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通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

海を越えたクラウドコンピューティング?でも、「国境間にまたがる冗長性を確保したデータの一貫性保証と保全は誰がどういう法的根拠でやるのか?」とか考えたことありますか?

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<このエントリーは私自身の持つtumblrのスペースに書いたものを加筆修正したものです>

ある知人が投げた「国境間にまたがる冗長性を確保したデータの一貫性保証と保全は誰がどういう法的根拠でやるのか?」という非常に大きなお題についての議論に参加することが出来ました。議論といってもtumblr上でのものなのですが、非常に大きな問題を内包している気がします。そこでの、ワタシ自身が最初に思ったこと・・・

 

実は何の枠組みも無い。

何を根拠に誰が誰を守るのか、何を保障するのか、個々のサービス約款には何かしら謳われているんだとは思うのですが、たとえば海外にあるサーバーで何かしらのアプリケーションを稼動させている環境下において、自社内のサーバーと外部のサーバーとのデータの一貫性や冗長性確保の保証、そして保全を一体誰がどういう根拠で担保することが出来るのだろう?という話です。

でも、それを本当に保障してくれると誰が裏書きしてくれるのか?

それを提案したコンサルタント?
そのための仕組みを提供したメーカー?
それを提案したSIerやISP?
クラウド推進を図ろうとしている総務省や経産省?
それを利用しようといい始めたエンドユーザー部門?あるいはシステム部門?

なんだか誰でも無いような気がします。もちろん個々の事例についてはそれぞれをキチンと見てみないとなんともいえませんが、単純に個別契約の中でカバーできる範囲をどっかの瞬間に踏み越えてしまうことが、実は意外とあるような気がします。

 

ならば枠組みを作れば?論

国際間条約に基づいて設立されるメタISPみたいなのが出来れば可能かもしれませんが、恐ろしいほどの強大な権力を持った組織になってしまうので、各国間の利害調整や主導権のとり方の問題が余りに大変層です。ということで、メタISPみたいな組織を作るというのは実行前から破綻してる気がします。

じゃぁどうするか?っていうのについての案は無いのですけれど。

 

ネットワークはちゃんと機能してるんだから世界中どこでも大丈夫でしょ?論

ちなみにデータの一貫性議論の中でやっぱり問題になるのが間を仲立ちする通信部分で、各国国内の通信事業と国際間を接続する事業者の主体性や設備・サービス面でのレベルの問題、果ては各国の制度上の位置づけなどを考えると、メタISPみたいなのが出来たとしても一定のサービスレベルを確保するのは不可能な気がします。故にその面からは実現性に乏しいんじゃないかというのがワタシの意見です。

先進国間でさえも広義の通信環境については非常にバラつきがありますが、開発途上国の通信事業の状況はバラつきという言葉で括れる理解範囲を超えるくらい千差万別ですし。でもそれをネグるためのメタ通信事業者なんて考えてもメタISPよりもハードルが高い気がします。

ちなみにここで、クラウドデータセンターは通信インフラの整った国や地域にしか置かれていないから大丈夫だよという話、あるいは日本国内の設備だけを使うから大丈夫だよという話などもあるかもしれませんが、実は日本国内の通信事情も決して均一ではありません。無線有線を問わず、提供されているサービスの品質は結構まだら模様だったりはします。

で、話を元に戻して、たとえばこの通信インフラのレベルを揃える為に国際協力で全世界の底上げを、となるとODAなどである一定の水準でのサービスを実現するための仕組み(ハードやソフトだけではないのですが)を突っ込んでゆく必要があるのですが、、その部分に各国政府の政策上の綱引きや駆け引きがあるんで、今でも大変なのに・・・ と素直に思ってしまいます。

 

で、どうしたらいいのよという問いに解は無いのですが

ということで、相変わらずワタシの場合、「あまりきれいな雲の夢ばかりを見るのは少し考えたほうが良いのではないか論」になってしまいます。概念としてのクラウドコンピューティング自体は非常によくわかっているつもりですが、単にそのためのインフラとしてデータセンターを作ればよいんだよという話には少なくとも懐疑的である、とは思います。

後ろ向きだとかではなく、それらを有効に使うために考えることが一杯ありそうで、とりあえず問題山積なんだなってところでの思考のループに陥っている、って感じでしょうか。

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