実況!コンサルティング・ライブ
昨日は、333営業塾(吉見範一氏&筆者・森川)のセミナーでした。
今回は初の試みとして、自分軸を発見するコンサルティング・ライブをやりました。
結果は大成功。その後の懇親会も盛り上がり、飲みすぎがたたって今頃の時間帯(いつもは朝)のエントリーになってしまいました。
今回は、コンサルティング・ライブの実況中継をしてみようかと思います。
●事前準備
今回、ライブで相談者になってくださったのは、小池崇さん(仮名)。
まずは、ホワイトボードに下図のような配置で、氏名と「誰に」「何を」「なぜ」と書きこんでいきます。
▲図1.ホワイトボードの配置
最初に伺うのは、職業です。
森川:小池さん、よろしくお願いします。
小池:よろしくお願いします。
森川:まず、ご職業を教えてください。
小池:研修会社で法人向けに講師をやっています。
ここで、氏名の横に「法人向け研修会社の講師」と書いて、準備完了です。
●まずは「誰に」から
最初に「誰に」を訊いていきます。
前半は、答えやすい社会的ドメイン(属性)を訊きます。
森川:「誰に」研修を提供しているんですか?
小池:大企業が多いです。
森川:業種は?
小池:いわゆるモノづくり系の会社や、電話などのインフラ系の会社が多いですね。
森川:なるほど、確かに大企業が多そうですね。年齢層などはいかがですか?
小池:年齢と言うよりも、中間管理職向けです。
森川:地域は?
小池:東京・名古屋・大阪が多いですね。本社がある場所ということですが。
社会的ドメインが見えてきたので、次は心理的ドメイン(課題、悩み、性格など)を訊いていきます。
森川:参加者はどういう悩みを持たれていることが多いのですか?
小池:そうですねえ(少し考える)。フラット化が進んでいて、みなさん部下があまりいらっしゃらない。プレイングマネージャが多いんですね。とはいえ数名の部下はいるのですが、育成するためのスキルも時間もないので、部下が育成できなくて疲弊しているようですね。
森川:なるほど。他にはありますか?
小池:うーん(さらに考える)。そうそう。製造業ではグローバル化が進んでいるので、海外でマネージャができることを求められています。中国人や他のアジア人をマネジメントしなければいけないのですが、なかなかたいへんなようですね。
森川:参加者の性格や見た感じの様子はどうでしょうか?
小池:疲れている方が多いですね。あと冷めている人も多い。改革を嫌う保守的な方も多いようですね。
森川:ポジティブ/ネガティブで言うと?
小池:どちらかというとネガティブな人が多いかな・・・
どういう人に研修を提供しているのか、かなりクリアになりました。
●「何を」をとりあえず訊いてみる
次にやることは、「何を」を訊くことです。
これは、実は2回訊く必要があります。1回目はとりあえず、2回目は「なぜ」のあとにもう一度。
森川:では、「何を」を伺います。ズバリどんな研修をされているのですか?
小池:階層研修です。具体的な内容としては、我々は使命感と役割と呼んでいます。
森川:使命感は分かりますが、役割とは何ですか?
小池:使命を達成するための具体的な行動内容ですね。
森川:なるほど。補足はありますか?
小池:ファシリテーション型で、あるべき姿をまずご自身で考えていただきます。そうするとあるべき姿と現状のギャップが生じるので、それをどう問題解決すべきかも考えていただく。そういう内容の研修です。
1回目は、とにかく相談者自身に自分の提供しているものを語っていただきます。
そうすると、前回も書いたように、商品・サービスの内容を語ってくださるのが普通です。小池さんの場合もそのようになりました。
●「なぜ」を掘り下げる
次に「なぜ」を訊くわけですが、ここで掘り下げができればできるほど、いいコンサルティングになります。
掘り下げていく様子をご覧ください。
森川:次に「なぜ」今の仕事をされているのかを教えてください。
小池:まず会社のミッションになりますが、「人からはじまる創造と革新の未来づくり」をしたいからですね。
森川:小池さんの言葉にすると?
