次世代スーパーコンピューターの予算削減は悪か―制約の中から生まれる本当の知恵
最近、事業仕分けで次世代スーパーコンピュータの予算削減が話題になっていますね。
そして、連日のように、
「日本は科学技術で成り立っているんだ!」
「この予算を削減されては、日本の科学技術は危ない!」
「こんなことでは、日本の技術者が育たない!」
と、メディアを使って大学の先生が叫んでいます。一見すると、確かにそのような一面もあるのかもしれません。
お金と技術、技術者の能力について、クルマ好きなら多くの人があこがれる日本を代表するスーパーカー、日産GT-Rを短期間で、限られたコストで開発した水野和敏さんは、神田昌典さんとの対談CDの中で次のようにおっしゃっています。
「金と時間と人の数は、やっぱり個人の能力を殺しますよ。だって、それはみんな知っていることですよ。僕はあえてここで言っているんだけど、そんなのは新しくも何でもなくて、科学の進歩って実は戦争のとき。戦争中ってみんなが兵隊に動員されて、鉄砲を作るのに予算を使っちゃうから、お金もない、人もない、時間もない。実はこのときに一番技術って進化しているんですよね。なんでそんな当たり前のことを、みんな素直に見ようとしないのか。」
もちろん、必要最低限の予算は必要だと思います。また、あるものを削られるのですから、抵抗したくなる気持ちもよく分かります。ただし、
「予算が削減される」=「日本の科学技術はダメになる」
という情報が本当なのかは、一考する必要がありそうです。人間の能力は無限です。制約がある中で新たなものを生み出す力、知恵が生まれるのではないかと信じています。 無から有を生み出す力はこうして生み出されるのだと。
例えば、わたし自身がそうです。お金が限られているからこそ、頭を使い、いろんな知恵を考え出します。ギリギリのラインで考え、その中から得たものはとても血肉になるのです。もし、お金が潤沢にあったとしたら、確かにいろんなことができると思いますが、お金にモノを言わせて、あまり頭を使わないでしょう。そして、多くのお金がムダになっていったはずです。
「予算が削減される」=「日本の科学技術はダメになる」と、メディアを使って一方的に責め合いたくなる気持ちもわかります。ですが、顔を会わせて「どうすれば日本の技術者が頭を使うようになるのか?」という基本的なところを考えてみると、意外とチャンスとも言えるのかもしれません。
水野さんの意見は、実際にやってきたからこそ言える本質をついていると思います。