そんなに簡単に謝っちゃうんなら、最初からもっと気をつければいいのに・・・(#145)
謝罪ではマイナスが良くてゼロになるだけだが、感謝ではプラスになる。
●解説
確かに、自分がうっかりしていただけとか、気づかなかったという場合には、謝るほうがいいかもしれません。こちらは、割と軽いケース。
また、深刻なトラブルで明らかに自分に落ち度があった場合も、まず最初に謝るほうがいいかもしれません。こちらは重いケース。
要するに、私は、軽い場合か重い場合の両端にある場合は、謝るのもありだと思っています。
なぜ、そう思うかというと、謝罪というのは、マイナスをゼロにする効果しかないからです。
軽い場合は、まあ帳消しになれば、それでいいので、謝ります。
重い場合は、まずはゼロを目指して、そこからプラスにするという段階を踏む必要があります。だから最初に謝る。
しかし、中間のことに関しては、いきなり謝るのはどうも得策ではないようです。
マイナスがゼロになればまだしも、マイナスのままでとどまるケースが多いから。
謝られたほうは、そんなに簡単に謝っちゃうなら、最初からもっと気をつけろよという気持ちになってしまうんですね。
あるいは、こいつは反省していないけど、とりあえず謝ればいいと思っているのかもしれないと勘ぐったりもする。
どちらにしても、謝る人をあまり信頼しなくなる。せっかく謝っているのに・・・
では、どうするか。
感謝すべきだと思います。
そのようなことは知りませんでした。教えていただいてありがとうございます――こう言えばいいだけです。
人間、感謝されると、相手に対する好感度がアップします。そうか今まで知らなかったんだね、じゃあ今度からは気をつけるといいよ、という寛容の気持ちも湧いてきます。
たとえば、あなたがコールセンターにクレームをつけたとしましょう。以下の二つのパターンで、あなたの満足度はどちらが高いでしょうか?
- 誠に申し訳ございませんでした。今後はこのようなことがないように気をつけます。
- 今回は、私どもの至らない点をご指摘いただきありがとうございました。今後のお客様満足の向上に役立たせていただきます。
私は、圧倒的に2です。
「今後はこのようなことがないように気をつける」なんてことを、このオペレータは思ったかもしれませんが、それが会社全体で共有されることなどまずあり得ない。大人なら誰でも知っていることです。こういうのを、しらじらしいと言う。
信じません。ああ、単にマニュアルどおりに謝っているだけだなあと思います。
2のほうは、私は実感として分かるんです。だいたいクレームがきた瞬間は何に腹を立てているのか分からないことが多い。話をしているうちに、なるほどこういうことで人は怒ることがあるのかと思う。
まっとうな会社であれば、想定される範囲の手は打っているのはずです。なので、クレームが来るのは本当に「至らな」かったということが多く、それを指摘されるのはありがたいことなのです。そして、実際に対策を打ちます。
このような言葉が出てくる会社は、普段からクレームを宝にしています。そうでないと、出てこない言葉です。
●裏解説
前にも同じようなテーマで書きましたが、まだまだ分かっていただけていないなという事件が、私の身近でも起こりました。
謝罪ではマイナスがせいぜいゼロに、感謝ではプラスにという数値的なイメージで示せば、ある程度理解してもらえるかなと思い、書いてみました。
日本人は、反射的に謝る癖が体に染み付いています。謝る前にいったん意識して、ここは謝罪より感謝のほうがいいのではないかと考える癖をつけるべきだと思うのです。
日本人はすぐに謝るので、謝罪にあまり重みを感じないんです。単なる天候の挨拶ぐらいに感じることさえあります。これが、なかなか謝らないといわれている外国人が謝ると、この人は心から謝っているというふうに感じます。
とはいえ、けっしてテクニックとして使わないでください。それはそれで見抜かれます。
目の前の人に本気で感謝できるか?これが実は、人間の器が大きくなるかどうかの別れ目ではないかと、私は思っています。
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