在宅介護の現場における「香害」問題 ~日用品公害・香害(n)~
前回の記事では、医療・看護・介護の現場における「香害」の問題をお伝えしました。
今回は、在宅介護の現場で生じている問題について、筆者の経験をもとにお伝えします。
筆者の居住する四国に、香害が押し寄せたのは2019年。
翌2020年から、空気の質が激変しました。
入院病棟であれ施設であれ自宅であれ、患者や高齢者は、同じ室内の空気を吸い続けます。健康リスクのある物質が蓄積する事態は避けなければなりません。
空気の質を維持するために、筆者が日常的に行っている作業を列記します。
来訪者が持ち込む移香への対策
看護や介護の従事者は、訪問先での移香を、次の訪問先に持ち込みます。
布団に香料マイクロカプセルや抗菌臭が付着しないよう、「薄手のキルティングの敷きパッド」と「バスタオル」を重ねて敷きます。(バスタオルだけでは、布団カバーも貫通して布団に移香します)
訪問終了後に取り外し、洗濯します。2枚の移香度が異なるときは、分けて洗います。移香が強ければ、数回転します。
居室までの通路にある備品は、ポリ袋などで覆います。
訪問終了後は、外して廃棄します。
来訪中は、脱臭機2台を稼働させます。
来訪後は、窓を開けて換気しながら、掃除機をかけます。ノズルは水拭きして乾かします。一度掃除機を使ったら、袋を取り替えます。その際、掃除機内を乾拭きします。
床やドアや備品は、ぬれ雑巾で拭きます。エアコンのフィルターや電灯の傘は、通常より短いサイクルで掃除します。
壁・天井・分解できない家電・頻繁には洗えないカーテンには移香が残りますが、やむをえないでしょう。
介護施設利用時の対策
病院や施設には、香害の原因となる製品を使用した患者や利用者もいます。同じ空間で過ごせば、非使用者の衣類やバッグに移香します。
そこで、オシャレ着は封印し、移香しにくい綿麻素材のものを新規購入しました。バッグも、お気に入りの皮革製品は使わず、繰り返し洗濯に耐えるデニム地のバッグを、施設利用専用として購入しました。
帰宅後は、居室に入る前に、玄関に近い場所で着替えてもらい、手や髪を清拭します。
移香した衣類やバッグは、居室内へ入れられないので、すぐに洗濯します。
水だけで予洗いした後、お湯または水シャワーで溶いた石けん洗剤を入れて、手動で1回「洗い」、泡立てた後、数回転します。ある程度除去できたら、水だけで一回転します。
通院付き添い時の対策
幸いホームドクターの院内では、移香はありません。
ただし、夜間や休日には、香害製品ユーザーの多い病院に搬送されることがあります。
移香したストレッチャーや点滴用ベッドを使うと、服の背面に強く移香します。そうした事態が何度かありました。帰宅後、移香除去の洗濯中に再搬送になったこともあります。
また、付き添った筆者が、病院前に停まっていたタクシーを利用した際、車内に強烈なベリー臭が充満しており、シートからジーンズに強く移香したことがあります。
そこで、切った段ボールや折ったフリーペーパーをポリ袋に入れ、使い捨て座布団としてバッグに入れています。
介護者に負荷をかける香害
以上のような作業を、来訪の都度、介護サービスを利用する都度、受診する都度、行っています。在宅介護のうえに、香害が負荷となっています。
香害の原因となる製品をお使いの方は、気軽に購入して使っているのかもしれません。
しかし、それに含まれる物質を避けるために、人生の時間を費やして、疲弊しているひとがいるのです。