南海地震に備える(4) 潮位は予測の決め手になるか?
地震予測の方法は、いろいろある。
次に、リストアップしてみる。ただし、PISCO以外については、本を読んだりWebサイトを見たにすぎないので、その内容や精度について、よく分かっているわけではありません(無責任)。
※リストアップ先のリンク規約が不明なので、リンクしてほしくない場合はお知らせください、外します。
言わずと知れた PISCO は、宏観異常での予測での草分け的存在である。大気イオンの変化によって、予測する。
弘原海教授が亡くなられてからなのだろうか。ここのところ、Webサイトの情報が希薄である。投稿は少なく、デッドリンクもある。
私は古くからの市民メンバーであるが、会員ではない。利用するために費用を払うのはやぶさかではないのだが、会則にあるような参加が難しいので、何もできないと申し訳ないから市民メンバーにとどまっている。
e-PISCO
有名どころでは、著名なアマチュア天文家の串田嘉男氏による、電波伝搬モニター観測(串田法)による予測法がある。「地震予報」という 本をまだ読んでいなかったので買ってみた。
串田嘉男著「地震予報」フォローページ
地震の時には地下水位が変化するという言い伝えがあり、これを観測して予測に役立てようという試みがある。
WellWeb
ところが、まぁ、研究というのは、研究すればそれで終わりで、それをいかに表現してパンピーに伝えるかは考えられていないのであって、「最新データ表示」からお住まいの地域に近い井戸のデータを見てみればよい。ときどきコメントがついているが、そのほとんどが「観測機器故障のため欠測」である。これらのデータをパンピーが理解して何か予測できるかといえば?うーん。
耳鳴り予知では、「ふくちゃん」という人が有名である。
地震耳
掲示板などもある。時折見に行くけれど、主宰者の人柄によるものであろう、地震予測の中では珍しい、なごみ系だと思った。
「緊急提言 2011~2015 大地震が再び日本を襲う」というセンセーショナルなタイトルの本がある。著者は「青松倶楽部」というコミュ( ?)を主宰する進村耕喜氏という在野の研究家で、衛星画像や宏観異常から独自の手法を見出して総合的に予測しているらしい。
高知大学の気象情報を使っているようなのだが、経験値のないパンピーが見ても、これらの雲の状態から何か予測するのは無理である。
さいきん、国土地理院の設置した電子基準点のデータをもとにした地震予測があると知った。測量学の研究者である村井俊治氏によるもので、地震予測メールを配信しているらしい。
JESEA(地震科学探査機構)
私は基本的にカードをほとんど使わない現金主義なので、読者登録はしていないから、その内容は分からない。
ハザードラボというのもあるらしい。オリックス生命保険が提供しているようだ。
地震予知は24時間体制での研究になるため、仕事の傍らにできるものではない。主催者は、その研究ひとつに入れ込んだ生活をするしかない 。
そのため、情報を配信する代わりに会費を徴収して、費用をねん出しているようだ。
主だった研究家に会費を払い、その情報をトータルに検証して公開する人がいないから(いるのか?)、点は点のままである。
かといって、行政が、その役割を果たすわけにもいかないだろう。情報管理のリスクが少しでもあるなら、在野の意味がなくなってしまうと思う 。私はときどき見るだけなのでよく知らないのだが、2ちゃんねるあたりに何かまとめ情報がありそうな気もする。
では、公の情報は、どうか。
南海地震の被害想定が大きい高知県は、なんと自治体が、宏観異常情報の収集に乗り出した。
高知県 危機管理部 南海地震対策課「宏観異常現象について」
が、現在のところ、情報が集まっている様子ではない。
高知新聞刊 「南海地震は予知できる 地震が残した証拠品」という本がある。
昭和南海地震を経験した漁師たち148の証言を、在野の研究家である中村不二夫氏が聞き取り調査してまとめたものである。
これを読むと、昭和南海地震の際、明らかにそれと分かる前兆現象があったことが分かる。
地震が起こる3~4日前から潮のくるいがあり、室戸市室津では、地震前夜に、大きく潮が引いていたという証言があるのだ。(証言12。港の中は 潮が引いて、カラカラ状態になっていた。船が近くに寄らないので、降りて船を押した。荷物を揚げるのに歩いて行けるぐらいであった。)
中土佐町 矢井賀では、「証言96。地震が起きる三時間前、港は干し上がっていた」
いつか地震が発生することは明らかなのであって、規模も、ほぼ予測されている。
問題は「いつ起きるか」である。
地震の予兆をとらえる「間接的な」予測法は心がまえや準備を促すが、この漁師たちの証言にある現象は、予兆ではなく、地震の始まりの現象そのものともいえる「直接的な」ものであって、ピンポイントでの予測に役立つに違いない。
地震予知研究に多額の費用を投じることも学術的な意味では重要だが、むしろ海に経験値の深い漁師たちに一人一台のタブレットを渡し(えー、そこはもちろん Surface 2 ということで)、できるだけ毎日1回の報告をしてもらい (もちろん、作業していただくには、少なくない助成金を出す必要があると思う) 、また、定点観測カメ ラを設置して海を映し、それらの情報をそのまま公開して、判断は一般市民の自己責任とするほうが、実現可能性はさておいて、減災にはつながるような気さえする。
潮位については、気象庁の「潮位観測情報」を一日二回チェックする方法がある。(同じ室戸市でも、潮の状態は異なっていたようで、筆者に土地勘がないので情報として使えるのかどうかは分からないけれども)
それ以外の沿岸観測情報をまとめたポータルサイトも参考になるかもしれない。
国土交通省四国地方整備局港湾空港部
同書の中に、「地震前の暖気」という項がある。
「南海地震が起きる数日前から異常に暑かったという証言が多い」という。
宝永、安政南海地震時の古文書でも同様だそうだ。
中村不二夫氏は、南海トラフ周辺には蓄積されている大量のメタンハイドレートのメタンが地殻変動により放出され温室効果をもたらしたのでは ないかと書いている。
この暖気云々は、今夏の暑さを差し引いても、四万十で国内最高気温を更新する41.0度を記録したことを考えると(過去の熊谷市と 多治見市の方が高温という説もあるようだが)、じつに、いや~んな、証言である。
以前 mixi の宏観異常コミュのほうに投稿したのだが、私の事務所の駐車場には、なんと、ツクシが顔を出した(10月27日撮影)。
この地に10数年住んでいるが、こんなことは初めてである。例年なら、3月上旬に頭を出す。(2011/3/11朝の投稿参照。この記事は予約投稿で、撮影は3月頭)
もっとも、この秋のツクシは、その後、寒くなったので、顔を出したものの、伸びてはいないけれども。
「南海地震は予知できる 地震が残した証拠品」は、足で稼いだ信頼できる内容だと思った。
これだけ、誰でもそれが前兆と分かる証言が集められているのだから、これで減災につなげられなかったなら、それは「人災」になりはしないか。
おそらく、地震は、予知できない、のではない。
前兆現象はあるにもかかわらず、その情報を吸い上げて公開する制度を構築することが、さまざまなしがらみから不可能なだけなのではないか。 我々一般市民は、そのしがらみの犠牲者になりたくなければ、自分の身を守る方法を自らもとめる必要があるのだろう。
なんとも、やりきれない、悲しいことである。