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【現場からの報告】ワーケーションの違和感はどうなった? 広がりから2年。社会はどう変わったか

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こんにちは、竹内義晴です。

5月初旬に、MYOKO WORKATION WEEKというイベントを開催したのですが、そのときの模様を、岩手県・大槌町で移住定住を促進している伊藤将太さんが、noteの記事に取り上げてくださいました(伊藤さん、ありがとうございます。めっちゃうれしい!)

伊藤さんの記事には、こんな一文があります。

自分が「ワーケーション」に感じていた妙な違和感みたいなものが晴れていくのを感じました。

妙な違和感......その違和感は、人によってさまざまかもしれませんね。でも、その気持ち、よくわかります。なぜなら、ボクも最初は違和感を持っていた一人だったからです。

ワーケーションに違和感?

ボクがワーケーションに取り組みはじめた(正確には、声をかけられた)のは、2019年の夏?ぐらいからですが、誤解を恐れずに正直に話すと、ボクも当初は「妙な違和感」がありました。いくつか挙げてみると......

1、「誰ができるの?」問題

1つ目は、「ワークとバケーションの組み合わせって、一体だれができるの?」問題です。

それをもう少し具体的にすると、こんな感じ。

  1. 上司や同僚、理解してくれるかな? どうやって説得しよう......
  2. 旅費交通費はどうなるの?
  3. 仕事なの? 休暇なの? 労務管理は?
  4. 何かあったとき、労災は?
  5. 「あいつ、ちゃんと仕事してるのか」って思われないかな?

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特に1、2、5については気になりましたよね。というのも、ボクは2017年からサイボウズでフルリモート・週2日複業社員として働いているのですが、ワーケーションではなく、普通の出張でも、1、2は課題になるし、フルリモートで仕事をしていると、毎日が5との戦い(笑)という感じだったので。

だから、会社員の場合「できる人は少ないよな」と。できるとしたら、働く時間と場所の裁量があるフリーランスか経営者ぐらい?

2、「結局、競争になるんじゃない?」問題

2つ目は、「結局、競争になるんじゃない?」問題。

はじめてワーケーションという言葉を聞いたときに、「観光と同じことが起きるのではないか」と思いました。「観光と同じこと」というのは、一言でいうと「競争」ですね。名称が変わっても、やっていることが同じだったら、同じ結果になるよね、と。資源が豊かなところはいいけれど、そうでないところは疲弊してしまう。できれば、それは避けたいと思いました。

3、「お金、どこに投じる?」問題

3つ目は、行政のお金を「どこに投じる?」問題。

各宿泊施設が、「うちはワーケーションができますよ」みたいに、ワーケーションプランを打ち出すのはいいと思うんです。でも、行政の施策として打ち出す場合、平等に配分しないといけないから、予算を投じるところがあるとしたら「WiFi設備の導入を助成します」とか、「プロモーションをがんばります」ぐらいしかできないかも? なんて思いました。もっとも、これはボクが心配することじゃないかもしれないけれど。

4、「個人の行動を把握できない」問題

4つ目は、「個人の行動をキャッチアップできない」問題。

個人を対象にした場合、「来訪者の状況をキャッチアップできないな」とも思いました。仕事が好きな人だったら、PCをもって旅に行くのって、それほど特別なことではないですよね。ちょっとメールのチェックをするとかって、普通にします。それを「ワーケーションなのか、そうじゃないのか」って言われても、正直、よくわかんない。つまり、個人の行動は把握できない。だから「増えた」とも、「増えていない」とも言えない、というか。

5、「柔軟な働き方ができる会社が少ない」問題

極めつけは、サイボウズの社内で経験したことかな。

サイボウズは、働き方文脈で、かなり柔軟な会社だと思っています。新潟に住んでいるボクが、複業のような形ではたらくことができているのも、そのおかげです(ホント、ありがたい)。でも、ワーケーションが広がりはじめた2020年の夏ごろ、こんな会話が聞こえてきたんです。「ワーケーションっていうのをやってみたいけれど、上司の〇〇さん、なんていうかな」

この会話を耳にしたとき、ボクは明確に、こう思ったんです。「働き方が柔軟なサイボウズでさえこの状態なのだから、普通の会社だったら絶対に無理だ」と。

ちなみに、ボクはこれらの違和感を持っていたので、「ワーケーションに取り組むなら、企業が関われる、関わりやすい形である必要があるな」と思っていました。そのためには、明確に「仕事である」と言えること。また、2020年7月当時、「サイボウズでさえこの状況なのだから~」と思ったことから、一般的な会社員がワーケーションに行くのは難しい。そこで「企業研修や学びのような形で地域に行くならいいんじゃないか」と考えて、そのような仕立てにしてきました。

