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コトづくり百景〜ビデオカメラに見る「コトづくり」

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 これまで「コトづくり」が必要とされる背景について「企業」「個人」「社会」の変化から考えてきました(いまなぜ、「コトづくり」か? 〜「企業」「個人」「社会」の変化から考えてみる〜)。これからのシリーズでは、「コトづくり百景」として具体的なコトづくり事例を紹介していきたいと思います。

 みなさんは、”アクションカメラ”と呼ばれる新しいビデオカメラ市場が生まれていることをご存知でしょうか?ある統計によると既にビデオカメラ市場の半分は、ビデオカメラ市場になっていると言われています。 

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 GoPro(ゴープロ)は、アメリカのカルフォルニア州にあるWoodman Labs社が開発した、身体やスポーツ用具に取り付けて臨場感ある映像を撮影できる「アクション・カメラ」という領域のビデオカメラです。機能を絞り、ターゲットユーザーを絞り、SNSを利用したプロモーションを行うことによって成熟したビデオカメラ市場を再活性化することに成功しました。

  • アクションカメラ市場を牽引する「GoPro(ゴープロ)」

 百聞は一見に如かず。まずは、こちらのYouTube画像を見て欲しいと思います。


YouTube: GoPro: Whale Fantasia

 既存のビデオカメラ市場の機能は、手振れ補正や高性能マイクなど日常生活での様々な記念イベント(入学式や誕生日、お稽古の発表会の撮影など)にターゲットを絞ったものが中心で、ある一定数のユーザから評価を得てきました。

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 確かにこれまでのビデオカメラでもアウトドアでの撮影は可能でした。ビデオカメラ各社もなども防水のケースなどを発売していましたが、GoProは、アクティビティ毎に独自のオプションを用意しているところが凄い。現在用意されているアクセサリーは、「サーフ」「スノーボード」「自転車」「オートバイ」「クルマ」「ダイビング」「ペットと楽しむ」「フィッシング」「スキー」「パラグライダー」「ラジコン」「ライブ」「ファミリー」「オールスポーツ」「ビジネス」といったカテゴリーとなります。

 例えば、ダイビングのアクセサリーだけでも下記のように豊富にアクセサリーが用意されています。これらのアクセサリーは、GoPro自身の商品もあるが世界中のアクセサリーメーカーが関連商品の開発に乗り出しているようです。

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  • ダイブハウジング
  • ヘッドストラップ
  • HDリストハウジング
  • ベースマウント(平面・曲面)
  • ハンドルバー/シートポストマウント
  • チェストマウントハーネス
  • アンチフォグプレート
  • フロートバックドア

 そして、さらにこれらのアクセサリーを実際に使用して撮影した映像がWebサイト上で楽しめる。GoPro自身のビデオもあるが、ユーザ自身が撮影したビデオをアップし、シェアできる仕組みがWebサイト上に組み込まれている。

Gopro

 さらにここまで市場が拡大した大きな要因にFacebookをはじめとするSNSやYoutubeなど動画共有サイトの普及も大きいと思われます。ユーザはここで最新の情報を取得できるだけでなく、様々な動画をシェアして周辺のコミュニティーに影響を及ぼしています。

 明らかにモノとしての価値を売っているのではなく、ユーザの体験や経験づくりに価値をシフトしていることがわかります。意図的にGoProが進めているかは判りませんが、気がつけば、既存のビデオカメラ市場とほぼ同じ大きさの新しいマーケットを創出することに成功しているのです。

  • 本体は、アクションカメラに必要な機能を厳選

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 GoProのカメラ本体は、アクションカメラとして機能を厳選している。例えば、「単焦点」「手振れ補正なし」「広角レンズ」「高フレーム・レイト」「最小限のボタン」「操作用モニターのみ」「小型・軽量」「4K対応」など。掲記の特定ユーザ層に向けて機能を厳選している。

  • モノのコモディティ化とサービスドミナントロジック

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 ビデオカメラをはじめ、日本のお家芸とも言えるモノづくりの世界では、コモディティ化の進展が近年最も悩ましい問題ではないでしょうか?品質や機能といったモノやサービスの単体の”交換価値(グッズ・ドミナント・ロジック)”ではもはや差別化は難しく、モノやサービス全体の”使用価値・経験価値(サービス・ドミナント・ロジック)”に人々の関心が高まっているからです。そして、多少高くても信頼できるお気に入りの企業の製品(モノ)やサービスを使い続けたいといった変化が出て来ています。

 従来のモノやサービスの単体としての考え方である”グッズ・ドミナント・ロジック”に対して、この”サービス・ドミナント・ロジック”の考え方は、モノのコモディティ化に対抗する企業の考え方としてコトづくりの実現に必要な視点だと考えています。

 つまり、成熟した低成長の市場でもコトづくりの視点で埋もれている市場ニーズを切り開くことができれば新たな市場を創出することができるのです。

(つづく)

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