ちょっと考えれば見えてくるEVの光と影
いまをときめく(はず)の電気自動車(以下EV)。化石燃料を使わず人を楽にしてくれるこれからのクルマということでメーカー各社は開発にしのぎを削り、価格面やら何やらの面もあることから補助金も出つつ法人や自治体での導入やレンタカーとしての導入が始まりつつあります。既に一般に急速に普及しているハイブリッド(以下HV)とは違って純粋に電気だけで走るわけですが、自分で発電するのは減速時の回生ブレーキが利いているときだけ。基本的には充電が必要な訳です。
そんなんあたりまえやん、というのは当然。でも、充電する以上は電気がきっちり供給されていて、充電できる場所が十分に無いと困るわけです。後者については自治体や高速道路のSA/PAを始め、ディーラーでの充電サービスなどの展開がなされてるわけです。
が・・・
誰でも判る、EVのちょっとした陰の部分
電気の供給が無ければ充電できません。たとえばこれは普通のクルマであってもガソリンなり軽油なりの供給が止まれば動けなくなるわけで大差ないように見えます。ただ、供給体制を考えたとき、ガソリンスタンドの数と充電ポイントの数、その気になればどこでも補充できるのと電力が供給されている給電ポイントにたどり着かないと充電できないという基本的な特性がモノを言うことが現実に起きてしまったのが今回の震災。
そりゃ今の段階でのEVはハンディキャップが大きいんだから仕方ないでしょ?
うん。そうです。その通りだと思います。だからそれについての良し悪しについては論じません。ただ、現時点ではそうであるというコトは間違いない。ある誰もがちょっと考えればわかること。実際、根本的にバッテリーの技術の発展が今より効率よく大きな電力を蓄積できるバッテリーを作る事が出来ない限り、大きな進展は無いはずですから、まぁそんなもんかと。ただ、バッテリー技術にとてつもない技術的なブレイクスルーというのは起き難い状況であるのも事実。
ってことで、誰でも判るEVに対するちょっとした陰ってところかもしれません。
相変わらずの [Before 3.11 / After 3.11] 議論ではありますが
一方、根本的な電力供給についての議論は今までなされてきたことがありません。原発が良い悪いとかの議論とは別に、これまでの世界的に安定していた(はずの)電力供給をベースに、個々の車両が化石燃料を消費しないという側面などもあってEVが未来の本命ではないかという意識があると思うんですね。私の誤解かもしれませんけど。
ただ、電力供給が不安定になると、それがどこまでどうなるのかって言う部分にチョイと雲がかかってくるわけです。実際、東京電力や東北電力の給電能力がいつの時点で震災以前の水準に戻るのかという議論はまだこれからだと思うのですが、たとえば昨年の夏のように稼動できる限りの発電所を全力で動かして電力需要を賄っていた状態に戻すには間違いなく年単位の時間が必要な訳です。計画停電や不測の大停電を防ぐためにいろんな方策がとられることになる訳ですが、いずれにせよ送電はともかく発電と言うところで昨夏と同じ水準の需要に耐えるところまでは簡単に戻らない。
ってところで・・・ いろんな技術の発展の先にEVと言うものがある事はとてもよく判るのですが、果たして今の関東から東北という地域においてEVというのはソリューションとしてどの程度重きを置いても良いものかという点について、どうなんだろうなぁというのが私の正直な感想。
もちろん夜間電力は多分大丈夫だからって話は判ります。夜中にみんな充電すれば良いんだからという話も判ります。ただ、EVの場合、HVと違って充電に専用のシステムが必要ですし、充電自体にもそれなりに時間がかかります。非常時なんだから順番に夜になって電力供給に余力が出たときにすればいいじゃんって?でも、EVってバッテリーの持ち時間の問題もあるんですよね。だからと言ってEVを止めろと私が言えるものでもないですが、なんだかこれは難しいぞくらいの事は理解できます。
暗くなったら充電しろ的な話。これはEVに絡んだチョイと暗い部分と言えるかもしれませんね。
因みに3月11日にEVで図らずも苦労した人は当然いるわけですが
日経BPさんの「東日本大震災」関連記事リンク集にあったのが「震災遭遇で浮かび上がった電気自動車(EV)の課題」という記事。日経トレンディでたまたま3月11日にEVを借りてEV特集の取材に出かけた記者の方が、バッテリーの残量との格闘の末に都内に戻ったという話です。別にEVを否定する話ではありませんが、渋滞時のEVの問題や充電できる場所探しの苦闘の話があります。
正直私自身は現在のEVもHVも個人的な嗜好として所有する気にはならない種類の人間なのですが、永い目で見たときにそれを意識する必要があるよねってことくらいは理解しています。その裏側にはEVを走らせるためのインフラが機能していないといけないというコトと併せて考える必要があるわけで、まだチョイとハードルが高いよねというのは偽らざる意見。
もちろん否定はしません。でもね、ってところで、ココは私が感じるEVの影の部分です。
更に因みにEVって電力をそれなりに喰うわけで、実は環境にやさしい云々というのは微妙なところという、ちょっと引いた立ち位置での見方もあります
誤解を恐れずに言うと、原子力や火力を中心とした発電所で発電された電力をバッテリーに溜め込むことによって走行が可能になるEVですが、そのための電力料金に一定の補助金なり助成が無い部分で見ると非常に強烈な電力食い虫であるが故に、充電するたびに驚くような電力料金になるのが実態。
ってことで、個別の車両がCO2を出さないとか化石燃料を消費しないという面はアリだと思うのですが、それを支えるインフラ全体を一緒に見た時どうなの?と考える視点は持ってても間違いじゃないと思うんです。じゃぁ一気に原子力と化石燃料から発電事業を脱却させましょうよって?いや、そんなに簡単じゃないですから。
とかくエネルギー政策と、それに大きく依存する社会体制や経済体制というのは複雑です。