IOCがオリンピックでの自転車競技の状況データの送信に支障が起きるのでソーシャルメディアの利用を控えてと呼びかける事態にみる落とし穴
オリンピックだからといって別に専用の通信インフラを作ることなど出来ません。よってもって競技記録の集計でも放送での中継でも商用の通信インフラを使うわけですが、占有利用できる種類の回線を使うならいざ知らず、一般のユーザーも普通に使っているインフラを使う場合には状況によっては色々と問題が起きるのは容易に想像できるもんです・・・ が・・・
やってることは一言で言うと商用モバイルネットワークを使ったM2Mのテレメタリング
自転車競技、特にロードレースは走る距離も長いこともあるんですが、選手の位置確認にGPSを使っていわゆる携帯電話のネットワークを経由してデータを収集しています。いわゆるM2Mの世界な訳で、これ自体は別に難しい話でも何でもありません。もちろん位置データの送信方法として「繋ぎっぱなしデータ送信しっぱなし」的な使い方をしないと高速で移動する自転車の位置を追いかけるテレメタリングシステムとしては機能しないのですが、まぁこれも別に難しい話ではありません。
ってことで、これをIOCが各出場者の位置や順位を収集してテレビ中継のために配信したようなのですが・・・ が…
まさかこんなにモバイルのユーザーがひしめき合うとは想像しきれなかったのか
私が言う話じゃないですが、商用のモバイルネットワークで通信品質が完全に安定することなんてなくて、更にGPSを取り付けている自転車自体が高速で移動していますから当然繋がりにくいところとかも出てくるわけです。更に更に今回問題になったのが沿道で応援している観衆がTwitterをはじめとするソーシャルメディアで凄まじい勢いでメッセージを投げ続けた事。もうこれは、正直目も当てられないという状況になっていた事が容易に想像できます。ということで結構面倒くさい事になったようです。
例えばロイターだと 「沿道観客はテキスト送信控えて」、IOCがデータ遅延で要請
あるいはCNNだと 五輪ツイート多過ぎで障害、「緊急時限定」の呼びかけも
といった感じです。
これが日常なら別の話ですが
流石のIOCもソーシャルメディアの利用を制限する事もできないので、とりあえず自粛を呼びかけるしかないという状況に陥ったようなのですが、このあたり、要は実運用と言うものをキチンと考えていなかった脇の甘さがあるよねと言われても仕方ないかもしれません。もちろんこういう形でGPSとモバイルネットワークを使ったシステムはスポーツだけではなくいろんなところで使われていて、それ自体に問題があるとは思えない種類の話。ただ今回のオリンピックで言うと、過去にありえなかった程の大量のモバイルのトラフィックがユーザーから発生してしまったので、結果的に金曜日の渋谷ハチ公前交差点や新宿東口周辺のような繋がりにくい、あるいはデータ通信の速度が出にくい状況が起きてしまったということだという話ですね。因みに無線区間だけじゃなくて基地局の後ろの有線区間がどうだったかと言う話はネットワークの構成がわからないので何とも言えませんが。
因みにネットワークとしてはBTやO2、Vodafoneが提供しているようなのですが、誰が悪いとか言う話にし辛いよなぁと思いつつ、でも責められるんだろうなぁとか思いつつ、きっと現場は大変なんだろうなというトコロまでは想像がついたりします。
因みに、レスポンスや必ず繋がるという信頼性の要求にどこまで無線ネットワークは応えられるのかというのは簡単に答えられる話ではないんですが
無線ネットワークにも何かの用途の専用のモノもあれば、いわゆる携帯電話などのように一定の条件のもとで広く使えるようなシステムもあり、一概にどうだとは言い辛いところがあります。使う帯域や圧縮方式、あるいは伝送方式によって色々と向き不向きもあり、これまた難しいところ。
ただ、間違いないのは有線通信とは安定度合いが桁違いに悪いのは誰もが変える事が出来ない物理法則に基く話なので、このあたりをどう理解して使うかと言うのが本当はとても重要だったりします。それこそ街中のWiFiアクセスポイントの話や携帯電話の事業者などを含めてそれぞれが本質的に持っている特長であり問題点であり考慮するべき点なのですが、世の中的にITの人と通信の人は思想が違うので根本的なところで相容れないとか、同じ通信畑でも有線と無線はお互いに相容れないところがあってそれなりに大変だとか、その脇でISPの皆さんそんなに無理させないでくださいよという根っこのところの話があるとか、なんだか色んなモノがオリンピックという場を通じても炙りだされて来るような気がします。
いや、そんなに深読みしなくても単純にオリンピックというものが楽しめればよいんですけれど、という話はありますが。