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通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

自分がカーキ警察である自覚に目覚めるの巻

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ひとつ前のエントリーで「○○警察は今日も各地を巡回中」というのを書いたのですが、ふと気が付きました。私はカーキ警察かもしれません。というか、おそらく間違いないです。でもカーキ警察って?

日本語において色の認識と呼称にはいろいろありますが

気が付いたのはTogetterにあった「着物警察や弓道警察を冷笑しておいてなんだが俺はカーキ警察かもしれん「知らなかった...」「誤用が定着している」」というエントリー。いや、これ、私も本当に思っています。発想は簡単で、そもそも「カーキ(kahki)とは何か」というところです。そもそもはヒンディー語の「土埃」で、いわゆる黄土色。黄色と茶色の混ざったような色です。一番わかりやすいと思われるのが「チノパン」で一番多い色かもしれません。

それが何年も前から何故か緑系の色の呼称にまで拡張され、何故か世の中的に「明らかに黄緑色」と言えるところまでカーキという名称で多くの衣類が世に出ているし、何故かそういう解釈になってしまっています。

何故?
誰が言い出したの?
謎です。

カーキ色との出会いと思い

自分の歴史をさかのぼると、かつて1990年代初頭に「スーツが制服である」という不文律があった勤務先でチノパンとブレザーで過ごしていて、一緒に仕事していた他の部門の人に仕事が一区切りついた時点で「ご挨拶が遅くなりました。お世話になっております。広告代理店の方ですよね」と名刺を出さたけれど社員証を見せて仰け反らせたくらい昔から「ベージュ(というかカーキ色)のチノパン」をずっと愛用してきました。

そしてここ10年くらいは現場で地べたに座り込むのが普通だった仕事の関係もあっていわゆる「カーゴパンツ(ただしデザインものじゃなくアメ横の中田商店で買い続けているTru-Specというブランドのほぼ「ミリタリー用」のもの)」にコンバットブーツといういでたちがほとんどなのですが、これらも「カーキ色(もしくはコヨーテ色;後述)」だったりします。

自分自身のカーキ色歴は思い起こせば本当に長いみたいです。
と言いつつ別にこだわるつもりはあまりないですが、それでも一応思うところはあります。
あくまでも個人的な意見ですが。

実は今はガチのミリタリー系の衣料で単色で使われることは少ないカーキ色

1950年代くらいまではいわゆるチノパンを含め本来の「カーキ色=いわゆる黄土色系の色」の被服が各国で使われていましたが、実は昨今は法的権力執行機関においては「作業する際の被服の色」として使われているのをあまり見ることはありません。 例えば自衛隊の「迷彩服」も含め世界中の軍隊や一部の国の警察部隊などでは活動する国や地域あるいは場に適している(と考えらえる)迷彩模様が多く、そのほか特殊部隊や警察などの法権力執行機関では黒や濃紺などの単色が用いられるケースもあります。

因みに特殊部隊が黒系の色の被服で並んでいると怖いのですが、単純に黒や紺の色が役に立つのは見た目の威圧感と暗視ゴーグルを使わない人を暗闇で相手にするときだけで、例えば暗闇であっても暗視ゴーグル使うと赤外線対策していない場合には着てる人の体温ではっきり見えてしまうので、だからこそ色に関わらず本物の生地と被服は高んだぞといったミリオタ好きなネタもありますが、それはまた別の話。

それはさておき、本来のカーキとはあくまでも(特にインド亜大陸で多く見られるような)黄色と茶色が混ざった土埃の色です。
その一方で緑に振った色は「オリーブドラブ」と呼ばれる「オリーブ色が茶色に振れた色」です。これは例えばベトナム戦争のころまでの米軍からの放出品とかでよく見た色ですね... ってあまり響かない説明ですよね。すいません。

ただ現実にはオリーブドラブからオリーブグリーンに至る部分のほうがカーキ色として理解されている事があるようで、実際に各方面で見るアパレル系の分類でもそうなってしまっていることが本当に多いです。

この現状を見て「それはカーキじゃなーい!」と頭に血が上る状況を改めて考えると、もうこれは「自分はカーキ警察だ」と認識せざるを得ないです。
はい。ここは素直に認めます。私は「カーキ警察」です。

たとえば日本語において今の基準で考えると伝統的に呼称が揺れているケースはあるのですが

目に青葉 山ほととぎす 初鰹

江戸時代に山口素堂師が詠んだ有名な句ですが、ここに既に有名な色の呼称の話があります。
青葉は今の色の表記と呼称では青くないんです。緑なんです。
ただし伝統的に日本語として青を今でいう緑の表現として使ってきてる歴史があり、それがあるからこそこの句は成立しているわけです。

その流れでいうと青信号も青くない。緑です。
青々とした新緑の山々の緑の葉っぱとか書くと国語の先生が困ります。
伝統的に青と緑が言語表現上混ざっているのが日本語の特徴の一つですが、ただ実際の色としては別だと頭の中では認識していて、更に「あお」という言葉の表記も使う漢字も含めいくつもあることは理解していてたりします。でもカーキの件では「本来別の名前で呼んでいるものがなぜ混同されるようになるのか」というところが気になって仕方ありません。

前述の「あお」に関して言うと、日本語の成り立ちにまでさかのぼる1000年をはるかに超える表現の分化の歴史がある中での話なので一概に間違っているとか言えないと理解しているのですが、かたや「カーキ」の話は完全に誰かの誤解から始まっている話だと確信しています。でも誰が最初に混同したのかわからない。何時からなのかもわからない。

でも、自分の記憶の限り、1980年頃にミリタリーブームがあった時にはカーキは本来のカーキ色として認識されていて、オリーブドラブやオリーブグリーンはオリーブ色として認識されていた記憶があるんです。

いつから?
誰が言い出したの?
謎です。

ここはカーキ警察として以下を主張したいと思います

実は今は薄めのカーキから少し濃くなるとコヨーテと呼ばれることが多い色のグループがあります。このあたりは各種の迷彩色と平行して被服だけでなく装備品などにもよく使われているのが今のガチなミリタリー或いはその系統のヘビーデューティーな世界にはあるんですが、まぁそれは良いです。このあたりまでカーキ色と呼ぶのはまだ許せます。問題は緑系の色であるオリーブドラブからどんどん緑に寄った部分をカーキと称する流れです。

やっぱり許せません。
冷静に考えましょう。
それは誤用ですよ、誤用。
間違い。 
カーキkahkiはインド亜大陸の土埃や泥の色の名称。
例えば緑色の泥となると、いや、例えば藻だらけの沼の泥を藻と一緒に掬えば緑な泥になるとは思いますが、その色をカーキとは言わないんです。もっと普通の土色或いは泥の色です。

つまりそのあたりを全部まとめてカーキ色と言っているということは(乱暴に言うと)緑色を指して黄土色って言っているということです。
信号の「すすめ」の色を青信号というのは日本語が背負う歴史的経緯から許せますが、それをカーキとは言いません。
目に青葉 を 目にカーキ と言ってるみたいなものです。
スーパーのオリーブオイルの棚の前に立って「このオリーブオイルって綺麗なカーキ色だよね」と言うのと同じです。それ全然美味しそうに聞こえません。

時々世の中で露見するこういうファッション系業界のいい加減さとオリジナルデザインや色彩に対するリスペクトの無さって本当に好きになれません。そもそも商品企画やデザイナーが物事を知らなさ過ぎるような気もするのですが、いや、私如きがそんな偉そうに言う話ではないですね。申し訳ありません。
でも、なんか気持ちが落ち着きません。

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