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スポーツとソーシャルメディアを絡めた社会貢献事例 「マラリア撲滅キャンペーン」

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前回のエントリ 「スポーツ選手のソーシャルメディア活用はドノヴァン選手から学べ!」の調査をしていると、ドノヴァン選手がUnited Against Malaria(:以下、UAM) という団体に協力していることがわかりました。UAMのページを見てみるとFacebook、Twitterなどのロゴがあったことから、UAMについて調べてみることにしました。

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*UAMは、蚊を媒体とする伝染病マラリアを撲滅させるために活動している非営利団体。2009年にアメリカ・ワシントンDCで発足。写真はUAM・HPのトップページ。


◆サッカーW杯とマラリア撲滅

調べてみると、実はこのUAM、今年開催されるW杯サッカー・南アフリカ大会に合わせて、ソーシャルメディアを活用したマラリア撲滅キャンペーンを行っていたのです。
(W杯はサッカーの大会の最高峰で、テレビの視聴者数ではオリンピックを凌ぐ、世界最大のスポーツイベントである。一説ではW杯期間中の延べ視聴者数は330億人にもなる!)

マラリアにおける現状は、
・マラリアが原因で毎年100万人が亡くなっている(30秒に1人、サッカー1試合:90分では180人が亡くなっている)、内90万人はアフリカで発症している
・アフリカ諸国では、マラリア対策の為に毎年120億円もの費用が余分に発生しており、貧しい国々の貧困の悪循環を加速させている

この現状を打破すべく、HP上でUAMの目標は以下のことだと書かれています。

「UAMの目標は、2015年までにマラリアによる死亡者をほぼゼロまで減らすことです。
そのためのファーストステップとして、2010年・南アフリカW杯を触媒とし、サッカーファンから蚊帳(モスキートネット)や防虫剤などの物的サポートを得るために関係を構築したいのです。」

今回のキャンペーンでは、ソーシャルメディアを活用してマラリア撲滅に賛同してもらえるようにユーザーを喚起することが目的のようです。
具体的にはTwitter、Facebook、Youtube、Flickrを使ってマラリアの認知を促進させ、
ハブであるHPに誘導
させる。そして心打たれたサッカーファンを中心に、実際にマラリア撲滅のためのアクション(募金、署名)を起こさせることが、今回の肝のようです。


◆リアルとインターネットの融合

UAMのHPにはユーザーが簡単に参加出来る2つのイベントが提示されています。

 ・SleepOutイベント(4/24日 マラリアの日開催。アメリカ各地の大学や公園、協会の庭などで蚊帳を使って野宿することで、人々に訴えかける)


 ・マラリア撲滅へ協力意思の署名
 →HP上で署名すると、UAMのトップページの写真のGoal数が増えていく仕組み。(4月15日時点では、目標50,000Goalなのに対して、19,453Goal。)

 

インターネット(ソーシャルメディア)でマラリアに関する情報発信をし、それを受け取ったユーザーにリアル(イベント)でマラリアに対する意識を高めさせ、募金など実際にアクションさせよう設計されているのが見て取れます。

また、このUAMにはサッカースター(ドノヴァン選手、アメリカ代表チーム、FCバルセロナ、アイルランド代表チーム)、女優(アシュレイ・ジャッド、モリー・シムズ)など生活者に影響力のある有名人が協力しているので、ファンへの訴求力はかなり大きいかと思います。

Our_team_united_against_malaria_12

では次にどのようにソーシャルメディアを使っているのでしょう。


◆各ソーシャルメディアの活用方法の考察


-Twitter
Twitterでは @UAMalaria(http://twitter.com/UAMalaria) というアカウントを取得しており、マラリアに関する情報(既述のイベントやマラリア撲滅に対して意識の高いユーザーとの会話がメイン)をツイートしています。イベント情報などは、FacebookやHPと連動しており、やはりそちらに誘導する仕組みのようです。

Unitedagainstmalaria_uamalaria_on_
フォロー:1,394
フォロワー:1,075
ツイート数:258
(2010年4月15日時点)


-Facebook
Facebookでは各イベントの詳細(下記)を提示し、他にもFacebookアプリにてゲームを展開しています。ファン数は1,647人とそれほど多くありませんが、マスコミ関係者からコメントがあるなど、参加しているユーザーの意識は高そうです。

United_against_malaria_facebook__3

Buzztour 2010

米サッカーリーグ MLSの試合会場へトラックを走らせて、会場にいる大勢のファンたちにマラリアについて訴え、写真を取り、署名や寄付を集める。

World Cup Soccer Challenge: Kick Malaria

Facebook内で、友人に「Kick Malaria」というボール(情報)をパスをする。
Facebook内の友人5人にパスをつなげるとシュートができ、国ごとにゴール数を競うというシンプルアプリ。ちなみに、実際のW杯の組み合わせ別に国が表示されている。
「Malaria」に関する情報をボールに見立てて、それをパスすることでバイラルさせる設計になっている。 


-Youtube

サッカー選手が出演している動画を配信しています。ドノヴァン選手がリフティングしたり、子どもが蚊帳の中で安心して床に就く映像が配信されています。
いくつかシリーズが有りますが、1分程度の動画はクオリティが非常に高く、マラリアについて考えさせられる内容です。


また既述のSleepOutイベント参加呼びかけビデオも用意されています。


-Flickr

マラリアに関する会見の模様などが公開されていますが、ほとんど活用されていません。
Facebook内の写真ページには多数の写真が公開されており、中にはなんとイングランドの貴公子ベッカムと子どもの写真が(!)や、蚊から身を守るネットを渡されている子どもたちの写真が見られます。

Fan_photos_from_united_against_mal

このようにUAMでは、世界一のイベントであるサッカーW杯が持つ恐るべき求心力と、ソーシャルメディアの持つバイラルの仕組みを活かそうと試みています。
(まだ大きな成功は収めていないようですが・・・)


◆終わりに

米・PEPSI社は、恒例のスーパーボウルでの巨大なプロモーションをやめて、ソーシャルメディアをフル活用した社会貢献プロジェクトを実施していましたね。(詳細は斉藤の記事に譲ります。)
社会貢献においてもスポーツを絡めることで、人々の意識を”本当に伝えたいこと”に向かせることができ、大きなパワーを生むと思います。

また”心打たせる”時に欠かせないのが、単発な広告だけではなくソーシャルメディアを活用することが重要であり、あくまでも対話が大事だと考えています。

これはスポーツや社会貢献だけでなく、企業活動においても同じような流れになってきていますよね。

人々の生活に密着している「スポーツ」と、
今後コミュニケーションには欠かせない「ソーシャルメディア」。

この二つはどうやら、切っても切り離せない関係になりつつありそうです。
このキャンペーンの動向は随時チェックして行きたいと思います。


※予想以上に前回記事の反響がありました。
 コメントやメールを下さった皆様、ありがとうございます。
 今後もソーシャルメディアの観点から僕のできることを考えていきたいです。

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