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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

確かに人柄こそが財産

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僕がこんなタイトルで書くと、またとんでもないひねくれた結論になるのではと思うかもしれないが、こればっかりは本当にそう思う――人間に人柄以上の財産などない、と。

 

んなことを考えるきっかけをくださったのは、原田由美子さんの「ひといくNow! ~人材育成の今とこれから~:新入社員に負ける時」だ。

この中で、原田さんが20代後半だった頃、新入社員のIさんに負けた、と思ったエピソードが2つ語られている。

1つは、ある研修のサポートに二人で行ったときに、Iさんだけが顧客から褒められたこと。理由はIさんが顧客側の見送りに対して何度も振り返ってはお辞儀をしたということだった。

もう1つは、Iさんがいきなり新規開拓に成功したこと。理由は、一度も仕事をもらったことがないのに、その会社のために休日返上で情報収集をしたということだった。

原田さんは、上の記事で以下のようにまとめている。

Iさんは人材育成業界を離れた今でも、ご縁のあるお客様から「あの人に会いたい」「またあの人と一緒に仕事をしたい」と言われる存在です。

そのように言われるのは、Iさんに知識・技術、経験があるからではありません。Iさんの「人柄にほれて」というのが正しいでしょう。その「人柄」を支えるもの(Iさんで言えば、「一緒に仕事をする人が気分よく仕事ができるように。喜んでいただけるように」)のある、なしなのだと思います。

僕は、この意見にまったく同意する。

ただ、Iさんの人柄をすばらしいとする、この二つの例は多少性格の異なるものだということだけは、指摘しておきたい。

 

辞儀に関しては、これは礼儀作法である。

礼儀作法というものは、人柄とは関係なく、約束ごとである。これは誰がやってもいい。

その証拠に、人柄にかなり問題があると思われる僕でさえ、これと同じことをやっている。

こういうことは、いいと思えば今日からやればいいし、それを見た人がいいと思う確率も高い。あの人は人柄はイマイチだけど、礼儀だけはしっかりしていると評価されることさえある。

難しいのは、もう一つのほう。無償での、しかもかなり労力のかかる奉仕である。

これは、人柄のいい人しかやってはいけないことだ。これをやってIさんは評価されたのだから、Iさんは本当に人柄がいいのだ。

わかるでしょう? 人柄に問題がある人間に、無償で労力のかかる奉仕をされたとしたら、あなたは褒める前に警戒するでしょう。どれだけ見返りを要求されるか、とか。

顧客側は、知っていたら教えてぐらいの軽いノリでIさんに相談したそうだが、相談する時点でIさんの人柄の良さを認めていたのだと思う。

 

初は無償で奉仕しましょう。無償でここまでやるかと感動させましょう。そうすればファンが増えて、商売繁盛です。

このような成功法則があるが、これって人柄がいい人がやらないと、商売繁盛にはならないと思う。これでうまく行っている人は、実際に人柄がいいのだ。

逆に人柄も磨かないうちに、テクニックとしての無償奉仕をやり、かえって失敗している人も多い。裏があると思われるのだ。

ただ、人柄を磨くのは大変だ。

原田さんは、個人的にもお付き合いがあり、人柄のいい人だと思う。これも20代のときに、素直に新人のIさんに負けたと認め、それから人柄を磨いてきたからだろう。

20代はまだチャンスがある。だから新入社員へのメッセージとして、「人柄を磨こうよ、そのためには周囲が喜ぶことをまず心がけようよ」というのは、僕はベストだと思う。

人柄以上の財産はない。他の財産をすべて失ったとしても、本当に人柄がよければ助けてくれる人が必ずいる。チャンスがあるうちにこの財産を築こう。

 

かし、30代も後半になってから人柄を良くしようと思ったら、これはよっぽどの体験がないと難しいと思うのだ。たとえば雷に打たれたが生きていたとか。

30代後半にもなって、どうも自分の人柄には問題があると思ったら、逆にそれを認めて、ウリにしてしまうほうがいいように思う。

マツコ・デラックスの名言もあるではないか。

ネガティブの反動でしか生きていくしかない人種もいるのよ!

だから、マツコは愛される。正直だからだ。

人間は社会的な動物だから、目の前にいる人の人柄がいいかどうかは簡単に見抜くものだ。そうでないと生きていけない。だったら、見え透いたことをやるよりも正直にやるのがいい。正直になることは、誰でも今日からできる。

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