【スーパーボウル 2012】企業はソーシャルメディアを通じてCMの話題をいかに広めようとしているのか? 〜コカ・コーラとペプシコーラの戦略〜
スポーツは、恐るべき影響力があるコンテンツだと思います。
そしてスポーツイベントは、自社ブランドをソーシャルメディア上でバイラルさせるのに非常に相性の良い絶好の機会であるとも思います。
今回はスポーツ選手でもスポーツチームでもなく、今月5日に開催される米・スーパーボウルにおける企業プロモーションを取り上げてみたいと思います。
■30秒間のCM出稿料はなんと平均350万ドル!!
米アメリカン・フットボールの王座決定戦であるスーパーボウルは、テレビ視聴者数はなんと全世界で1億人。
このビッグイベントですが、今年は世界一高いと言われるスーパーボウルのテレビCM枠が過去最高の売り上げを記録して完売したというのです。
30秒のCM枠の2012年度の平均販売額は350万ドル(現在のレートで約2億7000万円!)で、昨年の平均販売額の300万ドルを大幅に上回ったのです。結果、2012年度のスーパーボウル中継の総広告費は、2億5000万ドルを優に超えることになったのです。
【写真】スーパーボウル公式HPより
毎年、スーパーボウルにおける企業のCMプロモーションは、インパクトがあって心に残る、素晴らしいコンテンツが多く、これを楽しみにしているファンもいるでしょう。
今年は特に長編CMが多く、ストーリー性のある良質なコンテンツを、ファンにソーシャルメディア上のストリームに乗せてもらうことを
より意識しているのが見て取れます。
そして、多くのCMでは最後に「#」(Twitterのハッシュタグ)が掲載されています。
しかし、今回のスーパーボウルにおけるCM合戦においては、
視聴者を「TVCM」→「ソーシャルメディア」へ誘導し、長くエンゲージする工夫として、
CM自体のインパクト勝負ではなく、コミュニケーション/モチベーション設計を強く意識しているキャンペーンを企画した企業があります。
■コカ・コーラ VS ペプシコーラの覇権争い
なんといっても今回のスーパーボウルでのCM合戦では、コカ・コーラとペプシコーラの両社のキャンペーンが目玉です。どちらも、TVCMをきっかけに、自社ブランドを含むコンテンツがソーシャルメディア上をバイラルするようなキャンペーンを企画しているのです。
コカ・コーラ社は、自社調査から、
スーパーボウルをテレビで観戦する視聴者のうち60%は、スマートフォンやタブレット端末など、TVとはまた別の端末画面も見ながら観戦するという予想をしています。
スポーツ好きな方は経験があるかもしれませんが、昨年の女子サッカーのワールドカップやラグビーワールドカップでも見られたように、TVを見ながら誰かとスポーツにおける何かをソーシャルメディア上で共感し合うということがしきりに行われているのです。
生活者は企業広告に対して様々な反応を示します。
そして良くも悪くも共感した広告に対しては、即座に、TwitterやFacebookなどでシェアします。
視聴者がTwitterやFacebookなどのコミュニケーションが行われるソーシャルメディア上で、いかにCMの話題を語ってもらえるかどうか?を重要視しているのが、この炭酸飲料メーカー2社なのです。
■コカ・コーラ社のキャンペーン ”The Coca-Cola Polar Bowl Party”
コカ・コーラ社は、スーパーボウルでまるでディズニーのようなクオリティの高いアニメーションを用いた広告キャンペーンを企画していると発表しています。
本当の生き物のように動くポーラーベアーを効果的に活用したキャンペーンで、かなり手の込んだ企画になっているのです。
【動画】コカ・コーラ公式YouTubeチャンネル CATCH: starring NE_Bear
まずCMやコカ・コーラFacebookページやオフィシャルサイトから「cokepolarbowl」
に誘導しています。
下の画像がcokepolarbowlページ(現時点ではまだPlayできません。)で、スーパーボウルのゲーム中、もしくは中断中にポーラーベアーサイトを見ながら、リアルタイムに”遊ぶ”ことができます。
チアリーディングのダンスをポーラーベアーから教わることや、得点が入ったりスーパープレーが飛び出した時には
ポーラーベアがジャンプをするなどのアクションが発生するようです。
