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DJポリスの言葉をコミュニケーション心理学的に解説する

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こんにちは、竹内義晴です。

誠Biz.IDさんに寄稿している『ボクの不安が「働く力」に変わるとき』に、新しい記事 『サポーターの心をつかんだDJポリス――あの伝え方を職場で生かすには?』が公開になっています。よろしければご覧ください。

この記事は、あの DJ ポリスのコミュニケーション方法について書いたものです。一言でまとめると、「禁止(否定)+命令」でなく、「合わせる+導く」というコミュニケーションをしよう・・・ということです。

どんな方に分かりやすいように平坦な言葉で書いてみましたが、内容的にはコミュニケーション心理学NLPの手法に基づいています。

周りの方を望ましい方向にリードする際、まず何よりも大切なのが、「相手との信頼関係」です。なぜなら、こちらがいくらが正しいことを主張したとしても、相手との信頼関係がなければこちらの主張を受け入れてもらうことができないからです。

「信頼関係」というと、何かこう、長い時間をかけながら築いていくイメージがありますが、短時間で築かれる信頼関係もあります。例えば、まだ合ったばかりなのに、「この人だったら気が合いそう」とか、「この人だったら何となく自分のこと分かってくれそう」とか、「この人だったら本心を話してみてもいいかな」のような、長い付き合いがあるわけでもないのに、短時間で築かれる信頼関係もあります。長い時間をかけて作る信頼関係と短い時間で作られる信頼関係を分けるために、後者を「親近感」としておきましょう。

NLP では、「親近感」のことをラポールと呼んでいます。

ラポールが築かれるための、とてもシンプルな法則があります。それは、「相手と合っている」ということです。

その例として、最もわかりやすいのが生まれ故郷です。初めて会った人が同郷だと分かったとき、それだけで話が弾み、「もう少し話がしてみたい」と思います。

服装もそうですね。自分とセンスが近しい人には、何となく安心感を抱きます。

同じ職種や役職の人もそうです。その職種や役職の苦労や楽しさを知っているからこそ、「この人なら分かってくれる」となりますよね。

趣味もそうです。例えば車好きな人がいたとして乗っている車が同じだとそれだけで話に花が咲きます。実際、同じ車に乗っている人たちのサークルがたくさんあります。

NLPではこの「相手と合っている」というところに注目しています。合っているということは、つまり、似ているということでもあります。周りの方と親近感を作るために、この「相手と合っている」を様々なシチュエーションで生かすことはできないでしょうか。

これは、私が中間管理職時代に実際にやっていたことですが、私はスタッフと「姿勢を合わせる」という事よくしていました。

例えばスタッフが、リーダーに頼まれていた報告書の作成が終わり、リーダーのところに持ってくるシチュエーションを想像してほしいのですが、このようなシチュエーションでは一般的に、リーダーは椅子に座ったまま、スタッフは立ったままです。中には、言葉では「ありがとう、そこに置いておいて」などと言いながら、顔は前のモニタに向いたままのリーダーもいるかもしれません。

このようなシチュエーションのとき、私はキーボードの手を止めて、自分も立つようにしていました。逆に、隣の椅子が空いていればスタッフに座ることを促し、相手の方を向いて話すようにしたのです。実際にやってみるとよく分かりますが、たったこれだけのことをしばらく続けるだけで、スタッフとの距離感や親近感が変わってくることに驚かれるでしょう。

他にも、リーダーはとかく上から目線で物事を伝えがちです。もちろん、それが必要なシーンもあるかと思いますが、親近感を作るためにはスタッフと言葉の目線を合わせる、使う言葉を合わせるようにすると、さらに親近感が変わってきます。

このような、「合わせる」ことを、NLPでは「マッチング」、マッチングの状態を続けることを「ペーシング」と呼んでいます。

このようなお話をすると、「そんなことで本当に親近感が生まれるのか」「相手を操作しようとしているのではないか」と思われるかもしれません。マッチングやペーシングを、単にテクニックとして捉えると、そう思われるのも不思議ではありません。

けれども、マッチングやペーシングの本質はそこではありません。マッチングやペーシングを意識すると、そこに何が生まれるのかというと・・・単に親近感が生まれるだけではなく、相手と深いレベルでつながる感じがしてくるのです。そして、言葉にはなっていなくても、「なんとなく、この人の言わんとしていることが分かる」という感覚になります。どんな思考や感情でいるのかが伝わってきます。それはまるで、相手の思考の中に入っていく感じです。

そのような「合う」状態になったときに「導く」と、無理強いすることなくリードすることができるのです。

寄稿記事にもあるように、DJポリスは、「チームワーク」「フェアプレー」「チームメイト」「W杯」「日本代表」など、サポーターの周りにある言葉を使っていました。そして、「道を広く開けてください」「交通ルールとマナーを守りましょう」のようにサポーターのみなさんを導いていました。

とかく私たちは、「それではだめだ。○○は△△すべきだ」「それは違う。○○は△△しなければならない」と伝えがちです。もちろん、私だってすべての状態で「合わせる+導く」ができているとは思っていません(特に、親とか、奥さん(またはご主人)など、身近な人ほどそうですよね)。

けれども、もし「合わせる(マッチング)+導く(リーディング)」を少し意識することができたら、周囲との関わりは変わってくるんじゃないかなぁと思います。まずは、「合わせる」ところから始めてみるのはどうでしょうか。

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