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四国の、春の、お裾分け

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ITエンジニア、というと、洒落たオフィス街で働いているイメージがあるかもしれない。
が、こちらは、四国である。
作業場の外は、数台とめられる駐車場。ごく一部を除き土である。

春になると、ヘビイチゴの葉が埋め尽くし、それに負けじと、胡瓜草が天を目指す。
陽の光を浴びて眠たげな葉のじゅうたんに、星を撒き散らしたような、胡瓜草の、淡い青。
彼らはWin - Winの関係にはなれないらしい。
お互いに意地を張り合うものだから、庭石菖が咲き始めるころには、どちらも、妙に、ひょろりと丈が高くなる。

その谷間から、母子草、ナズナ、ホトケノザ、菜の花が、顔を出す。
通り道だけ踏みつけられて、毎年、草花の並木道が出来る。

先駆けて、つくしが顔を出す。写真は3日前に撮ったものである。

Tsukushi

一昨年は豊作で、数百本生えた。
花粉症に効くというので、卵とじと、ごま油を利かせた佃煮を作ったが、ハカマを取る作業の間、充満していた胞子のにおいに酔ってしまい、二度目を摘むことはなかった。
それに懲りて、昨年は、放置した。
この調子では、今年もかなり生えそうだが、調理する気力なし。

つくしの下の枯れ草は、ネコジャラシである。
近所の子供が、道端に生えていたネコジャラシを1株、面白半分に引き抜いて炎天下に放置した。ぐったりして辛そうだったので、駐車場に植えたところ、ネコジャラシ畑になってしまった。風に揺れる穂が面白いので、放置したら、さらに増えた。そのなれの果てである。

草花にとって良い環境には、そのぶん、雑草も生える。
草引きに困り、以前、数回、除草剤を使ったことがある。
たしかに、雑草は枯れたけれども、草花も枯れた。

草花が枯れると、小鳥も蜂も蝶も遊びに来なくなった。
何より、その枯れた葉の色を、私は、受け入れることができなかった。茶褐色ではある。だが、自然に朽ちるのとは全く異なるRGB。
農家ではない。それで糧を得なければならないわけではない。
シルバー人材センターに除草作業を依頼した。

そうして3年後、草花が、戻ってきた。
小鳥も蜂も蝶も、戻ってきた。
翌年、つくしが、生え始めた。

世界とは、本来、こうなのだ。

ITの仕事をしている。自分だけの都合で、工業製品を使い、電気を使っている。
私は、木や花や鳥に「邪魔なやつ」と思われつつ、手を合わせ、頭を下げながら、自然の片隅に、居候させてもらっている生命にすぎないのである。

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