかる」という予感については、たぶん当たっていると思うのである。

 


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