英語でコーヒータイム(34) ハートフルは意地悪?
最近、日本に行くたびに首をかしげてしまう経験があります。
あちらこちらの看板で「ハートフル」という表現が使われているのです。
ハートフルグループという介護老人保健施設に始まって、日通ハートフルなど企業名にハートフルを使っている例も少なくありません。
また「バリアフリーのハートフルルーム」(東急イン)や「ハートフルレッスン:ソニーのITエンターテイメントセミナー」のように、宣伝広告にハートフルという表現を使っている例も見かけます。
「ビューティーに対してビューティフルがあるのだがら、ハートに対してハートフルでおかしくないはずだ」という理屈は良くわかるのですが、でも何となくしっくり来ない。
そこで調べてみました。
確かに heartful という単語は存在していますが、それは古語で、現代英語では heartfelt という表現の方が一般的になっています。「現代英語においてheatfulは和製英語である」と言っている辞書もありました。
Heartfelt は、「心の底から」「心をこめた」という意味で、そのニュアンスは
heartfelt congratulations (心からのおめでとう)
heartfelt gratitude (こころからの感謝)
heartfelt sympathy (心からのお悔やみ(弔辞の決まり文句))
heartfelt remorse (心の底からの後悔)
と言った用例によく現れています。
Heartfelt の代わりに hearty が使えると解説している辞書もありました。
hearty congratulations という用例を見ると、heartfelt とhearty はどちらを使っても良い(interchangeable)ように思えます。どんな場合でも interchangeable でしょうか?
米国西海岸に住んでいる限り、hearty は、hearty appetite (旺盛な食欲) hearty soup (栄養たっぷりのスープ)のように「元気がある」「元気になる」という意味の用例が主流にように感じます。そしてhearty と heartfelt のどちらを使っても良い場合には heartfelt が使われているというのが実感です。
それはさておいて、なぜ日本に来てこのハートフルが気になるかというと、、、、。
ハートフル(hurtful)は日常よく耳にする単語で、「悪意のある」「相手を傷つけるような」という意味の形容詞です。カタカナでハートフルと書いてしまうと heartful なのか hurtful なのか区別が付かないのです。しかも heartful は和製英語の可能性が高く、私はどうしても hurtful を思い浮かべてしまうがゆえに、この「ハートフルの氾濫」に違和感を感じるというわけです。
Heartful とHurtful とでは意味がまったく逆になってしまいます。「心を込めた善意」を表しているつもりが相手には「相手を傷つけようとする悪意のある」と誤解されたら大変なことになってしまいます。
グローバル化、日常生活の中での英語の利用は良いことです。せっかくそういう気運があるのであれば、誤った用法を覚えないように注意したいものです。