心の回復力(レジリエンス)―「きっと、ボクは乗り越えられる」と思えるようになった理由
ボクは比較的、心の回復力(レジリエンス)が高い方だと思う。
でもそれは最近のことで、若いころは目の前に大きな障害が起こると、関わらないようにしたり、周囲に怒りをぶちまけたり、くよくよ悩んだりした。
もちろん今でも、そういうところが全くないってわけじゃない。できれば、面倒なことは避けたいし、悩むことだってたくさんある。
でも、以前よりは楽観的……というか、「なるようにしかならない」とか、「できることをするしかない」みたいな気持ちが働いて、とりあえずなんとかしようと思える自分がいることに気づく。
実はボク、現段階では人には言えない――いつかはそれもネタとして披露することになるのだろう――大きな課題を抱えているのだけれど、この間、旧友と電話で話したら、旧友は心配して「大丈夫?」と言ってくれた。それに対して、「まぁ、なんとかなるでしょう」と答えたら、「なんでそんなに楽観的でいられるのかが不思議だよ」と言われた。
そう、ボクにはそういうところがある。
「なんでかなぁ」って考えてみるんだけど、もっとも大きいと思うのは、過去に逆境を乗り越えた経験があること。だから、「きっとまた、ボクは乗り越えられる」と思えるんだと思う。
いろんなところで書いているので改めて詳しく触れないけれど、ボクには極度な仕事のストレスでうつっぽくなったことがある。もう、どん底だったよ。いや、どん底というより、底がないドロ沼って言ったほうがいいかもしれない。もがけばもがくほど足はすくわれ、どんどん深みにはまっていく……。
そのドロ沼に耐え切れなくなって、ボクはそこから一度逃げ出そうとした。つまり、会社を辞めたんだ。前から独立したいと思っていたし、これもいい機会だと思ってね。
だけど、当時の社長が「辞めて独立するのはいいけど、食えないだろう」と。「独立するのは止めないから、準備ができるまでもう少しここで働きなさい」と言ってくれた。「それもそうだな」と思った。まだ結婚して子供が生まれたばかり。奥さんと乳飲み子を露頭に迷わすわけにはいかなかったからね。
ボクは形式だけ独立して、個人事業主として働くようになったのである。
それから、管理職を任されることになるんだけど、自分すらうまくコントロールできないのに、部下をまとめることなんてできるはずがない(元々、人と関わるのがそんなに好きじゃなかったしね)。
部下をまとめるにあたって、「どうすれば部下がまとまらないか」という方法はよく知っていた。自分がされてきたことをすればいいのだ。でも、「どうすれば部下をまとめることができるのか」は分からなかった。だから、いろいろ調べた。その結果、コミュニケーションスキルを身につける必要があることに気づいたわけ。
変化が起きるのは、ここから。
勉強したことを実践したら部下に変化が起き始めた。もちろん、すべてが上手く行ったわけじゃないし、失敗したこともたくさんあるけど、とにかく、前向きになる部下が出だした。「そうか、人ってこうやって接するといいんだな」っていう感覚が分かるようになってきた。
あと、コミュニケーションの中では心理学も勉強したんだけど、心理学を勉強すると、自分の心の動きとか、過去のトラウマへの対処なんかが分かるようになる。そうすることによって、心のわだかまりを一つひとつ解きほぐしていき、前向きで柔軟な思考が身についていく。無理に「ポジティブに考えなきゃ」なんて思わなくても、学ぶ中で自然とそうなっていく。
そして、学んだことを職場で実践する。そうすると、
「学ぶ」→「学んだことを実践する」→「実践すると変化が起きる」→「変化が起きると楽しい」→「楽しいからもっと学びたくなる」
こんな好循環が生まれ始める。
そうするとね、意識的にはどうなってくるかっていうと、「おぉ、やればできるじゃん」って感覚に変わってくる。「なんとかなるじゃん」って思えて、成長感を抱くようになる。
そして、この循環を繰り返した結果、ボクはドロ沼から卒業することになったんだ。
このような体験があるから、どんな逆境が目の前に現れても「きっとまた、ボクは乗り越えられる」と思えるんだと思う。
「心の回復力」というキーワードで探すと、いくつかのサイトに触れることができる。心の回復力の高め方として「人に感謝する」「未来の希望をしっかりと描く」「自分の長所を書き出す」というようなアドバイスが書かれているサイトもあったけど、ドロ沼に足を突っ込んでいるときは、感謝しようと思ってもできないし、未来なんて描けない。「ずっとこの状況が続くんじゃないか……」と思うのが、自然な心の動きだと思う。だって、体がドロ沼の中へどんどん沈んでいくんだよ。そんなとき「ポジティブに考えましょう」なんて流暢なこと言ってられないじゃない?「誰か、助けてくれ~!」って叫ぶのが普通じゃない?
だけど、叫んでいるだけでは抜け出せないのもまた事実。誰かに何とかしてほしいけど、多くの場合、それは期待できない。自力で何とかそこから抜け出さなければいけない。だからこそ「心の回復力(レジリエンス)」が必要なんだと思う。
じゃあ、どうしたら心の回復力を身につけることができるんだろう?少なくとも、「人に感謝しましょう」「長所を書き出そう」のようなTips的なものではなさそう。もし、それで解決できるのなら、メンタル的に病む人がここまで多くないはずだからね。「こうすれば、心の回復力が身に付きますよ」ってほど、簡単なものじゃない。
じゃあ、全くないのかというと、そうでもない(少なくとも、ボクがそうなれたモデルはある)。今日は長くなったので、具体的な内容については改めて書くことにしたいと思う。
「人生には四季のようなサイクルがある」という人がいる。実際、人生の中には耐え難い逆境が訪れることが何度かある。でも、一度「心の回復力」を身につけると、どんな逆境が巡ってきても、何とか乗り越えられるようになる。
今の時代、多くの人に必要なのは、そんなしなやかさなのかもしれないと思い始めている。