オルタナティブ・ブログ > 椎野磨美の観察日記 ~感性と審美眼を磨こう~ >

組織開発・人財開発・IT・ビジネスについて、日々、感じたことをつづります。

北海道苫小牧市+苫小牧高専の取り組みが教えてくれたこと

»

皆さん、おはようございます!

10月は、北海道苫小牧市(9日間)、富山県西部3都市(3日間)でワーケーションをおこない、北海道苫小牧市で、「Teams仕事術 改訂新版」(2022年10月22日)の発売日を迎えました。

本題に入る前に、「ワーケーションをすること」がシゴトになっている背景について説明しておきたいと思います。

拙書「Teams仕事術」にも記していますが、1995年から「組織のシゴト」と「個人のシゴト」の両方をハイブリッドで実践してきました。併せて、出張に休暇を追加したり、休暇にシゴトを織り交ぜたりしながら、自分にとって心地よい働き方を続けています。

「パラレルキャリア」も「ワーケーション」も、言葉が定義されていない時代から実践していたので、「先駆者」と表されることも多いのですが、たまたま「やりたいこと」を実現していたら、後から言葉が定義され、結果として「言葉がない時代から実践してきたヒト」になっていたというのが正直なところです。

  • (目的)出張先で観光をしたい 
    (手段)ブレジャー
  • (目的)海外旅行のために長期休暇をとりたい 
    (手段)ワーケーション
  • (目的)組織のシゴトと個人のシゴトを両立させたい 
    (手段)ハイブリッドキャリア(パラレルキャリア/複業)

目的を実現するための手段として「ブレジャー」や「ワーケーション」をしていたら、「ワーケーションをすること」自体がシゴトになっていた、という訳です。

◆「ワーケーション」は「目的」なのか?「手段」なのか?

ワーケーション事業が推進され、全国各地にワーケーション可能な場所が増える一方で、「施設や設備を揃えたけれど、なかなかうまくいかない」といった相談を受けることも増えてきました。

実際、全国各地で開催されているワーケーションプロジェクトやモニターツアーに参加すると、「手段の目的化」が起こっていて、「これだと上手くいかないだろうな」と感じることも少なくありません。

「手段の目的化」とは、本来、ある目的を実現するための手段である行動が、いつのまにか、その行動をとること自体を目的としてしまうことです。「ワーケーション」に限らず、「手段の目的化」が起こると、それに振り回される事態が発生し、本来、解決したい問題や課題を解決しづらくなってしまうのです。

このような事態が起きてしまうのは、置かれている立場によって、その行動をとること自体が、目的にもなり、手段にもなるからです。事業や施策を「推進する側」のヒトにとっては、手段である行動をしてもらうことが目的であり、事業や施策を「利用する側」のヒトにとっては、ある行動は手段であり、目的は他にあるからです。

  • 「目的」としての有給休暇取得:推進する人(人事部)
  • 「手段」としての有給休暇取得:利用する人(従業員)
  • 「目的」としてのワーケーション:推進する人
  • 「手段」としてのワーケーション:利用する人

つまり、手段を「目的」とすることが問題なのではなく、「推進する側」が「利用する側」の「目的」を理解できていなことが問題なのです。

たとえば、旅行先を選ぶとき、どのような基準で旅行先を選んでいるでしょうか?また、何度も訪れている、お気に入りの場所がある場合、何度も訪れているのは、どのような理由からでしょうか?

単に「景色が美しい」「海の幸がある」「温泉がある」だけでは、訪れたい場所に選ばれることは難しく、そこに「Wifi環境やコワーキングスペースが整っています」が追加されたとしても、ワーケーションの地として選ばれることは、さらに難しいのです。

◆「何度も訪問したい場所」として、何が必要なのか?

組織の制度とネットがつながる環境が整っていれば、どこでもリモートワークやワーケーションをおこなうことができます。そのため、ワーケーションを「推進する側」が自分たちの地域に来てほしいと思っても、「利用する側」が「その場所でなければできない」「何度も訪問したい場所」と感じることができなければ、ワーケーションの地として選ばれないのです。

今回参加した苫小牧市ワーケーションモニターツアーは、「北海道苫小牧市だからできるワーケーション」を考え抜き、「苫小牧市でなければ実現できない」取り組みが随所に見られたので、そのいくつかを紹介したいと思います。

◆苫小牧高専の方々との交流会 ~Pricelessな価値~

今回のモニターツアーで1番楽しみにしていたプログラムが、苫小牧工業高等専門学校(苫小牧高専)の方々との交流会(卒業研究の発表)です。ワーケーションのモニターツアーに、その地域の地域事業者の方々との交流会(意見交換会)が組み込まれているケースはよくありますが、学生の方々との交流会が組み込まれているのは、苫小牧ワーケーションモニターツアーが初めてでした。(他でも実施されているかもしれませんが、私がこれまで参画したワーケーションプロジェクトにはありませんでした)

高度IT人材が不足している日本において、高度IT人材である高専の方々との交流は、お互いの知識や経験を共有できる貴重な場でした。期待を大きく上回る内容だったので、モニタツアーに限らず、ワーケーションに来た時に、高専の方々と交流できる仕組みをつくることができれば、「北海道苫小牧市だからできるワーケーション」の大きな強みになると感じました。

◆「ブルームボール」体験 ~「その場所でなければできない」の実現~

カナダ発祥の「ブルームボール」体験。苫小牧市のワーケーションモニターツアーに参加するまでは、見たことも聴いたこともないスポーツでした。初めてのスポーツをチームで体験する時間は、「できなかったことができるようになる楽しさ」を感じられる時間であり、チームワークを醸成する時間でもあります。

チームスポーツは、体験を通してチームビルディングを考えることができますが、全員が「初めて」から始められるスポーツは意外に少なかったりします。「ブルームボール」体験も、まさに「その場所でなければできない」ことであり、「北海道苫小牧市だからできるワーケーション」の魅力のひとつだと思います。

b1.png

苫小牧工業高等専門学校サテライト「C-BASE」 

いくつかあるコワーキングスペースから選択したのは、苫小牧高専のサテライト「C-BASE」です。こちらでは、苫小牧市・苫小牧高専・苫小牧商工会議所がタッグを組み、中小企業・小規模事業者の技術相談が行えます。

技術を相談する場があるのは、非常に素晴らしい取り組みであり、全国各地でこのような取り組みが広がることで、IT人材不足の解決の一助になると感じました。

cbase1.png cbase2.png

◆苫小牧市 総合政策部 政策推進課の「本気」 

これまで、さまざまな地域のワーケーションプロジェクトやモニターツアーに参加してきましたが、その後、個人として何度も再訪している地域に共通しているのは、市の職員の方々の「情熱(地域への愛情)」です。

ワーケーション事業を事業者任せにするのではなく、各アクティビティへの同行やきめ細やかな対応。例えば、意見交換会後、会議室から早々と帰られた管理職の方が、実はBBQのために着替えに戻られ、BBQで誰よりも動かれているといった具合です。

また、モニターツアーの全工程をアテンドしてくださった旅行代理店のHさんからも「苫小牧の魅力を伝えたい!」といった「苫小牧愛」が溢れていました。

「北海道苫小牧市だからできるワーケーション」を官民一体でつくりあげる、「利用する側」の目的を理解した上で、「推進する側」として「ワーケーション」を推進していると感じた、モニターツアーでした。何度も訪れたい場所として「北海道苫小牧市」が記憶されたのは、このモニターツアーがきっかけであることは間違いありません。

今度は、別の季節に、苫小牧でワーケーションをしたいと思っています。

Comment(0)