【書評】全脳思考
神田昌典さんの新著、「全脳思考」を読みました。神田さんは経営コンサルタントとして有名な方です。
2008年9月に、この本の内容にもなっているアンケート調査に参加しました。アンケート参加者に、サイン入りの著書をプレゼントしていただけるとのこと。昨日届きましたので早速読んでみました。
神田さんの本の中には、表現方法などのテクニックが書かれた本もたくさんありますが、「顧客の感情に根付いたマーケティング」を表面的に真似されたものがずいぶんと流行りました。今もインターネット上にはそういうものがたくさん出回っていますが、キャッチーだけど中身がないのは、もういいかなという感じすらします。
今回の本は、小手先のテクニックではなく「いかに自分の頭から思考を生み出し、それを言葉に置き換えていくか?」を、実にシンプルに楽しくできるところに魅力を感じます。
表紙には、このように書かれています。
「結果と行動を生み出す一枚のチャート」
本を読みながら、「全脳思考」を使って実際に一枚のチャートを作り、自分の事業のコンセプトを書き出してみると…未来から現在を眺めつつ、ワクワク楽しみながら、とてもスムーズに(約30分程度で)、事業への思いやコンセプト、顧客へのメッセージを作り上げることができました。もちろん、細かな部分は調整しなければなりませんが、これを元にホームページも要修正です。
思考法という意味ではこれ一冊で十分だと思いますが、
全脳思考モデルは、ひとつの領域に関する知識をベースに組み立てた方法論ではなく――マーケティング、マネジメント、行動経済学、脳科学、神経言語プログラミング、結果思考、ストーリー構築といった――私が過去10年、ビジネス上の課題に取り組むために必要となったさまざまな知見を統合して、そのエッセンスを限りなくシンプルなチャートに収めたものだからだ。
とあるように、一冊にいろんな情報が入っているため、「この先をもう少し知りたい」と言う方は、さらにその先を研究してみるのもいいかもしれません。
◆◇◆
実は――Amazonでも評価が分かれているようですが――この本を読んだとき、「あれ?これは他の本にも書いてあったような…」と、正直感じました。
読み直してみると、
- 「今までの戦略フレー ムワーク(PDCA、 PPM分析、SWOT分析、バリューチェーン、MECEのような)も有用だけれど、それだけでは…」という対比として使うために必要だったこと。
- 一冊に多くの情報が入っているために、勉強熱心な方ほど、すでに知っている情報にも出くわすことがあること。
ということがわかりました。けれども、この本の最大の価値は、多くの(バラバラな)領域のエッセンスを一枚のチャートにシンプルに表現できることです。紙と鉛筆を使って、実際にやってみるとその価値がよくわかります。
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最後に、印象に残った一節を引用します。
現代の底流では、「情報社会」から「知識社会」への急速な転換が起こっている。
どちらも使い古された言葉であるから、「何を、今さら……」という気持ちはわかる。~中略~
実は、わかっているようでわからないのが「情報社会」と「知識社会」の違いである。多くの人が「情報社会」=「知識社会」であると混同している。ところが、この二つを切り離したとたん、現在の状況がすっきり見通せるようになる。
私の見解では、情報社会とは、情報を収集・整理することが付加価値となる社会。それに対して、知識社会とは、収集・整理された情報から生み出された新しい気づき・アイデアを実際に、行動に移すことが付加価値となる社会だ。
情報社会から知識社会へと移行し、新しい時代を迎える現在において、過去や現在の分析ではなく、未来からの視点で考え、新たな何かを生み出すことが大切なのではないかと思います。
コンサルタントや営業、企画などの方にオススメしたい一冊です。
最後に…
自分の力を信じ、自分で考えること。
神田さんのサインに書かれているメッセージが、この本で最も言いたいことなのかもしれません。
2009/6/23 追記:
こちらに追記しました。