【第四回】 企業ツイッター,国内外の活用事例を総まとめ - 販促プロモーション後編 6事例
「企業ツイッター総まとめ」の続き記事。今回は「販促プロモーション系事例」の後編として6事例を紹介したい。
■ 販促プロモーション - 統合型
来店,集客,商品サービス販売などを主目的とする「販促プロモーション」系のうち,TwitterAPIを利用する,BOTを活用するなど,独自のシステム開発を加えたのが統合型だ。国内,海外の順に事例を紹介していこう。
1.東急ハンズ korekamo
東急ハンズがはじめた商品検索サービス「コレカモネット」は,3月末までの経済産業省が主導する実証実験だ。(ただし実験終了後もサービスは継続中で,さらに機能拡張予定もある)
利用するには,該当サービスでユーザー登録をするか,ツイッターアカウントを持つ必要がある。ツイッターからは,@korekamoあてに欲しい商品の特徴などをツイートだけで,東急ハンズおよび無印良品の商品をデータベース(対象商品数は100万以上)から最も適当と自動選出された商品が一つだけ選ばれ,「探しているのはきっとこれかも」「ちょっと自信ないかも」などキャラクターの話し言葉を交えてurlが送付,それをクリックすると商品名と紹介,在庫店舗,在庫状況が閲覧できるという仕組みだ。
参考まで,このコレカモのバックエンド・システムをご担当者の確認したところ,「専用サーバに情報提供各社(現時点では東急ハンズと良品計画)から商品マスタデータ、在庫データ等を送信する形になっており,サーバ側では受信したデータをDBに取り込み、情報提供に利用している」とのことだ。
商品選定の精度は高いとはいえないが,「これかも」というあいまいなブランディングがその点をユーモラスにカバーしている。紹介される商品を見ていると次のような感じだ。
■人気の回答は こちら
■最新の回答は こちら
特に人気回答には実に人間味あるものが含まれているが,現時点ではすべてBOT(システムによる自動対応)だそうだ。ツイッターで広く話題になったため,約1ヶ月で2万件を超える投稿がある。さらに後述Besybuyのように人力も加えて対応すれば,効率的な販売促進になる可能性がある。なお,今後は検索データベースに参加する小売業の数を増やすほか、商品の取り置きや配送も受け付けたいとしている。
2.HOME'S HOMES_kun
不動産・住宅情報ポータルサイトHOME'Sが運営する,やはり不動産情報の自動推薦サービスだ。自分が興味ある不動産の特徴をツイートすると,HOME'Sで掲載している不動産データベースから最適と思われる情報を一つURLで送信してくれる。
3月2日から22日までの21日間,実験的にフォロー数増加のキャンペーンを行なっていた。賞品は計15名にQUOカード5000円分なので,計75000円だ。それに対して増加数は約300人なので,単純に割り算すると1フォロワーあたり250円だ。(母数が少ないためあくまで参考数値として)コレカモやHome's_kunのように,データベースから自動的に商材を検索して,誘導リンクくつきで返答する仕組みは,人力と組み合わせると面白い販促になる可能性があるためご紹介した。
3.ヤフーショッピング yahoo_shopping
日本最大級の@yahoo_shoppingがはじめた「おねだりキャンペーン!」が面白い。三月最終週という期間限定で,ヤフーショッピング内の商品をおねだりツイートすると,毎日一件,最もすばらしい「おねだりキング」が選ばれ,その商品がプレゼントされるという企画だ。
参考まで,今までのおねだり一覧は こちら。
高級チェア8.5万円,結構指輪9.8万円,液晶テレビ10.4万円,電子レンジ9.8万円,MAC8.5万円,自転車6.4万円,カメラ8.4万円,家具セット6.5万円,MAC Book9.5万円と,どうもご予算は1日10万円を限度にしているようだ。
そして東急ハンズもそうだが,このキャンペーンも一日延長され,最終日の4/1はなんと10品がプレゼントされるとのこと。ちなみにこの間のフォロワー数の伸びは次のチャートになる。
ちなみに@yahoo_shoppingのような「ツイッターおすすめアカウント」となっていた数十万人のフォロワーがいるアカウントは,ディフォルト値がオフとなったため新規登録が自動的に増えなくなり,減少傾向にあるものがほとんどだ。キャンペーン前は一日平均63アカウント減少していたものが,キャンペーン期間は一日あたり85名増加となっている。単純計算するとキャンペーンによるフォロワー増加効果は約1000人,その間の賞金総額は77.8万円なので,1フォロワーあたりのコストは780円となっている。
4.ツイ割 twiwari_jp
ツイッター利用者に対する特別割引をする店舗が増えてきたが,それらの店舗向けの無料ポータルサービスがツイ割りだ。店舗から見た利用方法は簡単。まず店舗情報をツイ割ベージに登録し,その上で割引ツイートにハッシュタグ #twiwari をつけるだけだ。
店舗からすると,無料である上に自社フォロワー以外の閲覧者(ツイ割フォロワーは現在約5200人)への露出が期待できる,店舗情報も同時にツイートと掲載されるなどメリットが多い。
