PM2.5や黄砂よりも小さい粒子を、吸い込み続けるということ。日常生活に潜むリスク。 ~日用品公害・香害(n)~

香害による健康問題。その深刻な実態を取り上げるメディアが増えてきた。
多くの場合、体調不良の原因として「香り」に焦点があてられる。だが、問題は合成香料だけではない。
大雑把に分ければ、次のような問題がある。
- 化学物質の問題
- 人工香料
- マイクロカプセル壁材
- 消臭・除菌・抗菌目的の化学物質
- その他の化学物質
- 物性の問題
- 粒子サイズ
- 粒子の形状
- 技術の問題
- 効果長持ち技術(徐放、包摂)
- 悪臭物質制御技術・嗅覚制御技術
香害原因製品には香料が含まれており、体調不良に見舞われた人は、必ず香りを感知する。そのため香料「だけ」が体調不良の原因だと考えがちになる。だが、ひょっとしたら、複合要因かもしれない。
衣類に残るマイクロカプセルが弾け、包まれていた香りが拡がる。大気中には、香料だけでなく砕けたカプセルの残骸である微粒子が漂うことになる。
マイクロカプセルの「親カプセル」は、1μm~30μm(平均30μm)と言われているが、これが弾けて放出される「子カプセル」は、450nm。つまり、ナノメートルのサイズだ(早稲田大学 大河内研究室調べ)。※1
これは、花粉よりも二桁、PM2.5よりも一桁も小さい粒子だ。そして、黄砂よりも小さい。
この子カプセルは、時間経過で、450nmよりもさらに小さくなる可能性がある。プラスチックが日光に晒され海洋を漂ってマイクロプラスチックになるように、海洋や大気中で砕けていく可能性を否定できない。
あたりまえのことだが、粒子サイズが小さいほど、生体組織に入り込みやすい ※2。吸入・摂取・皮膚接触によって、人体に悪影響を及ぼす可能性がある。ナノメートルのレベルの微粒子は肺に到達しやすく、数百ナノメートルからミクロンレベルの微粒子は上気道に留まることが多いとされる。
こうした微粒子を捕捉する技術は、確立されつつある。ところが、追跡する技術はない。大気中に拡散して循環する物質、下水処理場をすり抜けて汽水域へ流出した物質を、追跡することはできない。現時点では、環境中に垂れ流し。いまこの瞬間も、環境中に蓄積し続けている。それらを、我々は呼吸とともに取り込んでしまう。
花粉やPM2.5や黄砂を恐れる人は多い。呼吸器系に悪影響を与えることは広く知られている。環境省も注意喚起をしている。にもかかわらず、それらより小さい日用品の微粒子を恐れる人は限られる。
なぜ、粒子の大きいほうを恐れ、小さいほうのリスクをスルーできるのか。
花粉や黄砂を防ぐため、外出時にマスクをする人がいる。ところが、香害の微粒子を避ける目的で、マスクを使う人は少ない。むしろ、香りを防ごうとしてマスクをしている人が奇異の目で見られ、許可なく撮影されてSNS上で晒されるという事案が繰り返されている。
また、花粉や黄砂の付着を危惧して、洗濯物は部屋干しにし、やむなく外に干した場合は取り込む時にはたく人が、香害原因製品で洗濯して、マイクロカプセルを衣類に付着させている。
矛盾した行動ではないだろうか。
大気中に舞う微粒子は、万人にとってリスクとなりうる。黄砂などの微細粒子が気道に炎症を起こす、この炎症は、喘息やアレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎の「既往がない」人にも生じる可能性がある。
いま健康被害が生じていない人にとっても、避けて通れない重大な問題のはずだ。
親マイクロカプセルから飛び出す、子カプセル。それがいかに小さいか、イメージしやすくするために、めぼしい粒子のサイズをリストアップしてみた。大きい順に並べている。
見ての通り、子カプセルは、健康リスクがいわれるディーゼルエキゾースト(排ガス粉塵)よりも小さい。そして、居住地や通勤路を選べば、ある程度は避けることが可能なディーゼルエキゾーストとは異なり、マイクロカプセルの微粒子は避けようがない。その残骸はいたるところに漂っている。
微小粒子・超微小粒子・ナノ粒子状物質のサイズ(粒子が大きい順)
花粉: 10μm~100μm(多くは10~30μm)※3
香料マイクロカプセル(破裂前の親カプセル): 1μm~30μm(平均30μm)
黄砂:約4μm(0.5μm~10μm)
ボツリヌス菌: 長さ3~7μm、幅0.3~0.7μm。 ※4
PM2.5:2.5µm以下
ピロリ菌:長さ 2.5μm~5.0μm
緑膿菌 : 長さ1.5~3μm、幅0.5~1μm。※4
コレラ菌: 長さ1.5~3μm、幅0.5~0.8μm。※4
大腸菌:長さ1μm~3μm(最大4μm)、幅0.5μm~1μm。平均値は2μm前後
乳酸桿菌やビフィズス菌: 長さ1μm~10μm(多くは1μm~2μm)※3
サルモネラ菌: 長さ2~5μm、幅0.7μm~1.5μm
結核菌: 長さ2μm~4μm、幅0.2μm~0.3μm
肺炎球菌: 直径0.5μm~1.25μm。 ※4
strong>マイコプラズマ:100~500nm(0.1~0.5μm)
ディーゼルエキゾースト:20~500nm(多くは、<1μm)
インクジェットプリンタのインク: 50~200nm
香料マイクロカプセルの子カプセル:450nm(0.45μm)
天然痘ウイルス:直径200~300nm、長さ250~350nm。※4
新型コロナウィルス:約100nm~200nm
インフルエンザウィルス:80nm~120nm
鳥インフルエンザウィルス:80~120nm(平均100nm)
エボラウイルス: 直径80nm、長さ970~14,000nm(糸状)。 ※4
アスベスト・アモサイト(茶石綿):直径60~350nm(繊維長変動大) ※5
狂犬病ウイルス:直径60~100nm、長さ180nm。 ※4
アスベスト・クロシドライト(青石綿):直径40~150nm ※5
アスベスト・クリソタイル(白石綿):直径20~80nm ※5
ノロウイルス:直径27nm~40nm。 ※4

※1「工業用途でのナノマテリアルの定義」は、次の通り。
・粒子の1つ以上の外形寸法が、1nm〜100nm。
・粒子が、細長い形状では、2つの外形寸法が1nmより小さく、他が100nmより大きい。
・粒子が板状の形状では、1つの外形寸法が1nmより小さく、他が100nmより大きい。
子カプセルのサイズは、この定義には該当しないため、リスクがあるにもかかわらず、今後何らかの規制の対象になるとは考えにくい。
※2 微粒子は、粒子のサイズ、素材、表面の反応性などによって、リスクの大きさが異なる。一般的に、表面積が大きければ、接触面が細胞膜の破壊を促す可能性がある。不溶性のものは、体内に残るため、長期的なリスクも考えられる。ナノ粒子では、炎症、臓器への蓄積、発がん、心血管障害などを引き起こす可能性が考えられる。
※3 種類により変動。
※4 サイズは平均値。形状により変動。
※5 アスベストなど環境汚染物質の吸入によって生じる疾患については、MSDマニュアル プロフェッショナル版の「環境性肺疾患の概要」に詳しい。
執筆の効率化に、AIを利用しています。情報収集をCopilotに、部分的な校正をGrokに依頼しました。
イラストは、Adobe Fireflyで描いています。FireflyやCopilotで描いたイラストは、こちら。