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通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

「クラウドコンピューティング」は所詮バズワードであるという認識を忘れてない?

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オルタナブロガーの林さんが混乱する クラウドの定義というエントリーで指摘されているように、「クラウドコンピューティング」あるいは「クラウド」というモノの定義が訳のわからない状況になってきています。そもそも本来の定義が微妙に不明確であったものがそのまま走り出して収拾が付かなくなってきているわけですが、この状況をマーケティング・コミュニケーション屋としての岩永的に考えると、「まぁ所詮バズワードだからねぇ」と、ちょっとシニカルに見てしまうところがあったりします。

だって、別に規格でも何でも無いんだから。

 

誰も責任を持たない用語の解釈において、各事業会社の暴走を誰も止める事は出来ないという厳然たる事実

不肖岩永、かつてIBMに勤務していた頃に、e-business事業推進という部門に居たことがあります。この部隊が発足した当時から数年間居たのですが、当初Open System Center (OSC)という名称でスタートしたこの組織がある日突然「今日からe-business事業推進室です」といわれて「なんじゃそれ?」となった日の事は結構鮮明に覚えています。

そう。世の中に e-business という単語が初めて登場した頃の話です。

その後、このe-businessという単語は非常に長い間色々なところで使われるようになったのですが、当初社内でも一体何のことやらわからなかった定義が徐々に整理され、世の中一般として使われるe-businessの概念の柱の一つになっていったというのを正にその場で見ていました。

もちろん、同じ単語を用いつつ、IT関係を中心に色んな解釈が生まれましたし、"e"ナントカ、みたいな類似する派生系のような単語を多く生み出したのですが、それも一応言いだしっぺのIBMがそれなりに定義をまとめるという作業を行っていたから、というコトが言えるかもしれません。

因みに、用語の解説と言う意味で言うと色んな雑誌や新聞媒体社がそれぞれ微妙にIBMとは違う解釈をしていたケースもありましたが、一応理解の柱はあったわけです。

いずれにせよ、言葉を生んだ人がある程度キチンと定義を決める、あるいは何かしら定義をまとめる組織が機能しないと、便利な単語が生まれたからコレを利用しちゃえという関連事業会社の動きを誰も止める事は出来ません。出来るわけがありません。

そんな状況に置かれた単語や用語、これをバズワードと呼んで間違いないと思います。

 

誰もコントロールしないバズワードの行く末と、コミュニケーション屋が考える事

規格ものであれば、単語や用語の寿命を考える必要はそれほど高くありません。もちろんなんらかの技術名称や規格名称でも、それ自体が何れ陳腐化しますから一応気にしたほうが良い。でも、そのスパンは大抵非常に長いものになるはずです。

かたや、ある特定の状況に誰かが付けた名称や単語は、多分それと同じようなものをそれ以前は別の言い方で言っていて、それらの幾つかを統合したり分割したり発展させたりして誰かが新しい名称を付ける。でも、前があるから今があり、今があると未来があるわけです。

モノゴトは変わるんですね。当たり前ですけれど。

ということで、コミュニケーション屋は素直に今はやりの単語をどうやって取り込んで、たとえば自身の先進性やら積極性をどうやって表現しようかと考えます。次の単語が来れば、それを利用します。もちろん製品やサービスなどの基本的な思想や位置づけは理解しつつ、それをお客様に伝えるために利用できると思えば、それで良い方向になると信じる事ができれば、あるいはひょっとしたら組織の上層部から「コレに絡めてなんか言えない?」みたいな指示があれば、やっちゃうわけです。

もちろん状況によっては送り手側自身として表現が恥ずかしかったり、良心の呵責(ちょっと大袈裟)に悩んだりすることもあるわけですが、そこなビジネスですからやるわけです。嘘だと断定できない、あるいはされない限りやるわけです。で、それで所期の結果が出ればOKな訳です。でも、次の便利な言葉が出てくれば、素直に乗り換えます。そんなモンです。

ということで、残念ながら、最初にその単語や用語を使い始めた人(たち)の思想とは全く別の進化を遂げて、最後に忘れ去られてゆくのがバズワードの一つの流れじゃないかと思うんですよ。

 

たとえば、さすがに「Web2.0」という単語を口にする人にはお目にかからなくなりました

そういうモンです。

ただし、根本的な思想の問題として、あるいは技術の発展の方向として、現在は定義が混乱しつつ色んな人が「クラウド」と呼んでいる何かの方向に今後進んでゆくんだとは思います。それは多分もう止める事は出来ないとも思います。

たとえば、ITというもののコモディティ化という話がようやく色んな人の口に上るようになった状況を考えても、多分それを実現するプラットフォームとしての「(定義混乱中ではありますが)クラウド環境」と呼ばれるものが使われてゆくのだとは思います。

 

でも、シニカルな岩永は考えてしまいます。
きっと、今年の秋とかには別の言い方がされ始めているんじゃないかって、ね。

Comment(4)

コメント

成田

まったくそのとおりだと思います。
同じ商品をクラウドとしてあたかも新技術みたいな言い方で
売るのは詐欺に近いです。

ardbeg32

穿ち過ぎだとは自覚してますが、技術屋が考えた新語って、中二病っぽくあっても一瞬で消えて行ったとしても、それなりに定義があって変なコジツケの後追い商品名ってでないと思うんです。
その点、昔のアメリカの技術に強い大企業が作った言葉はやはり今も生きてる。

なんだかバズワードっぽいのは、営業や広報の文系さんがイメージでつくった「ノリのいい」「口当たりが良いだけ」の言葉じゃないかなと個人的には思ってます。
まあそれでお金が落ちてくるなら、一銭の徳にもならないテクニカルターム考えるより余程いいのはわかりますが。
だってファイルサーバーのアウトソーシングよりも、オンラインストレージよりも、クラウドって言ったほうがなんかお金出してもらえそうですもんねぇ。

成田さん、コメントありがとうございます。
 
いやぁ、同じようなモノの看板だけ掛け替えてって話はどこにでもあるにはあるんですけどね(苦笑

ardbeg32さん、コメントありがとうございます。
 
常に何かしら新しいところを求める欲求のなせる技と言いきってしまうと身も蓋も無いんですが、そういうところで商売が成り立つ部分があるのも事実なので、善し悪しを言いきれないところではあると思います。ただ、間違いないのは常に移り変わってゆくというところですけどね。

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