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【第六回】 企業ツイッター,国内外の活用事例を総まとめ - コラボーレーション 7事例

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前エントリー「企業ツイッター総まとめ」の続き。「コラボレーション系事例」を,対話・貢献(受動)型,探索・支援(能動)型,統合型のステップで説明したい。

Chart5
 
 
■ コラボレーション - 対話・貢献型


コラボレーションはその目的によってさまざまな部門が担当する。例えば生活者の声を商品開発に取り入れるアプローチ(アイディア募集やアンケートなど)では商品企画部門が,試作品のテストなどをユーザーに依頼するアプローチでは製造ないし品質管理部門が担当するなど。まずベーシックな対話・貢献型から。
  

1.Pepsi pepsi

「Pepsiを消費者にとってもっと身近なものにするために,私たちはブランドに人間らしさを与えようとしています」 Pepsiブランドマネージャー,アナマリナ・イラザバル氏が語るツイッター活用法は興味深い。この言葉通り,Pepsiは宣伝媒体としてではなく,生活者とのコミュニケーションのためにツイッターを活用している。

Pepsi

彼らは特に生活者に対する質問(アンケート)を頻繁に行い,商品やプロモーション企画に顧客の声を取り入れている。昨年10月の調査では60%を個別顧客との対話に費やし,5%程度は生活者への質問(アンケート)を行なっている。またツイートのモニタリングも積極的に行なっており,特に自社ブランドが含まれるツイートのネガポジ・チェックに着目しているとのことだ。

さらに公式アカウント以外でも,Pepsiでは自社社員のソーシャルメディア参加を積極的に勧めている。その目的はブランド宣伝のための交流ではなく,新しいウェブチャネルについて学ぶことにあるという。慧眼だ。さらに詳しくは twitter101 を。

 
2.MyStarbucksIdea
 MyStarbucksIdea

Starbucksはソーシャルメディア活用を積極的に推進していることで有名だ。そのアプローチの一つが顧客の声を商品やサービスに反映するために独自コミュニティ,My STARBUCKS IDEAだ。そこをホームペースとして,ツイッター・アカウントでも積極的に生活者との交流を行なっている。

Mystarbucksidea

ちなみに同様の顧客アイディア・コミュニティで著名なものに Dell IdeaStorm がある。(ただしツイッター活用は顧客から投稿された最新アイディアを流すにとどまっているようだ) いずれもSalesforceをベースにシステム構築されたものだ。


3.Seesmic seesmic

Seesmicはツイッターの専用クライアントを提供しているベンチャー企業だ。彼らが自社製品のアルファ・テスト(本来は専門技術者が社内で秘密裏に行なうタイプのテスト)に無償協力してくれるユーザーをツイッター上で募集したところ,なんと数千人が応募。しかも彼らはバグ報告を一般的な定型フォーマットではなく,公開ツイートで投稿してもらうというオープンなテスト方式をとったのだ。

Seesmic

その結果,ユーザーはバグ発見のみならず,バグ修正の優先度や商品改善のアイディアまで積極的にフィードバックし始め,開発者との交流を経て,熱心なファンへと変わっていった。ツイッターによる利用者参加型商品開発の典型的なパターンと言えるだろう。
 

4.IBM IBM_JAPAN

IBMは,そのお堅いイメージと異なり,最も積極的にツイッターを活用している会社の一つだ。ただしIBMブランドを代表する公式アカウントはなく,その活用は各支社やチーム,社員にゆだねられている点が最大の特徴だ。(そのため画像は日本IBMの公式アカウントで代用しています)

Ibm

特に積極活用しているのは社員同士のコミュニケーションで,全社をあわせると数千人がツイッター交流に参加している。また対話の話は社外にも開放しており,提携先,顧客,メーカー,メディア,アナリストなどあらゆる組織や個人との会話にツイッターは活用されている。そしてそのほとんどは職務に関係するものだ。

IBMのソーシャルメディア・ガイドラインでは,社員全員がオープンかつ積極的にソーシャルメディアを利用するよう定められており,ツイッター活用もボトムアップで自然と普及したとのことだ。

IBMはこのようなツイッターの社内活用に満足しているようだ。特にツイッターは時間の節約になり,社員と顧客との関係を緊密化し,結果的にIBMの行動をより効果的にしている。全社ソーシャルメディア・コミュニケーションの責任者であるアダム・クリステンセン氏によると,ツイッター最大の貢献は「クラウドソーシング効果」だとのこと。IBMは各分野の専門家の集まりであり,個々の社員間が緊密な情報共有をすることでIBM全体がさらにクレバーや知識集合体になったのだ。
 
 
■ コラボーレーション - 探索・支援型

先進的な企業が採用しはじめた,自らユーザーを検索し,話しかける手法。コラボレーション分野でも積極的に人材発掘などに活用するケースが出てきている。


5.RedMonk
 RedMonk

RedMonkは,コンサルティング企業,IT企業の未来形として私が大いに注目しているコンサルティング会社だ。彼らの専門分野は世界初の「オープンソース」に特化した調査会社だ。つまりオープンソースま波にどう対応すべきか,どう収益を上げられるかを大企業相手にコンサルティングする専門家集団だ。

彼らの顧客にはそうそうたるIT企業が並ぶ。パトロン(個別契約のお得意様)としてAdobe,IBM,Microsoft,SAP,Sun。続くスポン サー(年間1万ドルのコンサル契約先)にはCISCO,DELL,eclipse,hp,intuit,loglogic,redhat。さらに年間5千 ドル契約でもIT企業50社が名を連ねている。

