ぶらりと入った本屋で友人が探していたCDをみつけた、これは偶然なのだろうか?
おはようございます。
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===ほぼ毎朝エッセー===
□□自分が欲しいものを回りに言いふらしておく効果
HさんのDaily Reportにあった一文から前職での開発でのあることを思い出しました。
以下引用==>
[Good News]
* ふらりと入った本屋で、友人が探していたCDを偶然見つけられました。
<==以上引用終わり
前職で私は、ケブラーという高強度繊維の用途開発をしていました。その中で開発リーダーをやっていた電子基板の素材への応用、ケブラーを3mm長にカットする必要が出てきました。
それまで、ケブラーの最短カット長は、従来の高速カッターでは6mmまでが限界、それ以下は無理だとの調査論文すら出まわっていました。もちろんハサミとかギロチンカッターとか、手間をかけた切り方なら3mm長でもできます。でもこれでは採算が合いません。生産性のためには、高速カッターが要るのです。
天然繊維というのは基本的に短い繊維(短繊維)を撚り合わせて糸にしていきます。一方、ポリエステルとかの合成繊維は、ずっとつながった繊維(長繊維)なので、糸にするには一度カットしてから再び撚り合わせるという手間をかけます。そこに存在する合成繊維の高速カット技術というのは面白いです。
原理としてはこのようなものです。
・放射状に等間隔に刃先を出した円筒状のものに、
・合成繊維をぐるぐると筒に上から巻き付けて、
・筒を横から圧力をかける別なローラーで押すのです。
・すると、切れた糸は、歯と歯の間を通りながら中心部分にずれていき、
・筒の中心部分から切れた糸が回収できます。
この方法で短時間に大量に短繊維を製造しているのです。
この原理から、わかるように、繊維長が短くなればなるほど、カットは困難になります。放射状の歯の間隔は狭くなるので、歯の枚数も多くなるし、繊維が通過するときの目詰まりなども起こしやすくなります。特にケブラーは合成繊維としては硬めの繊維なので、高速カッターでの最短カット長は6mmが限界でした。
「何とかならないだろうか!」
電子基板用途の開発リーダーをしていた自分は、きっと意識せずにあちらこちらに声をかけていたのでしょう。ある日、同じ部署の大阪駐在の繊維加工技術の先輩から、彼の元同僚の東レの愛媛の繊維技術者から、面白い特許があって高速カッターでケブラーを3mmに切れるみたいだと話していたというのです。
彼にすぐにその特許のコピーを入手してもらい、コピーを見て連絡先を調べ、開発した会社電話しました。すると先方からは実に頼もしい声が聞けました。
「1mmくらいまでならいけますよ」と。
その翌週、カットしたい繊維を、京都にあるその会社に送付して、カッターで試し切りをさせてもらいました。その会社は社長と作業員二人、あとは事務系の人と、合計数人という小さな規模でした。そのときの高速カッターはまだ試作品レベルでしたが、スルスルと見事に3mmに切れたケブラーが出てきました。カットミスもありません。
「これは使える!」
その後、電子基板の試作に使える量を確保するため、そのカッターが置いてある京都に、何トンもの糸を送り込んでは、3mmカットのケブラーを大量試作しました。紆余曲折はありましたが、約1年かけて、本格設備を愛媛工場に設置して、いよいよ電子基板用のケブラーというものが大量生産されるようになったのです。前職ではこのような開発もやっていました。坂本史郎35歳の頃ですかね。
ここで、情報の伝わり方の不思議さに驚くのです。いわゆる雑談からなのでしょう。プロジェクトに憑りつかれて、熱病にうなされたくらいに、頑張って粘る。自分が欲しいものを言う、表現する、本気で願う、それを繰り返し言う。すると、誰かがちょっとしたおせっかいで話題にしてくれることもある。そこから、ブレイクスルーにつながるような技術へと結びつくこともある。
実にひょんなところからヒントが舞い込んでくるものです。ヒントをすぐさまに検証するのも大切なのでしょう。そして難しいのは、これを事前に予測することはまずできないです。そしてこの電子基板の開発の成功を受けて、自分はi-modeの端末を入手し、その後、起業してしまうわけですから、「ひょんなこと」って大切です。