「技術立国」から、「技術哲学立国」へ、シフトせよ。 (3)「CALSの教訓」
原発震災により、技術立国・日本の方向性が揺らぎ始めている。
我々は何を眼差すべきなのか?
3年前に執筆した、XML設計のあり方について述べたテクストからの抜粋を、4回にわたって掲載する。
「技術立国」から、「技術哲学立国」へ、シフトせよ。 (3)
CALSの教訓
≪昨日からの続き≫ 前回述べたとおり,製品にライフサイクルがあるように,データにもライフサイクルがある。調達・輸送・管理の対象が,物資・人員・設備ではなく,電気や磁気といった信号であっても,その利点と課題は同じである。
CALS自体は,製品ライフサイクルの中でも,物質を供給した後の保守・管理や廃棄・撤去を重視するものであった。だが,実際の経済活動では,利益につながる製造・販売の方が,後工程より重視されがちになっている。その偏ったプライオリティは,安全性や環境面の問題を引き起こしかねない危険性を秘めている。
これはデータ・ライフサイクルについても同じである。XML文書ファイルの生成と活用を,文書やノードの管理と廃棄よりも重視するとどうなるか。作りっぱなしと安易な連携により,使わず,管理できず,削除もできないデータが蓄積され続けることになる。
多くの場合,生成・活用のみ重視した設計作業の方が簡単であり,低コスト短時間で済む。だが,時間を要してでもライフサイクル全体をとらえた構造を考える方が,長期的に見れば賢明である。
我々の子孫の世代に利益をもたらすのは,廃棄を重視し,なお且つ,生成・活用・廃棄の三位一体となった設計である(図6)。XML文書を作成する前の設計段階から,生成だけではなく,廃棄についても考えておくべきである。
図6 廃棄までも重視した,生成・活用・廃棄の三位一体となった設計が必要である。
< (2)「製品ライフサイクルと、データ・ライフサイクル」 >明日に続く。
(2008年執筆、2009年10月10日発行、拙著オンラインブック「XML設計の心得」第4章より抜粋)