また、それだけではなく、ゲーム中には、ファンはTwitterやFacebookを通じて、コメントや質問ができるようになっているようで、コミュニケーションを行うことでコカ・コーラブランドがソーシャルメディア上を駆け巡るような設計を行っているのです。
もちろんTwitter、Facebook、YouTube上にこのキャンペーンに関連する写真や動画をUPしていくことも推奨されています。
コカ・コーラ社の予想している通り、視聴者のタブレット端末や、スマートフォン、パソコン上で、cokepolarbowlにアクセスしてもらい、ソーシャルメディアでのクチコミのさらなるウネリを期待しているのです。Twitterでは、ハッシュタグ「#GameDayPolarBears」も用意されており、
「最もシンプル、自然な方法で生活者と対話したいと考えたのです。生活者には普段どおりのことだけしてもらえばいい」
とコカ・コーラ社のピオ・シュンカー氏は語っているということです。(参照:ロイター通信「Super Bowl advertisers seek buzz on social media」)
■ペプシコーラ社のキャンペーン "King's Court”
対してペプシコーラ社のプロモーションを見てみましょう。
こちらは、英国発の超人気音楽オーディション番組の「X FACTOR」で勝者となった女性シンガーのMelanie Amaroが、エルトン・ジョンが演じる王様に「RESPECT」という曲目を歌うというもの。ただし、ペプシが考えているのは、X FACTORやAmaroのインパクトだけではないのです。
実は、音楽をインターフェースに、ソーシャルメディアのストリームにファンアクションを誘発させるような巧妙な仕組みを考えています。
音楽系アプリの「Shazam」を活用した企画で、スーパーボウルのペプシ社のCMが流れている最中にShazamを起動させ、音を読み取ることで、彼女の動画が無料でダウンロード出来るような仕組みなのです。
※「Shazam」とは、iPhone、Androidの人気の音楽データベースアプリで、アプリを立ち上げて音源にデバイスをかざすと、その音源がなんという曲目なのか教えてくれる優れものです。
この企画のポイントは、音楽をトリガーにソーシャルメディア上へバイラルさせるアクションの容易性が挙げられると思います。
ファンがするべきことは、ただ「Shazam」を起動し、音楽を読み取ることだけです。
それだけで無料のパフォーマンス動画をプレゼントでき、ShazamからTwitterやFacebookなど各ソーシャルメディアにシェアしてもらうところまで、誘導できるのです。
このようにペプシ社は、TVCM→Shazam→ソーシャルメディアという誘導導線/モチベーション設計を綿密に行うことで、違和感なく自社ブランドをソーシャルメディア上に広げられるような工夫をしたのです。
スーパーボウルを通じて、リアルタイムで試合観戦をしている視聴者に対してステキな体験を提供することは、TVとプラットフォーム(今回の場合はShazam)を融合させた取り組みの今後の可能性を示唆するものとなり、ますますこのような事例を増やすでしょう。試合終了後にも、継続的に繋がっていられるようなコミュニケーション設計が、これがこの企画の素晴らしいポイントだと思います。
■TVCMは発信、ソーシャルメディアで拡散してもらう
大事なポイントは、ソーシャルメディアを最大限に活用し、大きなTVCMのインパクトをさらに加速化させるのか?だと思います。また、生活者への貢献をきちんと見つめ直し、コミュニケーション戦略として、いかにソーシャルメディア上でCMや企業メッセージを語ってもらうか?を意識することです。
スーパーボウルは、単に世界一広告費の高いスポーツイベントということだけでなく、
今やよりソーシャルなコンテンツへと昇華しているように感じています。
企業はこのビッグゲームに、ブランドへの大きな影響力を期待していますし、確かに生活者にブランドメッセージは届けられていることでしょう。
今回の各社の取り組みは、今後のソーシャルメディアプロモーションの基準となる取り組みになるかと思いますし、ファンの心の内に気付くためための、意味のある投資になるのではないでしょうか。
■おまけ
今回個人的に一番インパクトのあったのが、シボレー社のこのCMです。
なんと車が空を飛んじゃいます。
ソーシャルメディア×スポーツをテーマにした講演を承っております。 どんな小さなことでもお気軽にご連絡頂ければと思います。
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