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AGIは人類が生み出す最後の汎用技術なのか?

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拙著『情報システム進化論』で引用・参照した文献のなかで、わたしにとって大切な本をこのブログで順次紹介していこう。

そんなことをぼんやり考えていた矢先に、日本経済新聞で「超知能 迫る大転換」と題する連載記事が6月2日から6月7日にかけて5回掲載された。第1回は1面トップ記事で「人類が生む最後の大発明」という大きな見出しがつけられている。

人類はこれまでに24の汎用技術(General Purpose Technology : GPT)を生み出してきたが、汎用人工知能(AGI)はその25番目となり、26番目以降は人類ではなくAGIがつくりだすかもしれないという内容である。そして、紀元前8000年前から今日にいたるまでに開発された24の汎用技術がイラスト入りのグラフで紹介されている。

汎用技術(GPT)とは、長期にわたって社会に広く浸透し経済社会の構造を根本から変化させる、人類にとってきわめて大きな影響力をもつ技術を指す。日本経済新聞が引用した24の汎用技術は、リチャード・リプセイらの2005年の著書『Economic Transformations: General Purpose Technologies and Long Term Economic Growth』で紹介されている(総務省『情報通信白書』平成30年度版に日本語訳がある)。

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd121120.html

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エンタープライズ・コンピューティング分野を取材する記者だった若い頃、わたしは記者発表で「この製品・技術は社会を変える、ビジネスを変える」と何度も聞かされた。しかし、その多くは何年も経たないうちに消えていった。本当に社会を変える技術は存在するのか、あるとすればどんな技術なのかという疑問は深まるばかりだった。この本で汎用技術(GPT)という概念を知ったとき、「社会を変える技術はたしかに存在する、でも人類史上わずか24しかない!」と驚き、ずっと抱いてきた疑問が解消したような気分になった。そして、これを出発点として汎用技術について自分なりにさらに考えてみたくなり、これまでの考察を『情報システム進化論』第1章に執筆した。 

 日本経済新聞の記事にあるように、25番目がAGIになるのか、さらに26番目以降は人類ではなくAGIが生み出すのかはまだわからない。汎用技術かどうかの判断は長期にわたってみる必要があるからだ。

 人類最初の汎用技術である「植物の栽培」と2番目の「動物の家畜化」によって農業革命、11番目の「蒸気機関」で産業革命、20番目の「コンピュータ」と22番目の「インターネット」で情報革命がそれぞれ進行した。もし、将来AGI25番目の汎用技術になったとしても人間の働きがいが奪われる未来になってほしくないと思うのはわたしだけだろうか。

*汎用技術(GPT)について10分程度のレクチャー動画を公開しているのでご参照いただければ幸いです。

https://x-leaders.net/learn/detail.html?id=nv3-u5bf4u

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