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ポスドク問題についての前向きな提言、理系の観点からの社会全体についての気づきや意見、会社、社会、国に過度に依存しない生き方について綴ります。

少女は夜を綴らない、綴れない?

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前作の横溝賞受賞作ともなった「虹を待つ彼女」から約9か月、

逸木裕先生の新刊「少女を夜を綴らない」をこの7月に手に取ることができました。

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荒筋は先生のブログをご参照ください。

前作も大変読み応えのある内容で(書評をご参照ください)、本作もタイトルからどのような内容であるかを推測しておりましたが、タイトルに小さく「Girl never spells the Night」という英訳があり、日本語タイトルとはまた違うニュアンスで、前作で散々意識されられました冠詞の「A」ではなく、「the」が使われている点が、もしかしたら、内容に大きく関わるのではと読む前から想像を膨らませておりました。

といいますのも、「the」を使っている以上、特定の「夜」を綴らない、多数の「夜」は綴っているのに、という意味合いが込められているのではと考えたからです。

本に限らずブログもそうですが、どのようなタイトルを付けるかは永遠の課題であり、「もしドラ」も当初は全く異なるタイトルが付く予定だったとの講演を以前にお聞きしましたが、きっとそのままでは全然売れなかったであろうと、出版界の素人でも容易に想像がつくようなタイトルでした。

最初の2ページでしっかり惹きつけられ、その土俵の中で最後まで一挙に読み進めることができました。
ある意味、論文のAbstractにも相当する一コマのようにも思えます。

細かく具体的な描写、極端な描写、中学生イジメの描写、現実世界でのやりといにおいても参考になりそうな口論中の鋭い切り替えしの数々、ハラハラドキドキしながらの着想までの思考プロセス、静と動の繰り返し、複雑な家庭環境に置かれている子供たちの心理と境遇と現実との対比、関係のないもの・遠くに存在するもの同士を結びつける表現、ストーリーが展開していく中での先読み、前回同様の完全な想定外の結末と盛り沢山ですね。

前作中に登場した4つのゲームは残念ながら作品中での架空のゲームのようですが、本作で登場する3つのボードゲーム・カードゲームは調べてみるとどれも実在しているようで、作品中に少々のゲーム内容の説明があり、中には1人で楽しめるものや難易度のバージョンを選べる(難しくできる)ものもあるようで、是非やってみたいなと。将棋も含めれば4つでしょうか。作品中にも表現がありますが、ゲームというのはある意味、人生の縮図のような面があるかと。

時として、子供にとってのゲームの是非を問うような話題が登場しますが、個人的には推奨派で、ただ一つ守ることがあるとすれば、テレビゲームの類では、決してリセットをしないことですね。例えば、シューティングゲームで最初にイキナリやられてしまうような、不利な境遇から始まったになったとしても、最後までやりつづけるというのが肝要かなと。また、ゲームには必ずルールがあるのでそのルール(制約条件)の中で、最適に動くというフットワークの練習にもなるかと。ドラクエで、街の人に話を聞いたり、くまなく洞窟をさまよって宝を探すなんて行為も時として現実世界で必要ですね。

「神経衰弱・衰弱」も実際にやってみると中々面白いのではと(まだ試しておりませんが)。このエピソードの中で、確率が登場し、個人的には途中式を1つかましますが、検算もしてみました。3つ目の確率の数字は、少年が少々カマをかけているとも受け取られるかもしれません。

主人公は中学生ではありますが、モノを考えて生きていれば人生は相当豊かになるとも想像に難くない一面もあるかと。

前作との共通点も様々あると思いますが、今回も高い所が登場します。表面的な情報と真相との違いもじっくり味わっていただきたい作品です。

今回も折り目がいっぱいつきましたで、写真を!
「折り目」の意味についてはこちらの「良い本とは」の項目をご参照ください。

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