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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

海水淡水化と原子力発電を1つにした原子炉ユニット

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海水淡水化関連の資料は丹念に探すとかなりの量が見つかります。日本でも水処理膜はもちろんのこと、プラント関連のメーカーなど、関係する企業の裾野が広いからでしょう。

■海水淡水化関連の報告書2本

めぼしい資料を2つ挙げておくと、1つは前投稿でも引用した日本原子力産業協会による「海水淡水化の現状と原子力利用の課題」(2006年7月)。海水淡水化の動向がこれ1本で把握できる非常に優れたレポートです。1/4程度が原子力プラントと海水淡水化プラントの融合に関して述べられていますが、残り3/4は海水淡水化プロパーについての記述です。

海水淡水化処理そのものがエネルギーを必要とするので、発電施設と一緒に作るという発想が自然と生まれるのでしょうが、このレポートによると、原子力発電プラントと造水プラントを一緒に作るというアイディアは1965年から検討が始まっていたと言います。

日本においては、多くの原子力発電所が半島の先端で炉心冷却用の真水が得にくい場所にあるため、海水を取水して冷却水を作るということが広く行われているとのこと。

関西電力の高浜原子力発電所には、日産1000m3のMED(多重効用缶法、1983年稼動)が、大飯原子力発電所には、日産1300m3のMSF(多段フラッシュ法、1973年稼動)、日産2600m3の MED(1976年稼動)および日産2600m3のRO(逆浸透膜法、1989年稼動)が、四国電力の伊方原子力発電所には、日産2000m3のMSF(1975 年稼動)および日産2000m3のRO(1992年稼動)が、また、九州電力の玄海原子力発電所には、日産1000m3のMED(1992年稼動)および日産1000m3のRO(1988 年稼動)が、設置されている。
 中略
現在稼動している淡水化装置の容量は飲料水製造用の淡水化装置に比較すれば容量は小さく、また、稼働率も少ないが、原子力のエネルギーを直接利用している海水淡水化装置として、現原子力発電所内に設置されている条件からの貴重な運転経験などが得られている。

国際的な原子力関連団体であるWorld Nuclear Associationのサイトにある"Nuclear Desalination"という原子力発電+海水淡水化を説明しているページによると、日本の原子力発電所内の海水淡水化処理は世界的に見ても先行事例に当たるそうです。日本原子力産業協会は、このレポートを、日本は原子力の技術においても海水淡水化の技術においても世界的に見て優れているため、双方をうまく組み合わせて海外展開を図っていこう、という趣旨で作成しています。

もう1つの海水淡水化に関する優れたレポートは、JETROが作成した「湾岸協力会議(GCC)加盟国における水事業 (海水淡水化、給水、廃水処理) に関する調査報告書」(2010年1月)。これは限られた地域に関するレポートですが、現在の海水淡水化市場で大きな比重を占める中東地域を扱っているので、事業機会を探るにはよい内容だと思います。国別に詳細な記述がしてあります。また、水ビジネスの専門企業、コンサルティング会社、各国政府の水関連担当者のリストなども巻末にあります。

■海水淡水化と原子力発電とを組み合わせた製品

こうした資料をたどっていて、たまたま見つけたのが、米国の企業が小型原子力発電ユニットと造水ユニットを合わせた製品を商用化したという情報。

First Commercial Nuclear Desalination Reactor

Alternate Energy Holdingsは原子力発電関連の事業を行う子会社を複数持つ企業で、子会社のGreen World Waterが、世界初の商用海水淡水化処理機能付き原子炉を開発したそうです。発電量は650MWと1,100MW。さらには小型の25MWのスタッカブルな(複数の組み合わせが可能な)ユニットも間もなく投入されるとのこと(スタッカブルな原子炉というのはすごいですね)。
ただし、現時点では導入事例がないので、実際にどのようなパフォーマンスを発揮するのかはあと1〜2年しなければわからないと思います。

さらに韓国でもこれとほぼ同じ位置づけの製品を開発しています。上記の"Nuclear Desalination"というページにあった記述です。

South Korea has developed a small nuclear reactor design for cogeneration of 90 MWe of electricity and potable water at 40,000 m3/day. The 330 MWt SMART (System integrated Modular Advanced Reactor) reactor (an integral PWR) has a long design life and needs refuelling only every 3 years.

原子力発電としては小規模な90MWの発電能力(コジェネレーション機能)を持ち、1日4万立方メートルの海水淡水化能力がある原子炉だそうです。韓国には330MWのモジュラー型の原子炉があるそうで、これは3年に1度燃料を取り替えればいい設計だとのこと。それを流用した海水淡水化装置ということになります。まだ導入例はなく、こちらのページを見ると、原子力発電プラントとしても事例はないそうです。

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