「営む」ということ―すべての働くみなさんへ
昨日、歌手のTさんと打ち合わせをしました。
4月に予定されていたイベントが中止になったそうです。
ある大学では、卒業式と入学式を取りやめたそうです。
理由は、「学生の中に東北の方がいることへの配慮」だそうです。
母親の知人が「プチトマトいらない?」と尋ねてきてきました。
「どうしたの?」と母親が聞くと、
「お客さんが全部キャンセルになっちゃって……」と言いました。
私が住む街、妙高高原は観光の町。多くの方が観光に関わっています。
観光の仕事をされている方が、兄弟からかかってきた電話の話をしてくれました。
「スキー場はリフト動いているの?」
「動いているよ」
「バッカじゃないの。こんなときに。」
スキー場はガラガラ。節電のため止めているリフトはあるものの
それでも、リフトを動かしているそうです。
先日、Twitterを見ていたら、被災者の方のTweetが目に入りました。
「被災者でないかたは普段の生活をしてほしい。
私たちは確かにツライ思いをしているけれど
だからといって、人をうらやんだりはしない。バカにするな!」
(一字一句が同じではありません。)
さまざまなイベントや行事が中止になっています。
観光や娯楽、飲食は完全に自粛ムードです。
もちろん、イベントの中止や自粛は
被災者の方を思っているからこそ行われること。
それは、すべて正しい。
けれども、その思いやりは、被災者のみなさんにとっては
「被災者のみなさんがかわいそう……」
一方的に、「あっち」と「こっち」を分けるように
上から目線で見下しているような意味にも、感じられるのかもしれません。
今、必要なことは何かと考えます。
そして、「バカにするな!」という被災者の方のTweetを見てハッとします。
本来大切なのは、イベントをやるか、やらないかではなく
「被災者の方が、それを望んでいるのか」
がポイントなのかもしれません。
たとえば……
イベントで歌えなくなった歌手のTさんは
これから先、毎年春を切ない思い出とともに過ごすことになるかもしれません。
ひょっとしたら、イベントを楽しみにしていた来場者のみなさんも、そうかもしれません。
卒業式、入学式が中止になった大学生は
「ボクは、卒業していないんだ」
「ワタシのとき、入学式がなかったの」
と、春が来るたびに思い出すかもしれません。
本当にそうなるのか、当事者ではない私にはわかりませんが
それでも、毎年、この時期、何かしらの思いを抱くのでしょう。
それを、被災者のみなさんは望んでいるのでしょうか。
もし、歌手のTさんのイベントが開催され、ライブの模様が中継されたとしたら
被災者の方も、さくら満開の会場で歌うTさんの姿を見て
元気になるかもしれません。
もし、今の大変な中でも卒業式、入学式を行い
未来を担う若い世代の人生の門出を一緒に祝うことができたら
被災者のみなさんも「よし、私たちもがんばろう!」という思いを抱くかもしれません。
そして何より
「私たちのせいで、さまざまな喜び、出会いを奪わなくて本当によかった」
と、安心されるような気がします。
私は直接的な被災者ではないので、本当のところはわかりません。
どうするべきなのか、正解もわかりません。
観光やイベント関係の仕事をされているみなさん。
飲食業のみなさん。
経営者のみなさん。
教育関係のみなさん。
すべての働いているみなさん。
きっと、今、イベントや仕事を自粛するべきか、続けるべきか悩まれていると思います。
ひょっとしたら、何らかの意思を持って営業を継続している方の中には
「なんでこんなときに、非常識な!」
と、さまざまなバッシング、批判を浴びている方もいらっしゃるかもしれません。
「経営」という文字には
事業を行うという意味のほかに
つとめ、はげむことという意味があるそうです。
みなさん、どうか、営みを止めないでください。
被災者のみなさんがいつでも帰ってこれるように
「私たちのせいで……」という新たな負担をかけないように
どうか、営み続けてください。
こういう時期ですから、営業を継続しても利益は上がらないかもしれません。
イベントの参加者も少ないかもしれません。
バッシングされて、矢面に立つ日もあるかもしれません。
もちろん、周囲の配慮は必要です。
電気を最小限にして、節電する必要があるかもしれません。
それでも、ローソクをつけながらでも営み続けてほしい。
なぜなら、それが日常だから。
日常を継続してください。
そして、イベントや、飲食やさまざまな営みによって
周りを明るくし、喜ばすことができたら
得た利益の一部を義捐金として、被災地の役に立ててください。
観光やイベント関係の仕事をされているみなさん、がんばれ!
飲食業のみなさん、がんばれ!
経営者のみなさん、がんばれ!
教育関係のみなさん、がんばれ!
すべての働いているみなさん、がんばれ!
今、必要なのは、「営み続けること」です。
今日は、新潟市で心理学のセミナーの講師を務めます。
以前、トレーニングを受講してくださった保健師さんの話によれば
交代で、現地に泊まり込みで支援に行き始めているとのこと。
今までは、興奮や緊張からがんばっていた被災者のみなさんも
心のケアを要する場面が増えてくるとのこと。
(このお話は、また次の機会にでも。)
資格云々よりも
現場で実践できる技術を身につけていただくために
私は、私の仕事をしようと思っています。
今朝、コンビニに寄ったら
今まで空っぽだったパンの棚の半分が、おいしそうなパンで埋め尽くされていました。
24時間営業のガソリンスタンドの中には、まだ閉まっている店もありましたが
開いていたスタンドに立ち寄っT
「何リッターまで入れられますか?」と聞いたら
「満タン大丈夫ですよ」と教えてくれました。
今日も、朝がきました。
大丈夫。日常は回り始めています。