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人は見た目がすべて?:コンビニPOSの客層キーから考える

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ここ数日の内に、コンビニエンスストアのPOSシステムの、特に「客層キー」に関わる興味深いニュースが相次いでいるので、取り上げてみたい。

1)ファミマ新型POSレジ、客層ボタンを廃止した理由

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29537530Y8A410C1000000/

2)セブン新型POSレジ解剖伝統のボタンを残した理由 https://r.nikkei.com/article/DGXMZO29530060Y8A410C1000000?s=2"

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コンビニエンスストア店頭のPOS(POSレジとも呼びますね)の客層キーというのをご存知だろうか?

チェーンによって若干分類は異なるものの、 お客が買物をする際に、ストアスタッフ(店員さん)が、そのお客の年代と性別を判定して、「20代男性」、「30代女性」などと設定されてある分類キーを押す。

そして、その客層別の販売データを集めて、販売分析、商品開発、出店戦略に反映しようというしくみなのだ。

この「客層キー」によって、店頭での単品別の客層別販売状況を把握/分析に活用するという訳だ。

例えば 

・全店を通じて梅おにぎりを最も多く買うのは、50代男性で、レタスサンドを最も多く買うのは30代女性

・A店の午後7時台に最も多く来店するのは、10代男性だが、B店では、40代女性

など。

1980年代にセブンイレブンが導入し、他チェーンも追随装備してきた、いわば、日本型コンビニエンスチェーンのPOS(Point of Sales)=販売時点分析システムの象徴のようなしくみである。

その客層キーのしくみが、いま大きく変わろうとしているのだ。

1)ファミリーマートは、この客層キーを廃止する。

 その理由は,

 ①年齢、性別などのデータはポイントカード、会員カードなどの別情報源で捉えられる。

 ②加えて、この客層キーを廃止すれば、売上登録の際のストアスタッフの判断と入力というオペレーションを省力化できる、というものだろう。

2)一方、セブンイレブンはこの「客層キー」を継続する方針だ。

・セブンイレブンは、現在導入中の新システムでも、この客層キーと店員判断による入力を継続する。

・記事では、その理由は明確には触れられていないが、お客の年代性別情報の誤登録はモニタリング等の技法によって一定の発生率に抑えられる、としている。

データの正確性と店頭オペレーションの省力化/効率化を追求するのか、はたまた人手をかけてでもストアスタッフの判断に依存したデータを収集するのか、のアプローチの違いが鮮明だ。

そもそも、この「客層キー」の目的・狙いはなんだろうか。

この点を、このシステムを企画・導入した初代のセブンイレブンシステム部長に質問したことがある。

当時から、セブンイレブンは、ストアスタッフの判断による、客の「見た目」を重視し販売分析を目指したのだという。

その根拠は?と問うと:

・ひとは、自分が見られたいように装う。実年齢よりも若く見られたい人はそのように振る舞うし、性別についても物理的性別と社会的性別の異なる人もいる。 

・また、ひとは、そのひとの「見た目」に応じた消費行動を取るものだ。つまり実年齢や、肉体的性別よりも、そのひとがどう見えるかによって、消費行動が決定されるハズ。例えば、肉体的には男性だったとしても、女性の服装をしている人は、化粧品を含めて、女性の購買行動をとるはずだ。(そのひとの物理的な性別に関係なく)。

従って、その人の実年齢や肉体的な性別ではなく、お客の「見た目」を捉えて分析に使いたいと考えた

というものだった。

この仮説に立てば、ポイントカード等に登録されている実年齢データに頼るよりも、ストアスタッフが店頭での接客の中で感じたそのお客の「見た目」による年代/性別データの方が、お客の消費行動を捉えるにはより適切、ということになる。

店頭でオペレーションするスタッフが、この客層キーの重要性、意味を十分理解して、丁寧にこの「見た目」判断入力を行い続けることが、この仮説が成立する条件にはなるが。。

一方、AIや画像認識技術の進歩してきた2018年現在においては、店内に設置したカメラで客層を把握してはどうか、というアプローチも有り得る。しかしながら、このアプローチには、個人情報保護上の懸念やお客の側の心理的抵抗も予想されて、まだ実現に至るチエーンは出てきていないのが現状だ。

技術が大きく進歩し、労働力不足など、店舗/店員側の状況も大きく変化しつつある中での、この客層分析を巡るアプローチの違い、どちらが正鵠を射たものになるのかを興味深く見守りたい。

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