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【書評】集合知イン・アクション

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献本いただきました本の書評をさせていただきます。ITmediaさん、ソフトバンククリエイティブさん、いつもありがとうございます。

今回読んだ本は

集合知イン・アクション
集合知イン・アクション

この本の帯には、このように書かれています。

「ウェブ業界に関わるJavaエンジニアならこの本を必ず手に入れるべきだ」

それを証明するかのように、この本には集合知に関する、Javaの実装事例が多く紹介され、技術的な側面で実践的な参考になるでしょう。

一方、私がこの本を読んで技術的な側面に加えて価値があるなと思ったのは、この本の前段に書かれている内容です。

たとえば、

ユーザーを見つめよ。さらば成功せん。集合知は一人ひとりから始まれり。

とか、

覚えておいてほしい、全ユーザーの行動を活用して、いまのユーザーのために、そして将来のユーザーのためにアプリケーションを改善し、口コミの力を活用するアプリケーションがマーケットを支配するのだと。

この本に書かれている「集合知」の概念は、データの側面から、いかにユーザーが望んでいるものを見出し、「あなたは望んでいるものはこれじゃないですか?」とシステムが提案できるか?(Amazonの「この商品をチェックした人はこんな商品をチェックしています」のような)。技術的な側面に加えて、「いかにシステム的に口コミを起こすか?」という目的に踏み込んでいるところが気に入りました。

いくつかキーワードについて触れておきたいと思います。

集合知とは?

集団のなかの個々人が強調、競争するときに、それまでは存在しなかった知や行動が突然生まれる。これが集合地として知られる現象だ。少数の個人による行動や影響は、ゆっくりとコミュニティに広がっていき、やがて規範となる。

集合知の利点

・ユーザが固定化してくれる
・売り込む機会が増える
・購入を完了する可能性、興味をひく情報を見つける可能性が高まる
・検索エンジンのランキングが上がる

Webのマーケティングと言えばSEO対策などの情報がたくさんありますが、いくら上位に表示されたといっても、検索結果の上位何件か同士で価格は比較されて価格競争に負けてしまったり、いずれは検索結果が落ちてしまう日が来るでしょう。SEO対策ばかりに目を向けていると、ユーザーの視点よりもSEO対策が中心になりがち。けれども、集合知の利点にもあるように、集合知の結果、検索エンジンのランキングが上がるというのは、SEOのテクニック的に検索結果を上位に上げるというよりも、本当に求められている情報が上位になるということを意味するのではないかと思います。これが本来あるべき姿なのかなと思いました。

この本の目次は次の通りです。

第1部 集合知を収集する
・集合知とは
・ユーザーインタラクションを学習する
・タグから知識をとりだす
・コンテンツから知識をとりだす
・ブロゴスフィアを検索する
・インテリジェント・ウェブ・クローリング

第2部 集合知を導出する
・データマイニングとは
・テキストアナライザをつくる
・クラスタリングでパターンを見つける
・予測モデルをつくる

第3部 集合知を適用する
・インテリジェントサーチ
・レコメンデーションエンジンをつくる

「読者の経験と開発分野によらず、役に立つ例とサンプルコードを見つけることができるだろう」と本書には書かれていますが、実装事例が豊富な分、入門書ではないことは付け加えておきます。

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