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父が教えてくれたこと:心地よく働くために必要なスキル【Teams仕事術 番外編】

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「自分が働きやすい環境」を実現するために必要なスキル

2019年5月1日、令和が始まる時、令和元年、 well-beingでいこう! 【令和時代の働き方】、父が実現していた「自分が働きやすい環境」について書きました。

2021年3月19日、【Teams仕事術 ~ニューノーマル時代に心地よく働くための実践知~】(技術評論社)を出版しました。(発売1か月で増版(第2刷)が決まり、心温まる書評に感謝申し上げます。)

『Teams仕事術』は、心地よく働くためのコツ(実践知)を、ビジネススキル×ITスキルの観点から書いた実用書ですが、そのベースには、今のように制度やITが整っていない時代でも、「自分が働きやすい環境」を実現できると教えてくれた父の働き方があります。

今日は、『Teams仕事術』番外編として、父が教えてくれた「自分が働きやすい環境」を実現するために必要なスキルについて書きたいと思います。

  1. 【交渉術と実現する力】事業所(1F)と自宅(2F)の通勤時間 30秒を実現
    会社と交渉し、1Fを会社のオフィス、2Fを自宅として、家を建てた父(当時36歳)の通勤は、階下に降りるだけの30秒になりました。最初から1Fをオフィスとして設計していたので、通勤時間30秒でありながら、「働く場所」と「暮らす場所」が分離されていました。「働く場所」と「暮らす場所」が分離されているので、今の在宅勤務が抱える課題とは無縁であり、現在も他の企業の事務所として使われています。

    父は泉下の人であるため、今となっては、交渉の詳細を教えてもらうことはできませんが、組織にとっても、働く人にとっても利点があったからこそ、このような環境が実現できたのだと思います。「働きやすい環境」を実現するには、組織にとっても、働く人にとっても、利点が必要です。
    「働きやすい環境」を実現するには、感じている「不快」を、組織への「不平」「不満」としてぶつけるのではなく、「提案」として交渉する力を磨くことが必要です。

  2. 【調整力と全体最適化】私の幼稚園の送迎は、父の担当 
    通勤時間が30秒になったことで、父の時間が増え、幼稚園に私を送っていくのは、父の担当になりました。父の担当になったことで、母の朝のシゴトが1つ減り、母の時間が増えました。通勤時間が減るということは、父の時間が増えるだけでなく、母の時間が増えることでもありました。

    複数名で構成されるユニットという意味では、組織も、家族も同じです。働きやすい環境が必要なのは、対価が示される有給の仕事だけでなく、家族が心地よく生活するための仕事(家事や育児という生活者の仕事)も同じです。
    働きやすい環境」を整えるには、全体最適を考え、誰が何をすればよいかを調整する力が必要です。

  3. 【前例にとらわれない】父のオフィスの片隅で本を読んだり、絵を描いていた私
    幼稚園や小学校から帰宅後、オフィスの片隅で本を読んだり、絵を描いたりすることは、幼少期の私の日常でした。私の日常が、一般的な企業にとって「前例にないこと」であり、この「前例にないこと」を会社に容認してもらうことの意義
    を理解したのは、随分あとのことでした。
    四半期に1度、黒いピカピカの車に乗ってオフィスを訪れ、笑顔で「また来ますね」と優しく声をかけてくれていた紳士が、創業80年を超える、東証一部上場企業の会長の要職にあった方であると知ったのは、高校生の時でした。

  4. 【スケジュールマネジメント】年に数回、1週間以上の休暇をとって旅行をする
    年間の休暇スケジュールを決めると、計画的にモノゴトを進める習慣を身につけることができます。コロナ禍の今は難しいですが、1年間の休暇をまとめて計画すると、「計画的に仕事を進められる」「早割によるコストメリット」など多くの利点があります。
    ところが、この話をすると「そんなに早くから仕事の予定が見えません」「お客様の都合に依存するので無理です」と言われる方が多いのです。
    「心地よい働き方」を実現するには、「無理です」と言う前に、チームで年間の休暇スケジュールを決めてほしいのです。チーム全員で年間の休暇スケジュールを決めると、全体の仕事量やバランスを調整しやすくなります。また、バックアップ体制も合わせて考えることになるので、結果的に仕事のリスクを軽減することにもつながります。

  5. 【信頼のマネジメント】「やるべきことをやっているのであれば、時間は自由に使ってください」
    この言葉は、父と一緒に働いていた方が教えてくれた父の言葉です。「想定よりも速く仕事が終わるのは、あなたの能力です。やるべきことをやっているのであれば、時間は自由に使ってください」と言われていたので、「勤務時間の空いた時間を自身のスキルアップに使うことができました」と言われていました。
    相手を信頼して任せる「信頼のマネジメント」は、会社の仕事だけではなく、育児(子ども達に対して)も同じでした。
    また、日ごろから「誰かが困った時に、思い出してもらえる人になりなさい」と言われていたのも、相手を信頼するだけでなく、相手から信頼される人であってほしいという、父の願いだったのだと思います。

    いつの時代も、「心地よい働き方」を実現するには、ビジネスパーソンに必要なスキルを磨き続ける必要があります。
    40年以上前に父が実現していた「心地よい働き方」は、これからも、私の「心地よい働き方」を指南してくれることでしょう。
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