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ビジネスモバイルITベンチャー実録【朝メール】から抜粋します

感情に捕らわれた不毛な議論からの脱却

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おはようございます。

昨日の朝よりは放射冷却を感じません。風はほとんど感じませんが寒めです。

===ほぼ毎朝エッセー===

「あ、また言った」とか「ほら、だからね」とか。

その人に対して出来上がってしまった先入観が邪魔をして、議論をしても、ネガティブなイメージが先にでてきてしまって感情が邪魔をして満足な議論にならないのです。誰でも好き嫌いはありますね。で、いちど嫌いサイドに気持ちが入ってしまうとそこから抜け出せないことがあります。

自分も経験したことがあります。

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「自分はこっちが正しいと思う」「いやあっちが正しい」

ちょうど10年前、CACHATTOをどうするのか、その方向づけで開発担当の副社長と大いなる議論にならない、いわば喧嘩をしていたのです。エネルギーレベル高く議論をすれどもまるで平行線です。

疲弊はすれども何も決まりません。
結果的にはそこから脱却できずにいました。

その時、開発のプライオリティをつけるいい方法に巡り合えました。起業の時にとてもお世話になった知り合いの川上さんという方が、無償で週末に会社にやってきては、ヒントをくれたのです。

「史郎さん、では、
 その開発にはどれくらい時間がかかりますか?
 その開発が終了するとどれだけの売り上げが上がりますか?
 その売り上げはいつ発生しますか?」

この問いかけに対して、実際に月ごとの試算表を創りました。案件がいくつかあって、開発する順番を決めると、いつ売り上げが上がって、いつお金を支払ってもらえるのか。

議論を重ねるのではなく、曖昧と思われることでも、エクセルに一つ一つ書きだして行くと、実に見事に状況が描かれたのです。そしてシミュレーションができて具体的な数字が出てくるわけです。その結果を元に開発のプライオリティを決めればいいのです。

不毛な議論は影をひそめ、有益なものへと変質します。シミュレーションはその後、月々のキャッシュの出入り予測までできるように進化していきます。これが未だに使っている売上と費用とキャッシュフローの大シミュレーターである「行動計画表」の原型でした。

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図にしたり数字にしたり。一見遠回りに思えることでも、それを元にしないと合理的な判断ができないということです。普段の仕事でも、感情に飲み込まれそうになったら、数値化やグラフ化をして、その中で次なる合理的判断を考えるのです。感情に飲み込まれた議論の応報による空転、このことが多くの組織での迷走の理由になっていることが学べました。

その後、川上さんは64歳の若さで亡くなってしまったのですが、生前あるときに、毎週末きて指導してくれたことのきっかけについて話してくれました。

「史郎さん、口止めされていたんだけどね、あれは彼のからの『なんとかお願いします!』という、たっての依頼で行くようになったんだよね」

そう。不毛な感情にトラップされていた自分に、喧嘩をして去ってもらった相手が、師匠を通じた差し金で、大いなるヒントをくれていたのです。

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