Redmonk

そして,その調査・アドバイス業務をこなしているのは,なんと2つの大陸,3ヶ国に散らばるわずか4名のパートナーなのだ。彼らが実際に顔をあわせることはほとんどない。その業務のほとんどは,彼ら個人のツイッター・アカウントを通じて行なわれているのだ。

社内外の情報交流から求人まで彼らのツイッターの活用範囲は幅広いが,特に注目すべきは,彼らの本業であるリサーチにツイッターを活用している点だ。現在レッドモンクの社員は,情報を検索する回数もグーグルよりツイッターが多くなってきているという。

Redmonk2

グーグルの検索結果は新旧入り混じっていること,SEO技術が高度化していることなどで,彼らが欲しい生きた情報を入手しにくくなっているのも理由のひとつだが,最大のポイントは「ツイッターがアイディア,思想,独断と偏見の大市場」であるところにあるという。
 
「ツイッターでは皆が様々なアイディアを短い言葉ではっきりと語る。大小・種類を問わず,あらゆる企業にとって挑戦とチャンスの宝庫だ」とRedmonk創業者のガバナーは語っている。もちろん彼らはそれぞれが自分自身と信頼関係でつながった多くのフォロワーを持ち,質問・対話しあうことでグーグルでは見つけ出せない最新の知恵もツイッターからひき出している。

SNSの草分けであるFriendstarは,デジタル情報ではカバーできない人の知識を収集するツールという意味で,一部の先駆者から「新しいGoogle」と呼ばれていた。現在においてはツイッターこそまさにその呼称にふさわしい存在となりつつあると筆者は感じている。
 
 
■ コラボレーション - 統合型

さらに本格的なツイッター利用のため に,TwitterAPIを利用し集約したサイト等を構築するなどの高度なアプローチがこのカテゴリーだ。 

6.EC studio EC studio  

EC Studioは,ヒット書籍 「iPhoneとツイッターで会社は儲かる」 で著名なWEB制作会社だ。ポイントは全社員33名にiPhoneを配布し,ツイッターを活用するよう推進している点だ。ホームページ上に社員ツイッターが集約されているので統合型に分類したが,ツイッターは一般的な社内外交流が主たる用途だ。

Ecstudio


ツイッター導入のメリットとして書籍であげてあるのは,(1)ベクトルがそろう,ガス抜き効果がある,社員のホンネがわかるなどの社内交流上のメリット (2)商談がスムーズに進む,採用のミスマッチが減るなどの社外交流上のメリットだ。iPhoneやツイッターをまずは全社で体験したいという企業向きの導入事例として紹介したい。
 
   

7.StockTwits StockTwits

StockTwitsは,ツイッターをベースにした金融情報(つまり金儲け情報)の交流コミュニティだ。メンバーになっているのは,金融危機をも乗り越えて積極的に株式や外為に投資している金融系プロフェッショナルが中心となっている。

Stocktwits

ヘッジファンドのマネージャー出身で創業者の一人,リンドン氏はStockTwitsの狙いを語る。「金融危機までの銘柄推薦では,世界的な巨大証券とその専属アナリストの影響力が圧倒的だった。これからは,純粋に投資実績に基づき,透明性の高い基準によって評価された凄腕投資家にフォーカスが集まり,彼らの発言が重みを持つはずだ。」

Stocktwits2

実際にStockTwitsコミュニティは分析レポートを投稿する数百人のメンバーと,それをフォローする数千名の一般投資家から構成されており,分析が的中すればするほどフォロワーが増えるようになっている。つまり参加者全員のソーシャル・フィルタリングにより,優秀なトレーダーが淘汰されていく仕組みだ。これも一種のクラウドソーシングと言えよう。

まだ収益化に結びついていないが,このStockTwitsは2人の創業者のみで運用されていることに注目したい。通常だと会員数増加にしたがって負担となるサーバー運用コストもほぼゼロである。このStockTwitsの試みがビジネスとして成功すれば,さまざまな分野での特化型オンライン・コミュニティがツイッターベースで構築されていくことが予想される。実に興味深いプロジェクトだ。

 
以上,「コラボレーション」のカテゴリーに属する7つの国内外事例を紹介した。

なお,これらの事例はすべて下記のツイッターリストにまとめてある。常に事例は更新・追加しており,フォローいただければ最新の活用事例ツイートを閲覧できる。

@toru_saito/twitter-best-practice

 
【追記】 
これで一連の事例紹介は完結です。来週月曜日までに,当内容をまとめたプレゼンテーション用のパワーポイントと,このブログ記事をまとめた配布用PDFを作成し,ダウンロードできるようにいたします。



【企業ツイッター,国内外の成功事例を総まとめシリーズ】

・ 第一回 「企業ツイッター,国内外の活用事例を総まとめ」 (3/24)   
・ 第二回 「企業ツイッター,国内外の活用事例を総まとめ - 対話エンゲージメント13事例」 (3/26)   
・ 第三回 「企業ツイッター,国内外の活用事例を総まとめ - 販促プロモーション前編 11事例」 (4/2)   
・ 第四回 「企業ツイッター,国内外の活用事例を総まとめ - 販促プロモーション後編 6事例」 (4/3)   
・ 第五回 「企業ツイッター,国内外の活用事例を総まとめ - 潜在顧客サービス 9事例」 (4/8)   
・ 第六回 「企業ツイッター,国内外の活用事例を総まとめ - コラボーレーション 7事例」 (4/9)   
・ 最終回 「企業ツイッター,国内外の活用事例を総まとめ - 資料ダウンロードのご案内」 (4/12)   
  

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【参考カテゴリー】

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