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ロック世代の文系ITビジネスマンが社会と企業のITとDX(デジタルトランスフォーメーション)を易しく語ります。

コンビニエンス業界2トップのパートナリング戦略を観る。

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他企業との連携・連携を考える上で、対照的な取り組みがふたつのコンビニエンスチェーンから発表されているので、取り上げてみたい。

セブン&アイ、異業種とビッグデータ共有 ANA、ドコモなど参加

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1806/01/news126.html

セブン&アイHD、複数企業間のデータを活用するための研究会「セブン&アイ・データラボ」を発足

https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP481391_R00C18A6000000/

ーーーー以下引用ーーー

セブン&アイ・ホールディングスは6月1日、ANAホールディングス、NTTドコモなどと、ビッグデータを共有して活用する研究会「セブン&アイ・データラボ」を立ち上げると発表した。異業種の企業が保有している統計データから得た知見を相互に活用し、社会課題の解決を目指す。

参加企業は、ANAホールディングス、NTTドコモ、ディー・エヌ・エー(DeNA)、東京急行電鉄、東京電力エナジーパートナー、三井住友フィナンシャルグループ、三井物産など10社。セブン&アイは「企業間でのビッグデータの連携としては、過去最大級の取り組み」としている。

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⇒これは、異業種各社による相互のデータ連携とその連携したデータの活用による異業種間連携策だ。

これだけ多岐にわたる異業種で発生・把握されるリアルな消費者の購買データを連携、蓄積して、社会課題の解決を目指す、というのだから、今までになかった壮大な構想と言える。

また、戦略的観点からいえば、業界トップチェーンによる、データ活用を基軸とした同業他社振り落とし戦略であり、包囲網構築戦略ともいえるだろう。

但し、この発表では、どこのどんなデータをどう解析して、どんな問題解決に役立てるのか、という具体的な施策については、何も触れられていない。敢えて発表していないのかもしれない。が、それも含めてトップチェーンだけが採りえる第一人者の戦略と言えるかもしれない。

ドンキ流ファミマがメチャメチャ面白い。圧巻の品揃えで店内壮観!

http://biz-journal.jp/2018/06/post_23564.html

ーーーーーーーーーー以下引用ーーーーーーーーーー

ドン・キホーテの手法を取り入れたファミリーマートの展開が始まった。6月1日、「ファミリーマート立川南通り店」(東京都立川市)と「ファミリーマート大鳥神社前店」(東京都目黒区)がリニューアルオープン。同業他社やドラッグストアなどとの競争が激化するなか、売り場づくりに定評があるドンキのノウハウを生かすことで競争力を高める狙いだ。

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このドン・キホーテと提携したファミリーマートの店舗活性化策は、個別企業との提携による、単一目的施策だという点で、上記のセブン&アイの多企業を跨る連携策とは全く異質、全くの逆方向の施策と言える。

従来、コンビニエンスストアは、売れ筋商品に絞り込んだ商品政策と、欲しい時に欲しい数だけ店頭に展開する陳列方式で、顧客に「選び易すさ、買いやすさ」を訴求することで発展、成長して来た。

セブンイレブンがその先陣を切ってきたわけだ。

ところが、今回ファミリーマート/ドン・キホーテ提携店はまったくその逆を行こうとしている。高く積み上げられた在庫商品のなかから、自分の「買いたいものを探す喜び」を顧客に訴えて成長して来たのがドン・キホーテであり、今回の実験店は、まさにそのドン・キホーテ流を取り入れたものだからだ。

そして、ファミリーマートは今回このドン・キホーテスタイルを採用することで、自身のリアル店舗を活性化し、その活性化した店舗運営力を梃にセブンイレブンを追撃しようとしているのだろう。

これは、いわば単一目的達成のための特定パートナー(しかも同じ小売り業界のドン・キホーテ)との横連携、つまり連衡策だと言えるだろう。

店舗数でも単店あたりの日商でも追う立場にあるファミリーマートの採用するセブンイレブン追撃戦略なのであろう。

まとめ:トップチェーンによる異業種を巻き込んだ合従(がっしょう)策か、追撃チェーンによる業界内個別の連衡(れんこう)策か?

まとめると、上記のふたつの発表は、

1)トップチェーンの採用する競合包囲網構築のための異業種との合従(がっしょう)策

    VS

2)追撃チェーンの採るリアル店舗の活性化という特定目的達成のための同業界パートナーとの横連携=連衡(れんこう))策

との対比とみることができる。

どちらの戦略もそれぞれのチェーンの置かれた立場と達成したい目的に沿った、それぞれの理にかなったアプローチと思える。

この異なる二つのパートナリング戦略のどちらが、消費者の心に刺さるのだろうか?

戦略対戦略の対立の優劣を決めるのは消費者/ユーザーであることは間違いない。

この両チェーンの戦略の展開を注意して見守りたい。

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