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会社の贅肉落としにコミットします!:M&Aにおける 負の「のれん」の甘い誘惑

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会社の贅肉落としにコミットします!!:

http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1811/14/news120.html

RIZAP社が、事前の公表値を大幅に下方修正して、今期の営業損益が70億円の赤字になる見込みであることを発表した。

突然の大幅な下方修正予想発表

国際会計基準(IFRS)ではM&A価格が、対象の会社の純資産額よりも少ない時、
その差額は 負の「のれん」として、M&Aした側(買い取った側)の会社の利益として計上される。

Rizapでは、去年度に計上した利益の約60%が、この「負ののれん」にも上っていた。

そして、今回、この「負ののれん」を減損し、その減損相当額が今年度の営業損益を赤字に転落させるのだという。

IFRSにおける「負ののれん」とは:

<まず、「のれん」とは>

たとえばある会社を30億円でM&Aしたとして、そのM&A対象会社の帳簿上の純資産額が20億円だったとしよう。この場合、差額の10億円は、帳簿上の会社の価値以上のプレミアム、つまり「のれん代」としてM&Aした側の会社の 資産として計上される。IFRSでは、これは当該年度の営業損失して計上されることになる。

<そして、「負ののれん」とは>

もし、20億円の純資産を持つ会社を10億円でM&Aできたらどうなるだろうか。つまり、帳簿上の純資産価値よりも安く取得できた場合のことだ。

この場合、差額の10億円は逆プレミアム、つまり「負ののれん」としてM&Aした会社側のバランスシートに計上され、損益計算書上は当該年度の営業「利益」に計上されることになる。

今回の損失計上の理由は?

この 「負ののれん」 は、対象会社の純資産が減れば、減損=つまり損失として、計上しなければならない訳で、RIZAP社では、積極的なM&Aの継続実施と、その結果として積みあがっていた「負ののれん」を一挙に減損、つまり損失計上することになったために、今年度の営業損益が巨額の赤字に転落することになったわけだ。

「負ののれん」という、いわば会社の贅肉を思いきって削減して損失計上した、とポジティブに捉えるべきなのか。

いや、そうではなくて、贅肉を筋肉として利益計上してきた「からくり」が剥がれた、と冷静に判断すべきなのか。

瀬戸社長は記者会見で「見通しが甘かった」と述べている。

つまり、経営としては、いつかは損失計上しなければならない可能性ある「負ののれん」が積みあがっていることは、認識していたものの、敢えてげ厳しい減損テストを実施することは先延ばしにして、利益を温存してきた。いつか、大幅な損失計上をしなければならない潜在的なリスクは認識していたことを暗に述べている。

事業の構造改革が課題

今回の会社の収益構造の大幅な見直しと大きな損失の計上は、新任の代表取締役松本COOの進言によるものと推測される。

その松本取締役は、代表権を持ったまま、COO職を離れ、新設される「構造改革」担当の役員に就くと発表されている。

この新しい、体制での構造改革、つまり贅肉落としが成功するかどうかが、注目される。

値が付かないほど、暴落した同社の株価は、一旦値がつく状態にはなっている。

市場もこの、会社の構造改革の成否を見守ることになるのだろう。

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