英語でコーヒータイム(43):使役動詞で英語らしい表現をマスター
「一念発起して、英語を勉強することにしたよ。好きなものから取り掛かると言いというアドバイスだったのでまずは星占いの解読から試してみたんだけど」と言う内容で飛び込んで来たメール。
う~ん、星占いの英文は、曖昧で含みを持たせた内容だし、ポエム的表現が使われているので、初心者向きではないのだけれどと思いながらも、興味のあるトピックなら英語アレルギーも緩和されると進言したのは私自身であることに責任を感じた次第。
訳してみたけどピンと来ないというので、躓いた原因を分析してみました。
まずは、題材となった星占い:
Watch for the magic to hit.
An approaching astrological kite configuration develops just when you weren't expecting it.
A kite can open doors, help money flow, and put a sparkle in your smile.
The focus is particularly strong on Thursday.
Make sure you have most of your work and other obligations taken care of, so that you can Enjoy a surprise meeting or an informal last-minute invitation!
こちらは当人による翻訳:
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Watch for the magic to hit.
※命令形
魔法(願い?)を当てる(叶える?)ため監視しなさい。
An approaching astrological kite configuration develops just when you weren't expecting it,
あなたがそれを期待していない時、近づく占星術の「凧」の設定がちょうど展開します。
A kite can open doors, help money flow, and put a sparkle in your smile.
「凧」は、扉を開くことができ、「凧」は、金銭を助けることができ、「凧」は、ある輝きを置くことができ
The focus is particularly strong on Thursday.
焦点(中心・狙い)は、特に木曜日が強いです。
Make sure you have most of your work and other obligations taken care of,
※命令形
あなたの仕事やその他の恩恵(望むものら)等を持っているか注意した確認をしなさい。
so that you can Enjoy a surprise meeting or an informal last-minute invitation!
あなたが楽しめるビックリの集まりや非公式の裏ワザ的招待のために
意訳:
願いを叶えるために注意深くしましょう。
あなたがそれを期待していない時、近づく占星術の「運命(凧)」の設定がちょうど展開します。
「運命」は、扉を開くことができ、「運命」は、金銭を助けることができ、
「運命」は、ある輝きを置くことができ
焦点(中心・狙い)は、特に木曜日(17日)が強いです。
あなたが楽しめるビックリの集まりや非公式の裏ワザ的招待のために
あなたの仕事やその他の恩恵(望むものら)等を持っているかを注意した確認をしなさい。
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最初は直訳で十分です。文意を正しく理解するためには、まず文の構造をしっかりと把握することが必要です。この格闘の過程を見ると、最後の文でhaveが使役動詞であることに気が付かなかったというのがポイントです。本人はso thatを「その為に」と解釈したことも間違いの原因だったと評価していますが、so thatを目的と解釈しても結果と解釈して大局には影響しません。(informalの裏ワザ的、obligationの恩恵、のようにこじつけや誤訳があっても、それは構文を正しく理解すればおのずとその誤りに気が付くのではないかという期待の元に、本題から脱線するので、ここではあえて深堀しないことにします。)
「どうしてこのhaveが使役動詞だと見破れたの?」
学生向けの基礎講座で必ず説明することにしていますが、文の構造を理解するためには、まず文中の動詞を見つけるのが手っ取り早い方法です。
今回の例文の場合、一つの文の中にhaveの他にもう一つ動詞が存在していることがヒントになります。そしてメインのS+Vはどれか、サブのS+Vが存在しているのかを判断するのです。
Make sure you have most of your work and other obligations taken care of,
この節には、Make、have、takenの3つが動詞です。Workやcareも一見、動詞に見えますがworkの前にyourがあるのでこれは名詞であるとわかりますし、careはtake care ofという「熟語」に気が付けばこのcareも名詞であることがわかります。動詞らしき単語を見つけたら、必ずのその前後の単語もチェックして、本当に動詞なのかを確認すると良いでしょう。
さて本題に戻りますが、動詞が見つかったらそれに対応する動作の主体を探してみましょう。
まずMakeですが、①文頭にある、②make sureという熟語になっていることから、命令形になっていることがわかります。Make sure以下の文を確実にする、必ずやるという意味です。それではmake sureの目的語になっているyou以下の文を見てみましょう。
単純に考えると、You have most of your work and other obligation: あなたはあなたの仕事とその他の義務の大半を持っています。(あなたにはあなたの仕事とその他の義務の大半があります。)という訳になりますが、「あなたにはあなたの仕事の大半とその他の義務があります」って日本語になってないな、意味が通じないなという感触が大事です。不自然感があるということは、どこかおかしいという可能性があるからです。この感触は大切にし、さらなる分析を行ってから再度、考えてみることにしましょう。
そして3つ目のtaken。過去分詞になっているので、①受け身形、②完了形の可能性があるということも念頭に置きながら動作の主体を探します。もし動作の主体がyouであるなら、前半のyou haveに合わせてyou are taken care ofとなりareが必要なので、この仮説は没。となると残りはmost of your work and other obligations。もしこれが主語だとするとMost of your work and other obligations are taken care ofと解釈できます。意味も「あなたの仕事と他の義務の大半は片付けられている」と意味が通ります。
もしmost of your work and other obligationがtaken care ofに紐づくものだとすると今度は逆がhaveが浮いてします。それがヒントになります。
「持つ」という意味ではない動詞のhaveは何者?