小池:はい。大企業の普通の人に元気になってほしい。そして、その子供たちが自分の親のように働きたいと思って欲しいからですね。
模範的な回答であり、何の文句もありません。しかしながら、まだ表層的です。もっと小池さんのパッションの源に近づいていく必要があります。
森川:なるほど、すばらしいです!では、そう思う理由は何ですか?
小池:日本の現状を見ていると、元気がありませんよね?日本を元気にしたいということかな。楽しい日本が世界を変えるというようなことになればと思うとワクワクします。
森川:本当にすばらしいですね。そういうことでワクワクする小池さんになった理由として、子供のころの体験とか、若い頃の体験で思い当たることがありますか?
小池:昔N社に勤めていたときに、同僚が疲れ切っていました。当時から何とか変えたいと思っていました。
森川:なるほど。過去の実体験に基づいているんですね?
小池:はい。それと、今あるのはやっぱりN社のおかげだと思っているので、N社も含めて日本の大企業に恩返しをしたいという気持ちがあります。
森川:小池さんの今の使命感を持つのに、影響を受けた人はいますか?現在生きている方でも歴史上の人物でも構いません。
小池:たくさんいるのですが・・・
森川:あえて一人を挙げるとすると?
小池:うーん。(少し考えてから)福島正伸先生ですね。話が分かりやすく、ウソがない。また、話の内容自体も感動的だけどきれいごとでないのが良かったですね。ぼくは誠実や正々堂々という言葉が好きなのですが、まさにその通りの方です。
●もう一度「何を」を訊く
ここまで「なぜ」を掘り下げていくと、「何を」がまったく変わってきます。
森川:「なぜ」今の仕事をしているかを掘り下げました。ここまで書くと提供しているものである「何を」が変わってきませんか?
小池:そうですね。ぼくが伝えようとしているのは、仕事をする楽しさ、もっと言えば「苦難の楽しさ」だと思えてきました。
森川:いい言葉が出てきましたね。まだ、出てきますか?
小池:あとは、「習慣の品質を上げる」ことですね。研修の内容は、PDCAの繰返しをきちっとやろうということなんです。日常の振り返りで、習慣を見直して上書き保存しましょうとぼくはよく言っています。
森川:いいですね。どうでしょうか?先ほどのままだと、「中間管理職に使命感と役割を考えてもらうファシリテーション型の研修を提供する」が「何を」でした。それが「苦難の楽しさと習慣品質の向上の方法」に変わりました。どちらが興味を持ってもらえそうですか?
小池:うーん。確かに後者のほうがいいですね!
森川:以上をまとめると、
「大企業の疲れて冷めている中間管理職に対して、仕事の苦難を乗り越える楽しさと習慣品質の向上のやり方を伝えて、子供たちがなりたいと思う大人に変わっていってもらい、日本を元気にする研修講師」
となります。ご自分の仕事が見えてきましたか?
小池:はい。すっきりしました。想像以上の結果でした。
ここまで、10分強。ホワイトボードは下の写真の通りとなりました。
▲図2.小池さんの自分軸
●個人の自分軸なら10分から30分で
以前は、先に「誰に」「何を」「なぜ」についてポストイットに書き出してもらってから、議論していました。
これはけっこう時間がかかりました。ネタが出すぎて、ぼやけることが多く、その調整に手間取ったのです。
流れがあったほうがいいと思い、今の順番にしたところ、個人の自分軸ならばだいたい10分から30分程度で見つかるようになりました。
これが企業や商品だともう少し時間がかかりますが、だいたい2~3時間あればたたき台が出るようなりました。
傾向で言えば、「誰に」はわりと簡単に出てくる人が多いようです。ここで時間がかかったり、いつまでたっても絞れないようだったりだとビジネスとしては要注意です。
ポイントは、「何を」を二段階で訊くことです。とりあえず訊き、「なぜ」を訊いてからもう一度訊く。この流れが大切です。
ホワイトボードの配置が図1のようになっているのも、「なぜ」を訊いて、「何を」に戻ってくるからです。それが分かりやすい配置となっています。
前後で「何を」が大きく変わると相談者は驚き、スッキリ感も大きくなります。その結果行動にも結びつきやすくなります。そのためにも「なぜ」を掘り下げることが大切です。
「なぜ」を掘り下げられるかどうかが「自分軸コンサルタント」の腕の見せどころなのです。
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