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ITが無いと生きていけないのに、アナログな日々

田端にある小さいけどとってもダイバーシティな映画館

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東京都北区田端にあるとっても小さな映画館へ映画を観に行きました。CINEMA Chupki TABATA(シネマ・チュプキ・タバタ)という映画館で、全編字幕付き、音声ガイド付き映画を上映しています。もともとは目の不自由な方が映画を楽しめるよう、言葉による映像解説(音声ガイド)を制作していた団体が始めた活動だそうですが、映画館は、耳の不自由な方、目の不自由な方、車いすの方など誰もが映画を楽しめるとってもダイバーシティな環境が実現されています。席には音声ガイドをつなぐイヤホン・ジャックが常備され、上映される全ての映画に字幕が付いています。

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映画本編上映前に字幕を付ける作業の模様が紹介されていました。日本語の映画には字幕はないので、邦画に字幕を付けるのかと思っていたら、紹介されたのは、外国映画の「カサブランカ」への字幕付け作業でした。確かに、台詞は既に字幕になっていますが、風の音やドアや窓を開ける音、流れる音楽などは字幕になっていません。要は脚本のト書きにある部分を字幕にするということなのですね。これがまた難しい、蝶ネクタイの男が・・・と字幕を付けようとしたところ、画面に他にも蝶ネクタイの男が映っていたなど、複数人で議論しながら鑑賞者に分かりやすいように字幕を付けていく、これは大変な作業ですね。

伺った日は、自身も聴覚障がい者である今村彩子監督のドキュメンタリー映画「きこえなかったあの日」を鑑賞しました。耳の不自由な人が、東北大震災のあの日、津波のサイレンも聞こえず、何が起こったか分からない恐怖の体験を伝えるのかと思っていましたが、むしろ震災後、その方々がどう生きたかにフォーカスが当たっていました。登場人物が本当に魅力的で会いたくなる人ばかり、助けあう人々の優しさにも触れることができました。

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その後の熊本地震や西日本豪雨で被災した方々も登場します。印象的だったのは、西日本豪雨の災害ボランティアに耳の不自由な方がたくさん参加していたこと。これまでもボランティアをしたかったけど、耳が不自由という理由でボランティア募集団体から断られていたそうです。西日本豪雨の際に、NPO団体が耳の不自由な人を対象にボランティアを募集すると200人近い人が集まり、実際の活動も紹介されました。恐らくは、耳の不自由な方が災害の現場で作業することは、何かあった際に他人の声が聞こえないことで危険な目にあってしまわないようにという配慮なのだと思いますが、そうしたことを工夫やアイデアで避ける体制ができるのであれば、ボランティアをやりたい人の声に応えてあげられると良いのになと、参加していた方々の表情を見て思いました。

館内には、盲導犬を連れて鑑賞している方もていて、上映中、ワンちゃんも大人しくじっとしていて、盲導犬ってすごいなあと改めて思いました。

赤ちゃんや小さいお子さん連れのお客さんが、子供が泣いてしまった時に駆けこめる親子鑑賞室なるものもあるそうです。

座席数約20と小さいけど、いろんな人が楽しめる懐の広~い映画館ですね。

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