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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

差別化とは? ~ あるいは、なぜコピーライターは高いのか?

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コピーライターの価格もピンきりですが、文字単価で言えばライター界で最高値です。

最近はどうか知りませんが、以前はキャッチコピー1本で数百万円から数千万円というコピーライターが何人もいました。

なぜ高価なのかについて、1本のコピーを作るのに、取材費や調査費も必要だし、何度も打ち合わせが必要、そういう費用が乗っかっているからだと説明する人もいます。

しかし、このような事情はあらゆる記事で同じなので、なぜコピーだけ突出して文字単価が高いのかの説明には、まったくなっていません。

ボディーコピーも含めれば、それほどの単価ではないという反論もあるかもしれませんが、どう見ても駆け出しのコピーライターでもA41枚で数万円から十数万円になります。雑誌記事ではありえない(苦笑)単価です。

なぜコピーだけこんなに高いのでしょうか?

● 「何を」提供しているかが明確に言える人はほとんどいない

ここで自分軸の話になります。

昨年末に333営業塾の事業をはじめてから5ヶ月。その間に、YM式クロスSWOT分析と我々が呼んでいる方法論に基づいて、3時間で最初の打ち手を見つけ出すというワークショップを5回やってきました。

のべ40社以上の経営者や営業マネージャーが参加してくださいました。

SWOT分析などというキーワードに惹かれてやってくる人たちなので、優秀な方ばかりです。

我々が驚くほどきちっと事前課題をやってきて、2時間のワークの時間を有効にお使いになっていました。

ワークのアウトプットはA3の用紙1枚にまとめるのですが、それがみなさん真っ黒になっていました。

掛け値なしに優秀です。

それなのに、顧客価値(自分軸でいう「何を」)が分らないと書けない部分は、ことごとくみなさん書けないのです。

ワークの間、二人のコンサルタント(吉見範一さん&筆者森川)が会場を回り、行き詰まっている人がいればアドバイスをするという形をとっていました(過去形なのは、このセミナー自体を4月で終了したからです)。

行き詰まっている人に、改めて「『何を』提供しているのですか?」と尋ねると、返ってくる答えは扱っている商品のこと

事前に1時間の座学があって、そこでさんざん「『何を』というのは、顧客から見た価値ですよ。ベネフィット(便益)とも言います」と説明してもこれなんです。

● 商品価値を説明しなければという強迫観念が染み付いている

事前に有名な事例を持ち出して説明しています。

「ドリルを買いにきたお客様に対して、ある店員はドリルを売らずして、しかもそのお客様をリピーターにしました。何をしたのでしょう?」(※答えは文末にて)

こういう話をして、納得してもらった上でワークをやってもらう。

それなのに、「『何を』提供しているのですか?」と尋ねると、「システムの構築です」とか「貯蓄型の生命保険ですがファイナンシャルプランニングもやっています」といった答えが返ってきます。

彼らの名誉のために繰り返しますが、参加者はおしなべて優秀な方ばかりです。

なのに、すぐに商品を語ろうとする

商品価値(機能、性能、価格など)を説明しないと買ってくれないという強迫観念が、心と体に染み付いているとしか説明のしようがありません。

● 商品が選ばれる理由

なぜ商品を説明してはいけないのでしょうか?なぜ顧客価値にフォーカスしないといけないのでしょうか?

これは実に簡単で、世の中に商品が増えすぎてしまったからです。

みなさん選ぶのがおっくうになっています。あるいはがんばって選択しても何か不満が残るとあきらめています。

このような状況で、人はどういう理由でモノやサービスを選ぶのか?

答えは、自分にとってそれを所有することがいかに「快」であるかです。それが商品選択の最重要選択要因となっています。

たとえば、iPhoneが選ばれている理由はなんでしょうか?

もちろん便利だということもありますし、Appleのブランドもあります。

しかし、ぼくの知り合いでiPhoneを持っている人たちに尋ねたところ、大きく二つの価値で買ってことが分りました。

一つは、持っていること自体が自慢になること。

先端的な人間だと思われるというようなことです。しかも、その自慢のしかたもけっこう微妙で、そういう自慢をする私は可愛くない?といった感じのお茶目さもミックスされている感じです。

もう一つは、操作していて楽しいこと。

操作性が良いというレベルではないんですね。指でこねくり回していると、想像通りの動きをする。それが楽しくて一日中触っている。そういう人が多い。これも一つの価値です。

こういうことで商品は選ばれています。

製品の機能ではないのです。持っていることにどういう意味があるのかというレベルで選ばれているのです。

なので、商品そのものの機能、性能、価格などを訴求しても売れません持っている意味=顧客価値にフォーカスして話をすべきなのです。

● 差別化とは?

ここまでお話しすると、差別化というものが何かということを説明できる人が半分ぐらいになっているのではないかと思います。

まずは、おのおので確認してください。

「差別化とはなんですか?」

際立った機能・性能を持たせること、と答えた方は、不正解ではありませんが、100点満点で40点ぐらいしか差し上げることができません。

際立った機能や性能を持たせても、すぐに追随されてしまい、今度は新規参入商品との差別化を考えなければならなくなります。

我々の言う差別化は、

  ライバルより先に商品の際立った顧客価値を見つけ出して言語化すること

です。

要するに、

  顧客の心に響くキャッチコピーを発見すること

に他なりません。

ようやく冒頭の、なぜコピーライターは高いのかという問いかけと合流しました。

商品に新機能をつけて差別化しようとすると莫大な費用がかかります。莫大な費用をかけて差別化しても失敗する場合もあります。仮に成功しても、ライバル企業が追いつくまでの短い間のことです。

言葉一つで商品を差別化できるのであれば、たとえ数百万円から数千万円かけても安いものなのです。

そのうえ、顧客価値を見つけ出すということは、一種の特殊技能です。内部の人間にとってはことさら難しいことになります。外部の人間のほうがまだ容易に発見します。

顧客価値を発見して、それを言語化できる人にお金を払うのは当然のことなのです。

● 売れていない人は見直してください

実を言うと、ぼくも以前はキャッチコピーやタイトルをバカにしていました。そんなことより内容がよければ読んでもらえるだろうし、セミナー等の申し込みもあるだろうと考えていました。

大きな勘違いでした。現在では、タイトルやキャッチコピーが9割以上の重要性を占め、残り1割が内容だと思っています。

かといって内容をおざなりにしているわけではありません。内容は今まで通りあるいはそれ以上に充実させながらも、以前の100倍以上もタイトルやキャッチコピーに気を遣うようになったという意味です。

よほど傲慢でない人ならすぐに分ることです。

どんな有名作家の書いた文章でも、よっぽどのファンでもない限り、タイトルや冒頭の数行が面白くなければ、あなたは絶対に読まないはず

そう考えれば、我々がタイトルやキャッチコピーあるいはつかみの文章に気を遣わないのであれば、それは謙虚さがまったくないと言っても言いすぎではありませんよね?

御社の商品が売れていないとしたら、まずパンフレット等を見直してください。

キャッチコピーで負けているというよりも、キャッチコピーすらないのでは?

冒頭を変え、構成を見直すだけで、バカ売れし始めるかもしれませんよ

※文中の問いの答え
お客の話をじっくり聞き、欲しいものはドリルではなく、板に開いた穴だということを察知して、穴を開けた板を売った。感激したお客は何か作るものがあるたびにこの店に必要なものを買いにくるようになった。顧客価値を考える際に出てくる有名な事例です。

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