と思ったら、使役動詞としてのhaveを思い出して欲しいのです。
「Most of your work and other obligations がtaken care ofになるようにした」という構文です。
裏返すとyou have yourself take care of most of your wok and other obligationsをすっきりさせた形です。Take careするのはyou自身。Most of your work and other obligationは(あなた自身によって)taken care of されたわけです。
「Haveが使役動詞なのはわかったけど、なぜlet、 make、 getじゃなくてhaveなの?」という追い打ちの質問が2通目のメールに書かれていました。
Letには「~させてあげる」のような、allowと同様の許可のニュアンスを含んでいます。
you let most of your work and other obligations taken care of.
「(誰かに)あなたの仕事や他の義務の大半をやらせてあげなさい」という意味になります。
you let (someone) take care of most of your work and other obligations という構文の受け身形です。
文法的には間違っていませんし、文脈によってはこの使い方は適切です。(インターンや研修生にやらせてあげる、みたいな。)
けれども今回の文脈では自分自身で仕事を片付けておけばという条件があるので、許可のニュアンスを含む(他人に仕事をやらせてあげる)Letではロジックが合わなくなってしまいます。
makeを使った場合、許可のニュアンスはなく、その代わりに強制のニュアンスがあります。
you make most of your work and other obligations taken care of.
you make yourself take care of most of your work and other obligations.
使役動詞としてのmakeはhaveとほぼ同じ使い方ができますので、haveをmakeに置き換えることは可能ですが、haveよりも強制するニュアンスが強くなるので今回の例ではちょっと不自然な感じが残ります。締め切りまでに仕事や宿題を片付けるためにどうしてもやらなければならないというような意味合いを出したい場合には、makeが適しているでしょう。
一方get は、口語的です。makeのような強制のニュアンスがない中立/無機質な使役動詞としてはhaveと共通しますが、使役動詞としての力(機能?)は弱く、特にこの文脈では使役の対象が自分自身なので、get では不自然です。
you get most of your work and other obligations taken care of.
you get yourself take care of most of your work and other obligations .
haveの場合
you have yourself take care of most of your works and other obligations.
この場合、自分で自分を~という構文になっていて「自分」が重複するので、受け身形にして、その重複を排除したというとても英語っぽい構文になっています。
you have most of your works and other obligations taken care of
make sureと組み合わせることで、このhaveにはmustのような「~ねばならない」的な必要性のニュアンスも表現されています。
こうしていろいろな角度から分析してみると、結果論ではありますが、このhaveは、taken care ofされたwork and obligationsを「持っている」とみなすこともできるかもしれません。
【まとめ】
構文解釈を練習する際には、まずは文中の動詞(らしき単語)を見つけ、それに対応する動作の主体を探してみましょう。「持つ」という訳語では意味が通らない場合、そのhaveは使役動詞である可能性があります。もしhaveの次に人格が来ていたら、そのhaveは使役動詞です。そしてその後にもう一つ動詞があって、その「人格」にやらせたい動作になっているはずです。今回の例文のように、haveの後にモノが来ている場合には、その後に来る動詞が過去分詞になっているかどうかをチェックしましょう。過去分詞になっていれば、受け身形の構文です。
高校の英語の教科書に使役動詞が丁寧に説明されていたかどうか記憶にありませんが、英語ではよく使う表現方法で、英語を英語らしくしている特徴の一つだとも言えそうです。