というわけで、ボク自身が「ワーケーションに取り組むことになったけれど、どうしよっかなぁ」と頭を抱えてきたタイプなので、冒頭の、岩手の伊藤さんの「妙な違和感」については、ひざをポンポンしてしまいたくなるほど、まったくもって同意したところなのでした。

ワーケーションの広がりから2年。社会はどう変わったか

さて、ワーケーションが多くの方に知られるようになったのは、2020年7月26日、当時の菅官房長官が、「新たな観光の形として、ワーケーションを推進する」と発言したのがきっかけです。

あれから2年が経過し、現状のワーケーション事情は......

まず、ワーケーションという言葉は、あきらかにひろがりましたよね。あと、日常会話のなかで「ワーケーションに行く」という話を聞く機会が増えました。たとえば、先に話したサイボウズの中でも、いまは、「ワーケーションしに沖縄にいく」「2週間、実家で仕事をする」といった内容を「ワーケーションに行く」と表現する人が多くいます。

だからといって、誰一人として「遊んでいる」人はいなくて、日中はみんなリモートで仕事をしています(当たり前とえば、当たり前か)。そのうえで、夜は各地を楽しむ、パートナーと一緒に過ごす......みたいな過ごし方をしているみたい。また、移住して、リモートで働いている人もいるかな。

また、妙高では、クラインガルテンという滞在型市民農園がありますが、1ヵ月滞在し、仕事はリモートで行っている方も増えています。また、研修や合宿のような形で訪れる企業もあります。

そういった、働き方の変化を身近で感じていると、「あぁ、2年前とは明らかに変わってきたな」と、肌身を通じて感じます。働き方は明らかに変化してきています。

でも、課題もあります。ワーケーションのような働き方ができるのは、結局のところ、「企業が、どのような働き方ならOKとするか」に関わっていること。ここ次第ですもんね。「やってみたいけれど、無理」というみなさんも多いと思いますし、そう思われるのも当然です。

だけど、「多様な働き方」はできるようにしていきたい

だけど......「多様な働き方」という面では、いまのままでいいのかな? いや、変えていかないといけないだろうな、とも思っています。地方に住む一人の人間としては、特に。

その理由はいくつかあるけれど、ひとつは、人口減少の問題ですよね。毎年、1つの県がなくなるぐらいの人口が減っている中で(2021年の人口減少は64万人鳥取県の人口は57万人)、いまのような東京一極集中型では、地方がもたない。地方にいるとね、子どもたちが減り、高齢者の割合が増えていく現実に、マジ危機感を覚えますよ。「10年後、どうなるんだろう?」「地域はもつのかな?」って。

あとは、一人ひとりの「働き方の尊重」「多様性の尊重」ですね。いままでのような、「仕事は会社でしなければならない」「転勤を"いや"とは言えない」といった、会社に合わせるのが当たり前という、個人が尊重されない、犠牲が前提の働き方って「会社ってなんなの?」「仕事ってなんなの?」って思っちゃう。子どもを育てながら、介護しながら、など、さまざまな事情を抱えながらボクらは働いているから。

そういう観点でみると、「多様な働き方」ができないと、困ってしまうのですよね。

ワーケーションって、その延長にあるのだと思います。なぜなら、「ワーク」+さまざまな「エイション」だから。

なので、ボクは、一過性の流行ではなく、「お金が出るから」でもなく、「多様な働き方・学び方の実現」という意味でワーケーションをとらえているし、仕事を通じて行ったり来たりできる仕組みを創りたい。何かに取り組むなら、何かしらの課題が解決できるようにしていきたいし、ちゃんと継続できるようにしたい。そんな風に、考えているタイプの人間です。

1日のうちで、もっとも多くの時間を費やしているのが仕事。それならば、少しでも楽しく働けた方がいいし、尊重されたほうがいい。それが理想だなと、ボクは思います。

......というわけで、現場からは以上です。

ご案内

8/21(日)~8/23(火) 夏休み。子どもが家にいる中、仕事をするのって大変じゃないですか。お子さんは日常ではできない自然体験ができ、親御さんはリラックスしながら仕事ができる親子ワーケーションを企画しました。普段がんばっているお父さん、おかあさん。たまには癒されたっていいんです。楽しく仕事をしたっていいんです。

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