オルタナティブ・ブログ > THE SHOW MUST GO ON >

通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

通信インフラの周回遅れ

»

今回、マレーシア、ベトナム、タイと回っているわけですが、改めてASEANとして括って考えることの難しさを思い知った次第です。あまりにも各国の状況が違いすぎる。夫々の国が持っている危機感や方向感は大方同じなのですが、抱えている状況と度合いが違いすぎる。そりゃそうなんですけど。

 

ASEANのなかの温度差

今回訪れている中でもマレーシアやタイは比較的通信インフラの普及と利用が進んでいる国だといえます。有線も無線も。それに対してベトナムは政治体制や歴史的経緯もあって、完全に周回遅れと言えます。しかしながら、国として成り立ってゆくために、取り残されないために通信インフラの整備、ICTに関する国内のレベルの向上、そして産業として世界に伍してゆきたいという明確な意思があります。

ベトナムに到着したときに最初に視察に行ったのは、日本で言うと筑波や京阪名の学究都市に当たるエリアです。実際には開発のグランドデザインがJICAの協力によって出来上って国の承認を得たところで、実際の開発はこれからある程度の年月を掛けて進めてゆくものです。人材の育成も本格的にはこれから。

ただ気になったのは・・・これは同行したほかの方が質問したことなのですが、「周回遅れで同じことをしてもどうしようもない。ベトナムとして特色が出るエリアへの集中が必要ではないか?」ということ。この部分、実は日本国内での地方における同様のプロジェクトにも共通する問題ではないかと思います。解が簡単に見つかるものではありません。たとえばベトナムの場合、農業人口が全人口の7割を占めるかなで、いわゆるバイオテクノロジーの部分に大きな力を注ぎ、農業として世界に十分な競争力を持つようにするべきで、そのためにICT技術を使うというのがありきたりですがひとつの方向だとは思います。もちろんそれを決めるのはベトナムの方ですから日本から来た事情をよく理解していないアホが四の五の言う話ではないのですが、事実そういうディスカッションがありました。

 

同じ道を行くことの危険性

そもそも、一般的に考えられることが多い「自分のところにシリコンバレーを作りたい」という話。もちろん地方行政の流れで産業を興すのは全然OKだと思いますが、それを世界に対して喧伝するとなった場合、たとえばアジアであればインドや中国、そして台湾あたりと正面から戦うことになります。でも彼らは明らかに数周先を既に走っています。同じことをやっても多分追いつけない。もっと違う道を探らないと、戦えない。でも、彼らに伍して世界に出てゆきたいという思い。難しい問題です。

 

人材の重要性

いくつもの部分から構成される非常に大規模な、しかも全く新しい仕組みを作るときに、全体を一気に進めることは無謀なのは当然です。相互依存関係、資金、人材などのリソースを考えると、当然優先順位をつけるべきです。周回遅れの一番弱いところは、やはり人材ではないか、というのが今回も肌で感じたことです。もちろん、インドや台湾、中国でも同じ問題があるのですが、国内での教育体制整備と並行して人材をどんどん海外に留学させてしまう。ひょっとしたらそのまま帰ってこないかもしれないけれど、必要なノウハウや経験を持って帰ってきてくれることもある。実際各国でそういう起業家が山のように居るわけです。人材のレベルでは十分戦える状態がそこにある。それらの人が戦う場を国として作る。そんなシステムが既にそこにあるからどんどん先に行けるわけです。
もちろんいろんな経緯で現在があるわけで、今が駄目だと言うわけでもなくて、でも自国内に十分な人材が居ないのも事実。

多くの周回遅れの国が同じような状況があるわけです。でも、やはり、人材は大事。

 

誰がパートナーになれるのか

通信インフラの話なのでどうしても国家レベルでの政策にかかわってくる話なのですが、たとえば中国も、韓国も、インドも、もちろん欧米の各国も動くわけです。今回行ったベトナムの”シリコンバレー計画”のグランドデザイン作成にあたっては日本のJICAがサポートしていますが、実際にそれをつくり、そこに事業や教育という立場でどうやって関与していくのかといったことはとても重要な話です。

周回遅れであることは百も承知。でも何とかしたい。
同じことをしても追いつけないというか、勝負できないのはわかっている。
そもそも開発途上国という立場では必要な場でも発言が制限されてしまうし、イニシアチブを取るのは非常に難しい。

じゃ、どうするのか?

たとえばシリコンバレーを作るだけでは何も生まれない。そんなことは既に百も承知。単なる箱物行政の流れではいけないのは判っている。そんな状況に触れても、残念ながら私は行政サイドの人間でもありませんし、ましてや夫々の国の人間でも在りません。

でも、何のためにそれを作るのか、どこに向かって発展してゆくのかということをアジアの仲間として、それを自分の立場で一緒に考えることというのはとても重要なのだと言うことをヒシヒシと感じます。

そして、日本にという立場から何を一緒にできるのか、何を一緒にするべきなのか。そんなことが頭を駆け巡ります。

 

さて、これからバンコクに移動です

バンコクは昨年の9月にITU TELECOM ASIAに出展したときに訪れて以来。彼の地で私は何を考えるんだろう?

Comment(0)