めざましテレビで放映されたため,一気に知名度が上がり,登録店舗数も増加した。現在は約1500件が登録しており,そのうち7割は飲食店だ。ツイ割を運営している株式会社ザクラ(ロゴは漢字のサクラに濁点!)では,今後さまざまな機能拡張やビジネスモデルを計画している。そのあたりは次週に予定しているザクラ社長インタビュー記事で詳しく記す予定だ。
5.マピオン cuponchan
「新宿なう」など地名を含んだ「●●なう」もしくは位置情報つきツイートを送信すると,自動的にその近辺のクーポン情報がリプライされてくるBOTだ。
クーポンの情報元はグルメ情報サイト「FooMoo」から取得している。ユーザーの現在地をiPhoneからTwitterにツイートできる同社の「なうまびおん」から送信する機能を備えている。もともとインターネット地図情報検索サイトを運用しているマピオンのサービスであり,地図や位置情報とのさらなる連係が予想される。
6.BestBuy twelpforce
最後に紹介するのは従業員15万人と世界最大の家電販売チェーンBestBuyの@twelpforceだ。2009年7月と若いアカウントだが,すでにツイート数は24,000件超,1日平均100ツイートと極めてアクディブであることがわかる。そしてこのアカウントは世界でも類のない,質問するとツイッターを活用する全社員(2100名)が返答する,人力Q&Aアカウントなのだ。
参考まで,BestBuyはこの@twelpforceの前に公式アカウント@bestbuyをスタートされている。立ち上げ当初のツイートでは,ディスカウント情報配信や人材募集などもしており,ツイッター運用をいろいろ試した後に,社員Q&Aというユニークな活用法を見出したと思われる。
興味深いのはそれだけではない。@twelpforceにいかに力を入れていたか,彼等のCMを見れば一目瞭然だ。
社員2200人が生活者の質問にどのように同期をとって返答しているのか,とても気になるところだ。BestBuyのソーシャルメディア・マネージャーであるJohn Bernier氏のインタビューからポイントをピックアップしてみよう。
- 80%準備ができた段階で,@Twelpforceをスタートした
- ソーシャルメディアポリシーを準備したことで、多数の社員を同時に参加する仕組みが短期間で可能となった
- 社員同士,相互に助け合いながらソーシャルメディアのエキスバートに育っていった
- ツールとして活用しているのはConnectTweetだ。ひとつのアカウントを複数社員で運用している
そして質問内容を集約し,質問ごとの回答などをまとめてみることができるサイトも用意されている。
ちなみに,実際にこのQ&Aサイトを中心的に運用しているのは,geeksquad.comというチームだ。彼等は24時間365日,コンピュータや家電,ゲーム機などの修理や導入を行なう専門部隊だ。メンバーは主に店舗に所属する専門知識や経験を持った優秀な社員とのことだ。
この世界でも類を見ない本格的な運用サイトの実態については,ループス副社長の福田が,システムやソーシャルメディア・ポリシーも含めて詳細なレポートをあげているので,ぜひ参考にしてほしい。
・ ベストバイの Twitter 活用術 ~ (前編) (後編)
以上,「販促プロモーション」後編として,このカテゴリーに属する6つの国内外事例を紹介した。
次回は「潜在顧客サービス」に分類される事例をご紹介したい。
なお,これらの事例はすべて下記のツイッターリストにまとめてある。常に事例は更新・追加しており,フォローいただければ最新の活用事例ツイートを閲覧できる。
・ @toru_saito/twitter-best-practice
【企業ツイッター,国内外の成功事例を総まとめシリーズ】
・ 第一回 「企業ツイッター,国内外の活用事例を総まとめ」 (3/24)
・ 第二回 「企業ツイッター,国内外の活用事例を総まとめ - 対話エンゲージメント13事例」 (3/26)
・ 第三回 「企業ツイッター,国内外の活用事例を総まとめ - 販促プロモーション前編 11事例」 (4/2)
・ 第四回 「企業ツイッター,国内外の活用事例を総まとめ - 販促プロモーション後編 6事例」 (4/3)
・ 第五回 「企業ツイッター,国内外の活用事例を総まとめ - 潜在顧客サービス 9事例」 (4/8)
・ 第六回 「企業ツイッター,国内外の活用事例を総まとめ - コラボーレーション 7事例」 (4/9)
・ 最終回 「企業ツイッター,国内外の活用事例を総まとめ - 資料ダウンロードのご案内」 (4/12)
【追記】
この表内では漏れている素晴らしい事例があれば,私のツイッター・アカウント(@toru_saito)あてにツイートしていただければ幸いです。個別に検討し,特徴のある活用事例は適時スライドに追加させていただきたく思います。また当シリーズ最終回では,SlideshareおよびPDFにて事例集を配布する予定です。
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【参考カテゴリー】
・ 「Twitter」 カテゴリー記事集
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