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通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

プロの仕事には意味と技がある

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イベントの役割として、見せるべきものをどうやって演出してきちんとアピールするか、と言うことがあります。何らかの意味があってひとつの形なったものをどういう技をつかって生かすか。これが勝負です。


ブースの木工の壁面は伝統技術で仕上げられています。

木工で作ったブースの壁面に貼られている壁紙は経師(きょうじ)と呼ばれる職人の仕事です。元来は屏風や襖を仕上げる職人で、広い面積を皺1つ無い状態に 仕上げるものです。この技術が日本にあるお陰で滑らかな曲面や広い表面のデザインを現実の構造物として実現できます。海外のイベントで木工のブースを見る と、貼ってあっても張り合わせが目立つ壁紙、下手をするとペンキ仕上げだったりしてびっくりすることがあります。海外の展示会などでユニット構造が多いの は、経師仕上げのような技術があまり無いためです。もちろん日本でも上手い下手はあるのですが、何気なく見ているブースの壁面に長い歴史を持つ技術が生か されているんです。


とはいえユニットも捨てがたいものがあります。

デザインの自由度は木工が圧倒的に高いものです。それに対してユニット構造の場合には、利用する部材によりデザインに大きく制限を受けます。しかし、それ ぞれの部材が設計段階で目指したものがあり、それをきちんと理解して使うと、非常に魅力的なブースを作ることが出来ます。いわゆるトラスやオクタノルム、 ピラ、マックスなどが良く使われるシステムです。
展示会場のブースは以前は木工ばかりだったのですが、15年くらい前からユニット構造が増えてきて、リサイクル度を上げるみたいな掛け声の下、一時期は木 工のブースが殆ど無くなった時期もありました。確かに特殊な形を作ると終わった後には壊すしかありませんでした。しかし、ユニット構造ばかりではどの ブースもあまりに画一的に見えること、実は木工ブースには定型サイズのリース板が多用されていて実は結構リサイクル率が高くコストも安いこと、更にはユ ニット構造と組み合わせることによりデザインの幅を広げられることなどの理由により、最近はユニットと木工を組み合わせることが多くなっています。

部材自体、そして利用方法のバリエーションが増えたことにより、何をどうやって見せるか、どんな風に見せるかといった、現場のデザインの幅が広がったといえます。


もちろん、見せるべきものがあっての現場です。

当然の話ですが、その場で見せるものがあって初めて「場」が生きます。展示ブースは建築に近い世界ですので、いわゆる建築系のデザイナーというか設計が出来る 人の世界です。構造解析がきちんとできないと本当に倒れてしまいます。無理な構造を作ろうとすると、充分な照明や音響の機器が設置できないとかの問題が起 きることもあります。

ところで、そういった場所で見せるべきものは誰がどうやってデザインしているのでしょうか?実は世の中のおそらく殆どの工業製品をデザインしているのが「工 業デザイナー」と呼ばれる職業の人です。展示会で見せるようなものだけではなく、身の回りにあるものの殆ど全てがデザイナーの仕事の対象です。

PC本体、モニター、キーボード、マウス(私のはトラックボールですが)、ケータイ、机、椅子、ドア、ボールペン、目薬のボトル、腕時計、壁懸け時計、壁 面パネル、ロッカー、ゴミ箱、ドアノブ、ハンガー、CD-Rのケース、バインダー、ステープラー、ハサミ、カッター、お茶のペットボトル、社員章のホル ダー・・・ ざっと身の回りを見ても、ありとあらゆるものが誰かにデザインされて、形になっています。その「誰か」が、実は「工業デザイナー」と呼ばれる人であったことを思い出させてくれる本を読みました。


デザインにひそむ〈美しさ〉の法則 

479733794x_m最初に勤めたIBM、少なくとも当時の事業の柱の一つにコンピューター機器の製造と販売がありましたから 工業デザイナーという仕事の存在は知っていましたが、どんな仕事をしているのかについてはよく判っていませんでした。

展示会であれセミナーであれ、何かしらの形を作る仕事をしている以上「デザイン」と言うこと自体は気になるのですが、きちんと体系立てて勉強したことは余りありません。殆ど体で覚えているという状態ですね。もちろん、デザインにはきちんと理論があるのは判っていたのですが、不肖ながらまともに勉強したことがありません。さすがに危機感を持っていて独学とはいえ折りにふれ本や文献をあさっているのですが、この本に巡り合って、いまさらながら目から鱗が落ちたような気がしました。

人が何をどのように認知するのか、どういったデザインを心地よく感じるのかなどから始まって、実際に物を作ってゆくプロセス、デザイナーが何を基準に形を決めるのか、あるいは国によって違う求める質感の話などなど。

感覚的に美しいと思えるデザインにもちゃんと理由があることに気付かせてくれました。

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